FOMCは将来「転換点」と位置づけられるような内容だったかもしれない
今週(1月30日~ )行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)は、さまざまな意味で、将来「転換点」と位置付けられるような内容で、ジャクソンホール会議で「超タカ派」となったパウエル議長が、ハトに戻った瞬間になったかもしれません。
論点となったのは、
・FCI(フィナンシャル・コンディション・インデックス、実質的に金融環境が、どの程度引き締め気味、あるいは緩和気味なのかを示す指数)がかなり緩和的となっているのに、なぜ利上げ幅を縮小するのか
・失業率が3.5%、失業保険申請件数が歴史的に低いレベルとかなり雇用水準は高い。失業増がないのに、インフレ問題は解決できるのか
といった部分でした。
今週(1月31日~ )行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)は、さまざまな意味で、将来「転換点」と位置付けられるような内容で、ジャクソンホール会議で「超タカ派」となったパウエル議長が、ハトに戻った瞬間になったかもしれない (C)Bloomberg/Getty Images News
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パウエル議長の記者会見での「Disinflation(インフレ鈍化)」という言葉は思いもよらなかった
そして、日本時間2月2日(木)午前4時に声明文が発表され、0.25%の利上げが決まりました。
声明文の中で、
The Committee anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate in order to attain a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time.(インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な金融政策スタンスを達成するために、目標レンジの継続的な引き上げが適切であると予想しています)
とありました。
利上げも残り少ないとなれば、上記の声明文にある「ongoing(進行中)」ではしっくりこないので、変更されるのではと一部の市場関係者の間では予想されていました。しかし、維持されたこと、全体的なトーンに変化がなかったことからタカ派的と解釈され、米ドル/円は129.30円から129.85円前後へと買い戻されました。
そしてパウエル議長の記者会見を迎えます。2つ目の質問に対する回答中、
I would say it is a good thing the disinflation we have seen so far has not come as the expense of a weaker labor market. (これまで見てきたディスインフレが労働市場を犠牲にしてもたらされたわけではないことは喜ばしいことだと言えるでしょう)
とあったのですが、「ん!」っと思いました。“Disinflation”(インフレ鈍化)という言葉をこのタイミングでパウエル議長の口から聞くとは思いもしなかったからです。
その後、改めてパウエル議長はこう言います。
We say for the first time the disinflationary process has started. We can see it. We see it really in goods prices so far. Goods prices is a big sector. This is what we thought would happen in the very beginning.
私たちは、ディスインフレのプロセスが始まったと初めて言っています。私たちはそれを見ることができます。それは、今のところ、財の価格によく現れています。財の価格は大きなセクターです。最初はこうなると思っていました。
その後、パウエル議長から
・今年中の利下げの可能性はない。
・FCI(金融環境)については、“Still think there’s work to do on tightening fin conditions.
「金融環境を引き締めて行かなければならないと考えている」という発言がありましたが、あまり重要視されず。
・POWELL: DISINFLATION OUTSIDE OF CORE SERV. EX-HSNG `CREDIBLE'
「住居を除く、コアサービスにおけるディスインフレは信用できる
そして
・停止前にあと”a couple more”(1-2回ほど)の利上げを協議中
・利上げを停止後に、また再開することは検討していない
この2つの発言が効いた感じです。
「A couple」は2回、それに加えて「more」なので、2回以上の利上げを協議中と訳さなければならないところですが、発言中のパウエル議長の顔を見ていると、流れでそのように発言しただけで、本音としてはあと1回(3月で利上げ終了)、もしくは2回(5月終了)というスケジュール感になるのではないかと思いました。
そして、利上げを中止したあとの再利上げは考えていないということで、いったん利上げ路線が止まったら、よほどのことがない限り、そこで今回の利上げプロセスはすべて終了ということになります。
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3月にも米利上げ終了が見えてきたなら株価は堅調だろう。米ドル/円は強気だが、消去法的に円が上昇する局面もあるか
3月にも米利上げの終わりが見えてきたとなると、株価は堅調でしょう。
特に、下げてきたハイテク株が戻るのではないかと思います。ディスインフレという言葉を出してきたということは、インフレ抑制によほど確信があるということでしょう。
株価は堅調、おそらく暗号資産(仮想通貨)も堅調となりますが、為替への影響を考えると少し難しいところがあります。
2月2日(木)には、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])が0.50%利上げし、ECB(欧州中央銀行)も0.50%利上げしました。それを受けて、欧州の長期金利が急激に低下しました。ディスインフレ的なものが、欧州にも伝播したということなのでしょう。この長期金利の急低下の影響で、利上げにも関わらず、英ポンドやユーロはむしろ下落しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
政策金利の動向だけを見ると、欧州はまだ0.75%程度で利上げをすると想定されていますが、長期金利を考えると、欧州も米国も、今後それほど(長期)金利は上昇しないのではないかと思います。
そうなると、残されるのは「円」です。私は中長期的に米ドル/円は強気の相場観を基本的に持っているのですが、欧米の長期金利が今後も低下することを考えると、消去法的に円が上昇する局面もあるかもしれないと考えているところです。
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