想定外に堅調な米株、「相場は間違っている」というより、
「想定自体が間違った」という可能性が高い!?
銀行不安に景気後退懸念、さらに米デフォルトの可能性もささやかれるなか、ウォール街のプロたちは「危ない、危ない」と異口同音。また、ある統計によると、米個人投資家は「コロナバブル」に乗じて買った株のほぼすべてをすでに処分したようで、株式市場の下落も当然視されていた。
しかし、米株式市場は「想定外」な堅調を見せている。
ナスダックは、昨日(5月11日)の終値で計算すれば、すでに昨年(2022年)安値から20%以上の上昇を果たし、「20%」のルールなら、強気変動入りとも解釈される。S&P500は同18%の上昇をキープ、もう少しで強気変動入りを果たす見通しだ。
(出所:TradingView)
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「バフェット効果」もあったと思われ、日経平均は執筆中の現時点で52週高値を更新。「割高」と言われながら上昇傾向を強めている。
(出所:TradingView)
そして肝心のドルインデックスは、4月半ばから「底割れ」しそうで割れず、目先、むしろ反発しており、米ドル離れやら、米デフォルトやらの論調からみれば「想定外」の堅調をみせている。
(出所:TradingView)
言ってみれば、「相場は間違っている」というより、「想定自体が間違った」という可能性が高いのではないかと思う。悲観一色のなか、株式と為替市場の値動きは、どちらかというとリスクオンの方向を示唆。悲観論者の苛立ちを招く。
もちろん、この程度の値動きでリスクオンとは言えないという反論も聞こえそうで、また、そのとおりかもしれないが、少なくともリスクオフではないことが確認できる。
リスクオフではないから、「リスクオフの円高」はない上に、仮にリスクオフの動きがあっても円高をもたらすとは限らない。度々、強調してきたように、円はすでにリスク回避先という役割を失っており、リスクオン・オフの視点のみでは円の行方を測れないだろう。
ドルインデックスの軟調はリスクオンの証拠の1つ、
しばらく円が大きく買われる余地はない
もっとも、米ドル全体(ドルインデックス)は目先反発しているものの、なお安値圏での保ち合いにとどまっており、大きく買われてはいない。ドルインデックスの軟調自体、米利上げのピークアウト観測と相まって、実はリスクオンの証拠の1つとも思われる。ゆえに、しばらく円が大きく買われる余地はないと判断できる。
(出所:TradingView)
とはいえ、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)における外貨の急伸は、金利差の視点においてスピード違反の疑いもあった。ゆえに、目先見られる主要クロス円の反落は、むしろ歓迎されるべきだと思う。なにしろ、スピード調整であり、トレンド自体の修正ではないから、スピード調整があったほうがこれからのトレンドをより健全化させる側面がある。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
だからこそ、いわゆる「株高・円安」のセットは、しばらく継続するだろう。猫も杓子も危機とか、クラッシュとかを心配している間は、逆にそうはなりにくく、あまりうるさくない時は要注意だと思う。
悲観論者たちが立場を変えて、
株買い・円売りに参入してきてたら要注意!
では、それはいつだろうか。厳密な判定は誰にもできないが、大まかにいうと、悲観論者たちも株買いや円売りに参入してきて、やがて自らの行動を「君子豹変」と自画自賛するようになった時だと思う。
では、なぜ悲観論者たちが立場を変えて参入してくるのだろうか。その答えも明白だ。本日(5月12日)の日経新聞さんのニュースのタイトルを読めば悟れる。
株、強まる「乗り遅れ」の恐怖 買いが買いを呼ぶ展開に
5月中旬に入っても日本株相場の快走が続いている。記録的な買い越しだった4月から、5月に入っても海外投資家の買いが続いているとの見方が相場を押し上げる。自分だけが乗り遅れる恐怖から相場上昇に追随しようとする心理が働き、買いが買いを呼ぶ展開になりつつある。
出所:日本経済新聞
記事の中身を読んでおらず、詳細はわからないが、もしかすると「乗り遅れ」の恐怖で株を買ってはいけない、あるいは「買いが買いを呼ぶ展開」を評価できないということかもしれない。重要なのは、その解釈ではなく、そのタイトルが悲観論者たちの行動や心理をうまく説明していると思えるところだ。
要するに、「乗り遅れ」の恐怖心である。このあたりは個人投資家も機関投資家もいっしょだ。ナスダックはすでに20%の上昇を果たしているところであり、これから相場の行方を、指をくわえて眺めていることは到底できない。
機関投資家はプロだからこそ、毎年のパフォーマンスで昇格と給料が決められ、また、内外の委託者の期待を背負っているから、いくら悲観論者であり、いくら自らの見方に自信があったとしても、ここから高値を追わないのは、やはりまずいだろう。
株がこのままさらに上昇し、自分たちがポジションを持っていなければ、もう機関における居場所はなくなり、プロとしてのキャリアの終焉が意味されるから、高値で買わざるを得ない。
だからこそ、弱気材料が満ちているものの、米株は総じて底堅く、またナスダックあたりがもう重要なレジスタンスゾーンを超えたようにみえる。今から買ってくる筋は、今まで相場の行方を楽観的にみてきた筋というより、むしろここまで悲観的な見方を繰り返してきた筋というほうが、可能性として大きい。
なにしろ、昨年(2022年)後半から2023年年初まで安値を拾った楽観筋は、今の高値トライを利益確定の好機と利用できるが、ポジションを持っていなかった悲観筋の面々は、いくら口で悲観論を繰り返していっても、実は買っている可能性が大きい。
だからこそ、ウォール街の見方としてマスコミが連日ネガティブな紹介記事を開示しているが、株は下落とはならず、上昇しつつある。
クロス円全般はなお上昇トレンドの途中、
これからもう1回、高値トライしてくるだろう
円の事情も同様だろう。確かに昨日(5月11日)安値までユーロ/円の反落幅が拡大されたが、つい最近まで14年半ぶりの高値更新を果たしていただけに、円売りを「適切」なタイミングで仕掛けないと、これからはまずくなると思う者が多いはずだ。
いくら口で円高の可能性を言っても、円の反発を機に、実は円を買うのではなく、円を売ってくる公算が高い。ユーロ/円をはじめ、クロス円全般はなお上昇トレンドの途中であり、これからもう1回、高値トライしてくるとみる。市況はいかに。
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