FOMC後の米ドルは安値更新を回避、2022年年内に米ドルの安値割れはない
米CPI(消費者物価指数)が再度波乱をもたらし、米ドル売りにつながった。しかし、FOMC(米連邦公開市場委員会)通過後の波乱は想定より小さく、米ドルの弱気基調をすぐには修正できなかったものの、結果的に米ドルの安値更新を回避。2022年年内における米ドルの安値割れはない、といった見方の証左を示したと思う。
(出所:TradingView)
前回(12月9日)の本コラムで指摘していたように、短期スパンに限って言えば、米ドル/円は130円をトライするより、いったん140円をトライする公算が高く、昨日(12月15日)大きなサインが点灯されたこともあって、目先、一段と同見方に傾く。
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⇒米ドル/円は、130円割れよりも140円のトライを想定しておくべきか。「劇的な円高」を心配する必要はなし! 想定されたサプライズはサプライズではない!(2022年12月9日、陳満咲杜)
プライスアクションの視点で米ドル/円の今後を予測してみると…
米インフレや金利見通しが一段と難しくなってきた今だからこそ、相場のことは相場に聞く時期だ。米ドル/円の底割れ回避、また切り返し先行の可能性について、プライスアクションの視点で見てみよう。
米ドル/円の日足を見ればわかるように、昨日(12月15日)の大幅切り返しで、メインレジスタンスゾーンをいったんトライした。下のチャートの(1)と(2)はトレンドラインと水平ラインを表示しているが、節目にかかっていることは明らかだ。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
そして、下の日足チャートにおける直近3日のローソク足は、典型的な強気サインを点灯している。日本のチャート理論では「明けの明星」と言われているサインである。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
プライスアクションの視点においても基本は同じであるが、より詳細なアナリシスができる。
まず今回の米CPI発表後に形成された、12月13日(火)の大陰線を見てみよう。
同日の高値はいったん切り返しの高値を更新したものの、その後、一転して大幅反落。過去5取引日の値幅を超え、またより安い安値をもって大引けした。
それは典型的な「弱気リバ―サル&アウトサイド」のサインとなったわけで、本来、弱気のサインとしてこれからの続落の機運を高める存在であった。
翌日(12月14日)はFOMC通過もあって、確かに続落となったが、値幅が限定的だった上、日足では「スパイクロ―」のサインを点灯、下げ止まりを暗示した。
ゆえに、昨日(12月15日)の大陽線の意味合いは重要だ。それは一昨日(12月14日)の下げ止まりを示した上で、いったん高値再更新をもって12月13日(火)の大陰線を否定したわけで、前述の12月13日(火)の大陰線がもたらした弱気基調を一掃したと言える。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
そして、このような途中の保ち合いや調整があっても、再度上値更新を果たしたから、12月2日(金)の安値を起点とした切り返しはこれから一段と上値余地を拡大するだろう。
昨日(12月15日)高値の138.18円を再度上回れば、新たな買いのサインを点灯、その後の上値タ―ゲットは下のチャ―トに表示したように、まず(1)11月30日(水)高値の139.91円、その後は(2)11月21日(月)高値の142.27円が挙げられるだろう。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
目先は切り返しの先行、また上値余地の拡大を有力視。米ドルの安値打診があっても、まず切り返しを完成させてからでないと、逆に続かない公算が大きい。
ユーロ/米ドルはすでに頭打ちを果たした可能性が示唆されている
米ドル全体の状況を見るなら、まずユ―ロ/米ドルだろう。日足を見てわかるように、「上昇ウェッジ」の範疇内になお留まっているものの、昨日(12月15日)いったん高値更新してから反落し、前日の値幅を超えた形で「弱気リバ―サル&アウトサイド」のサインを点灯。すでに頭打ちを果たした可能性が示唆されている。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
頭打ちのサインがより鮮明になっているのが、英ポンド/米ドルである。下のチャ―トが示しているように、昨日(12月15日)の大幅反落で日足における「上昇ウェッジ」の下放れを果たし、ここから昨日(12月15日)の大陰線を早期に否定できない限り、2022年年内一杯、調整してくる公算が大きい。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
豪ドル/米ドルに関しても、同じ見方ができる。昨日(12月15日)の反落が急速で、かつ値幅の拡大が観察された以上、当面の頭打ち、また調整波の先行が想定される。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
クロス円の状況は一段と改善
やはり米ドル全体は2022年年内いっぱいまで強含みの展開というか、短期スパンにてこの前売られすぎだったから、それに対する反発が続くだろうと推測される。
(出所:ゴールデンウェイ・ジャパン)
だからこそ、実はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における状況は一段と改善されてきた。
代表格であるユ―ロ/円を見ればわかるように、整理パタ―ンとしていったん下落チャンネルを形成していたが、メインレジスタンスライン(1)を上放れでき、また同反落変動途中における重要な戻り高値だった11月23日(水)高値(2)をブレイクしたから、上昇波への復帰、または強気変動の継続が有望視される。
少し楽観的な見方をすれば、2022年年内の高値再更新があっても、自然ななりゆきとみる。
英ポンド/円と豪ドル/円といったほかの主要クロス円は、ユ―ロ/円に比べ、やや出遅れていると見られるが、基本的な構造は一緒であろう。
その理屈は前回の本コラムをもって強調していたので、ここでは重複して書かないが、年末年始相場における米ドル安の一服、またクロス円における強気変動の可能性を強調しておきたい。市況はいかに。
PM14:00執筆
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