豪中銀に続いて、カナダ中銀も利上げ幅の縮小を開始
10月26日の欧米市場の注目は、カナダの中央銀行に集まっていました。
カナダ中銀の事前の利上げ幅のコンセンサスは0.75%でしたが、実際の利上げ幅は0.5%にとどまり、誘導目標金利は3.75%と発表しました。
カナダ中銀のマックレム総裁は記者会見で「引き締め局面は終わりを迎える。そこに近づきつつあるが、まだ到達していない」とコメント。政策発表後にカナダ国債相場は大幅上昇し、2年債利回りは一時3.84%台に低下しました。
(出所:TradingView)
10月6日のコラムでRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が利上げ幅を縮小したことに、他の中央銀行が追随する可能性があると書きましたが、まずは、カナダ中銀が利上げ幅を縮小した格好になりました。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は146~147円と、上値余地が限定的になる可能性! RBAのハト派な決定で、米国の利上げペースも緩和されるか? ユーロ/スイスフランは売り継続!(2022年10月6日、西原宏一)
マーケットでは、RBA、BOC(イングランド銀行[英国の中央銀行])に続きFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ幅の縮小(テーパリング)が行われるのではないかとの予測が拡大し、米10年債利回りはカナダ中銀の発表後に低下。一時3.99%まで下落(クローズは4.00%)しました。
その結果、米ドルは反落。
まず英ポンド/米ドルが節目の1.1500ドルを突破し、本稿執筆時点で1.1620ドルで推移。
(出所:TradingView)
米ドル/円は一時146.00円を割り込み、145.92円まで急落しました。
(出所:TradingView)
米2年債利回りと米ドル/円はトップアウトした可能性も!
先週金曜日にFEDウォッチャーのニック・ティミラオスがすでにFRBの利上げペースの減速を示唆していたため、カナダ中銀の発表はFRBのテーパリング予想を拡大させた形に。
(※編集部注:「FEDウォッチャー」とは、FRBの金融政策を中心にあらゆる動きを専門に観察・分析している専門家のことを言います)
FEDウォッチャーであるニックの記事は米当局の意向を受けてのものというのがマーケットの認識であるため、次回のFRBでは利上げのテーパリングが行われる可能性が高まっています。
米金利先物市場ではターミナルレート(利上げの最終地点)は5%との声も出ていたのですが、4.75%に沈んでいます。
このターミナルレートの低下は米2年債利回りに大きな影響を与えます。
下図は米2年債利回りの日足です。
(出所:TradingView)
10月20日に米2年債利回りは、4,6185%まで急騰して反落しています。
仮にターミナルレートが5%ではなく4.75%であれば、米2年債利回りは、4,6185%でトップアウトした可能性が高まります。
そうなると、相関性の高い米ドル/円も151.95円でトップアウトした可能性が高まります。
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日銀の介入で米ドル買いが増加、米ドル/円の急落にも警戒
報道では政府・日銀の介入の影響が話題になっていますが、そもそも現在の米ドル/円に大きな影響を与えているのは政府・日銀の介入でも米国株の動向でもなく、米2年債利回り。
下図は米2年債利回りと米ドル/円の日足の相関図です。
(出所:TradingView)
日足以下の時間軸では、政府・日銀の介入によって、この相関がずれることもありますが、最終的には、米ドル/円は米2年債利回りに連動しています。
一方、マーケットでは政府・日銀の介入は効果がない、もしくは、これ以上介入が入らない可能性もあるということで、本邦投資家の米ドルロング(買い)が増えているようです。
言い換えれば、介入が入らなければ米ドル/円は上昇するという考え方が拡大しているため、介入が入らなくても米ドル金利が続落して米ドル/円が崩れると、米ドル/円の下落幅が大きくなる可能性が高まります。
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米ドル金利の動向を見ながら米ドル/円の戻り売り
ともあれ、26日にカナダ中銀が利上げ幅をテーパリングしたことで、今回も10月4日のRBAの判断の先見性に脱帽。
このままの流れだとFRBが利上げ幅をテーパリングすることになり、米ドル金利は続落、米ドル安も継続と想定しています。
前述のように、現在の米ドル/円に大きな影響を与えているのは、政府・日銀の介入でも米国株の動向でもなく、米2年債利回り。
仮に米国も利上げ幅のテーパリングを決定し、米ドル金利が下がれば米ドル/円の下落幅も大きくなる可能性があるため要注意です。
詳細は、別な機会でご紹介させていただきますが、個人的には豪ドル/米ドルでの押し目買い(米ドル売り)は継続。
米ドル金利の動向を横目に、当面米ドル/円も戻り売り、とします。
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