「靴磨きインジケーター」発動で米ドル/円は天井をつけ、暴落!?
2022年11月10日(木)に発表された10月分の米CPIは予想よりも大幅に低下し、米金利が急落。米国株が急騰する「逆CPIショック」となった。米ドル/円も140円を割って、高値151.95円から12円の大幅下落だ。
(出所:TradingView)
米ドル/円の円安トレンドが反転したのか、予断は許さないものの天井を示唆するシグナルが出ていた可能性がある。「靴磨きインジケーター」だ。
今回に限らず、バブルや強烈なトレンドが起きてインフルエンサーがマーケットに言及すると「靴磨きの少年だ」と揶揄する声が聞こえてくる。
「投資に縁遠い靴磨きの少年までもがはやし立てるようになったら天井は近い」とする1929年の世界恐慌直前に生まれた挿話だ。
かつて、ビットコインのバブル相場を舞台にザイFX!とインフルエンサーとの間でも「靴磨き論争」が起きたことがあった。
【※関連記事はこちら!】
⇒急上昇していたビットコインが大暴落! イケダハヤト氏が買ったところがド天井!?(2017年1月6日公開)
⇒熱狂のビットコイン相場。イケダハヤト氏は再び「靴磨きの少年」となるのか?(2017年8月8日公開)
ひろゆきさんが投稿した「お小遣いゲット」トレード戦略とは?
今回、「靴磨きの少年」役を演じたのは2人のインフルエンサーだった。
ひとりは、「2ちゃんねる」創設者のひろゆきさんだ。フランス在住で円安のメリットもデメリットも実感しているからか為替政策についてツイートすることはこれまでもあった。
あくまでも政策論の範疇だったひろゆきさんのツイートが投機色を帯び始めたのは、政府・日銀の為替介入の直後である9月22日(木)。為替介入で140円に下がったら買って、介入が入るであろう145円手前の144円で決済すれば「お小遣いゲット」だ――。そんな趣旨のツイートが投稿された。
日銀防衛ラインが1ドル145円。
— ひろゆき (@hirox246) September 22, 2022
日銀為替介入で140円
↓
一万ドル買う
↓
円安が進み144円
↓
一万ドル売ると4万円ゲット。
↓
為替介入で140円
↓
一万ドル買う
↓
日米の金利差が埋まる、ウクライナ戦争が終わる、中国の台湾侵攻とか、余程のことがない限り、為替介入でお小遣いゲットが続くかも。 https://t.co/pC6BZl9IFN
(※筆者作成)
2010年にもひろゆきさんは為替介入について言及していた
実際、「ひろゆき戦略」はワークした。このツイートの4時間後には140.35円まで米ドル/円は下落し、翌々営業日(9月26日)には144円台まで上昇したからだ。
ただ、その後は145円を超えても政府・日銀の介入は入らず、ひろゆき戦略を活用する場面がなかった。
ひろゆきさんのツイートをさかのぼると、日本経済が円高で苦しんでいた2010年にも「政府が為替介入をしない理由は、損をするだけだから」と投稿していた。
かいたなう。円高で日銀批判をするモノを知らない人には気をつけましょう。>
— ひろゆき (@hirox246) September 14, 2010
政府が為替介入をしない理由は、損をするだけだから。 http://bit.ly/cayRVQ
ひろゆきさんはブログ「教えて君コミュニティー【ASKS?】」でも記事にしていて、この記事を読む限り、「為替介入が話題だから『いっちょかみ』してやろう」というわけではなく、ある程度、為替に関心があったようだ。
抜粋すると、「一国家が為替を動かそうとしても、世界中はそれを望んでなければ思うような価格にはならない」として単独介入の効果には否定的だ。
ただ、協調介入ならば、「為替のコントロールが成功する可能性は高い」とも書いている。
今回、政府・日銀が行なったのは単独介入。ひろゆきさんの持論に当てはめれば、単独介入では「思うような価格にはならない」から一時的に下がったら買いだ、というのは首尾一貫している。
「為替介入はお小遣いチャンスです」で煽り感を高めたものの…
さて、次にひろゆきさんがツイートしたのは、ちょうど1カ月後の10月22日(土)。2回目の為替介入の直後だ。
そんなわけで、
— ひろゆき (@hirox246) October 21, 2022
1ドル=152円まで円安になったところで、また為替介入がありました。
よほどのことが無い限りは、元の値に戻るということで前回お小遣いを稼いだ方は、またお小遣いチャンスです。
小心者の人は150円ぐらいで利益確定させたほうがいいかもしれません。。 https://t.co/JkSOGzMs0k pic.twitter.com/75KTDEkqvq
「介入は効かないだろうから買って、150円くらいで利益確定を」といった趣旨だが、前回の成功に気をよくしたのか、「お小遣いチャンス」という言葉を使い、煽り感を高めている。
ひろゆき戦略失敗…。2度目のお小遣いチャンスは来なかった
ところが、今回のひろゆき戦略は功を奏さなかった。
ツイート直後の米ドル/円レートが148.30円。翌営業日(10月24日)には149.50円台まで上昇したが、政府・日銀が介入して150円に届くことなく反落。以降、11月13日(日)時点まで150円には一度も到達していない。
為替に一定の関心はありつつも、トレーダーではないひろゆきさんが「お小遣いチャンス」と煽った時点が見事に米ドル/円の天井となったわけだ。
(出所:TradingView)
「秒速で1億円稼ぐ男!」あの情報商材のプロも円安を煽っていた
ひろゆきさんが「お小遣いチャンス」とツイートしたのと同じころ、「ネオヒルズ族」、「秒速で1億円稼ぐ男」として世情を騒がせた与沢翼さんも強気な見通しを発表していた。
日ごろは白髪染めや夫妻でのデート、火鍋の食レポなどをアップしている与沢さんのYouTubeチャンネルで唐突にアップされた動画は「【与沢塾】円安180円ありえる」。
情報商材を販売するプロであっても為替のプロではない与沢さんが円安に言及し、「円安180円」と景気のいいターゲットをぶちあげたことに不穏な空気を感じた人は多かっただろう。勢いよく駆け上がっていた米ドル/円は翼をもがれて下落していくことになった。
(出所:YouTubeチャンネル【与沢塾】の「円安180円ありえる」より)
個人投資家も煽りに飛びついた!誰もが米ドル/円の上昇を疑わない状況に
わずか24時間の間にひろゆきさんが「お小遣いチャンス」とツイートし、与沢さんは「180円ありえる」とするYouTube動画を公開――こうしたインフルエンサーの影響力は如実に示された。
外為どっとコムが毎月行なう個人投資家への調査では、米ドル/円の強気見通しが過去最高に高まった。調査時期は10月下旬。つまりインフルエンサーが強気な発信を行なった時期と重なる。
個人投資家のドル円予想、過去最高に強気となっています。80%の人がドル高を予想し、ドル安予想は8%だけ。
— 高城泰@9/17FXイベント開催! (@takagifx) October 31, 2022
外為どっとコムの外為短観より、調査期間は10月下旬、2発目の介入があった最中です。 pic.twitter.com/uUDrYvWiid
時を同じくしてFX会社では米ドル/円の買いポジションがかつてない規模で増加した。1ドル145円から152円で推移した時期に構築されたロングであり、高値づかみの危うさが感じられるポジションだった。
主要FX会社で、買いポジションが1年8ヶ月ぶりの水準まで積み上がっています。この3週間で急増したので半分くらいが150円近辺での買い。
— 高城泰@9/17FXイベント開催! (@takagifx) November 8, 2022
逆に売りポジは約2年ぶりの水準まで低下。150円で売りをあきらめてドテン買い、みたいな人が多かったのかも。 pic.twitter.com/BuYBsJ5geC
さらには外貨預金の増加や米ドルを求める人が外貨両替店に殺到したなどのニュースも流れ、誰もが米ドル/円の上昇を疑わないような状況となっていた。
煽られる個人投資家。
一方、為替のプロは冷静に米ドル/円相場を分析していた
では、そんな時期に為替のプロたちは相場をどう見ていたのだろうか。
米ドル/円は天井をつけたのではないかと、しきりに発信していたのは西原宏一さんだ。
10月22日(土)、政府・日銀介入が入った直後から西原さんは売り始めていた。ひろゆきさんの「お小遣いチャンス」とは正反対のポジションだ。
西原宏一トレード戦略指令!
2022年10月22日(土)0:08配信の配信メール
介入している噂もあるため、さきほど配信している間に151.00円から急落。今150.00円レベルに戻しているので、ご興味があれば、このレベルで。僕はstopを152.00円においています。
翌営業日(10月24日)には「米ドル高は、大きなターニングポイントに来ている。米国の利上げ幅のテーパリング(縮小)が始まれば、米金利は下がり、米ドル高はピークをつけて、豪ドルが買われやすくなる」とする記事を更新し、米ドル高トレンド反転の可能性を示唆した。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル高は、大きなターニングポイントに来ている。米国の利上げ幅のテーパリング(縮小)が始まれば、米金利は下がり、米ドル高はピークをつけて、豪ドルが買われやすくなる(10月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
さらに10月27日(木)の記事では「米ドル/円は151.95円で天井を付け、急落する可能性に警戒!当面は戻り売りの展開か。米利上げ最終地点の見通しに変化、米ドルは大きなターニングポイントに!」とさらに強く警告。与沢翼さんの「1ドル180円」説とは真っ向から反するストーリーを描いてみせた。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は151.95円で天井を付け、急落する可能性に警戒! 当面は戻り売りの展開か。米利上げ最終地点の見通しに変化、米ドルは大きなターニングポイントに!(10月27日、西原宏一)
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バカラ村さんは「高値圏からの調整幅」に着目し、米ドル/円の反落を再三メルマガで配信していた
FX専業トレーダーのバカラ村さんも米ドル/円の反落を予想し、再三メルマガを配信していた。テクニカル分析からの予想だ。
バカラ村のFXトレード日報!
2022年10月20日(木)20:35配信のメール
これまでの上昇で5円単位の節目前後では、その後に3円以上の調整が起きています。今回150円の節目を超えたことで同じように調整する可能性があります。過去の動きからは1-2円オーバーシュートする可能性もありますが、その後に3円以上の調整が起きる可能性があることになります。そのため今の水準は買いで行くよりも、調整が起きる可能性の方が高いように思います。
バカラ村さんは政府・日銀の介入の直後から、米ドル/円=140円をターゲットとする予想も配信していた。
バカラ村のFXトレード日報!
2022年10月27日(木)16:19配信のメール
ドル円も下がっているため、明日の日銀会合は金融政策を維持しそうです。緩和策が継続されたとしても、ドル高が止まっているため、すぐに上昇はしないと思います。テクニカルからはドル円は140円をターゲットとするシグナルも出ています。
11月11日(金)には、米ドル/円は140円割れまで下落し、この予想が的中した。一体、どんな分析だったのだろうか。バカラ村さんは以下のように語っている。
「MACDです。米ドル/円の高値は9月145円、10月高値で150円台と水準を切り上げましたが、同時点のMACDは切り下がっており、トレンド反転の可能性を示す『ダイバージェンス』が点灯していました」
ダイバージェンスは方向感を示すのみで、ターゲットを示すものではないのでは?
「しっかりしたダイバージェンスの場合、2時点の間にある安値まで到達することが多いんです。今回でいえば9月高値と10月高値の間にある安値は9月22日の140円35銭。調整が入れば、140円35銭までは落ちるだろうと予想できました」
MACD(※)のダイバージェンスには、こんな使い方もあったのだ。
(編集部注:「MACD」とは、期間の異なる2本の移動平均線の距離を視覚的にわかりやすく表した、トレンド系のテクニカル指標のこと)
【※関連記事はこちら!】
⇒MACDとは? 売買シグナルが早く出現する、移動平均線の進化系!?
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トレード戦略で本当に参考になるのは、いったい誰の戦略なのか?
インフルエンサーを「靴磨きの少年」だと揶揄するのは簡単だが、値動きの予想はそれだけ難しいものでもある。為替のプロであっても予想を外すことは少なくない。
「投資は自己責任」とはよく言われる言葉だが、自己責任とは自分で判断することでもある。「自分ひとりでは自信がない」という人は、まず西原宏一さんやバカラ村さんのメルマガで勉強してみよう。
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「西原さんはどうしてここで買ったのだろう?」と考えたり、「あのインフルエンサーはこう言っているけど本当かな?」と疑問を持ちながらメルマガを読むことで、ステップアップできるはずだ。
(取材・文/ミドルマン・高城泰 編集担当/ザイ投資戦略メルマガ)
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