植田新総裁初の日銀会合、一波乱あっても「コップの中の嵐」か
日銀会合を控え、今回の原稿を書いているが、無風通過との予想が大半であるだけに、何かがあれば、「植田緩和修正ショック」のインパクトは、昨年(2022年)12月20日(火)の「黒田緩和修正ショック」を上回るだろう。
デビューしたばかりの日銀新総裁は、決してそれを容認できないだろうから、市場関係者の想定どおり、無風通過になるだろう。
しかし、まったく不安材料がないとは言い切れない。
植田新総裁は市場との対話を重視していると言われ、記者会見にて何等かの示唆があれば、一波乱あるかもしれない。とはいえ、あっても許容範囲内であろう。
要するに、サプライズ的な「嵐」があっても、「コップの中」と想定され、目先のトレンドを根本的に修正できないだろう。
米ドル売りは行きすぎ、米ドル全体の底割れは目先ないだろう
ところで、肝心のトレンドの方だが、米ドル/円は、目先、実にまだら模様でトレンドがはっきりしない。
米ドル全体(ドルインデックス)のトレンドはベア(下落)指向だが、再度「底割れ」の有無が焦点となっており、ここからさらに大幅な下落余地の拡大は、可能性自体は否定できないものの、米金利のさらなる急落が前提条件となってくる。
よって、少なくとも目先では発生しにくいだろうと推測される。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
なにしろ、3月の米金融不安以来、米10年物国債利回りの急落は、すでに2023年内4回の利下げを織り込んでいたと言われ、それ以上の思惑が浮上しなければ、やはり行きすぎであったことは明らかだ。
米金利急落と連動する形での米ドル急落は、しばらく安値圏での弱含みを強いられても、さらに下落モメンタムを加速させる場合は、やはりさらなる材料が必要だ。
その材料は、いわゆる米リセッション云々だけでは物足りないだろう。なにしろ、2023年内に4回も利下げありといった観測自体、米リセッションを前提とした予測で、また、かなり深刻な状況を織り込んでいる。
これからどうなるかは誰も断言できないが、執筆中の現時点では、米国はまだリセッションの状況でないことが確かなので、米ドル売りの行きすぎ自体を否定できない。
ユーロ/円150円、英ポンド/円170円を達成するまでは上昇トレンドが続くだろう
となると、ユーロ、英ポンドの米ドルに対する強気トレンドが当面維持され、また場合によっては、さらなる高値更新があってもおかしくないが、大幅な上値余地ありといった観測には距離を置きたい。
(出所:TradingView)
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一方、米ドル/円のまだら模様自体に示唆されているように、米ドル/円はドルインデックスのパフォーマンスと乖離し、相対的に堅調な推移を保っているから、必然的にユーロ/円や英ポンド/円の強気変動に「貢献」している。
もっとも、前回のコラムでも指摘したように、米ドル全体が弱い時、ユーロや英ポンド以外の主要外貨も強含みな変動を維持できるはずだが、最近、ユーロが全面高の様相を強めており、豪ドルや人民元あたりはユーロに対しての大幅続落で、米ドルに対しても弱含みの変動を強いられている。
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⇒ユーロ/円が円安トレンドをリード!上昇余地が大きく、2014年の高値149.76円をトライするのも時間の問題とみる。しばらくは上値追いの展開か(2023年4月21日、陳満咲杜)
ユーロ/英ポンドはフラットな市況を示しているから、英ポンドはユーロと比肩できるが、そのほかの主要外貨は、ユーロに対して弱気変動がみられており、ユーロの優位性がしばらく維持されるだろう。
となると、ユーロ/円はさらに上昇していくだろう。後を追う形で英ポンド/円も然り。
なにしろ、円はYCC(イールドカーブ・コントロール)撤廃など政策面のウワサに支えられ、想定より大幅に売られていないものの、対米ドルの底割れを回避できても、強いユーロに対しては売られていくだろう。
ユーロ/円の150円や英ポンド/円の170円といった上値ターゲットが達成されるまで、基調の崩れはないと思う。
(出所:TradingView)
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昨晩(4月27日)米株が大幅に切り返してきたところも、支援材料となるだろう。米リセッションやら相場崩壊やらの警戒論が根強いなか、米株はむしろ底固さを発揮、上値指向を強めている。
大衆が戦々恐々、また疑心暗鬼なうちに、強いトレンドが形成されていくことは相場の格言のとおりなので、今さらサプライズではない。
相場のメッセージを読解し、強い心で日米欧株を買い、円を売りたい
ただし、最近のウォール街のレポートを読む限り、米株の上昇が続かない、近々頭を打って反落していくといった予想が圧倒的に多い。
反対意見も聞きたいが、探すのも一苦労だ。これはやはり異常ではないかと思う。機関投資家とはいえ、不確実性を本質とする相場において一辺倒自体が逆サインと読み取れる。
言ってみれば、猫も杓子もリスクオフ云々を声高に主張しているうちに、株が反落ではなく、じわじわ上昇していくなら、「想定外」のリスクオンのほかあるまい。
しかし、そのリスクオンが本物であれば、まだまだ初歩段階にあるから、これからの余地が大きいと言える。なぜなら、警戒や懐疑の視線が圧倒的に多いから、トレンドに対する認識が共有されるまでに時間がかかるからだ。
だから、戦々恐々でも構わないが、日米欧株のロングポジションを持ちたいし、円を売ってみたい。
当然のように、米ドル/円の買いより、ユーロ/円や英ポンド/円を買ったほうがいいと思う。間違っても株と主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のショートだけは避けたいところだ。
相場は理外の理。相場自体のメッセージはもっとも重要で、無視すべきではない。しかし、相場のメッセージを解読するにあたっては、強い心が必要だ。
ウォール街の万人が言う方向と逆に行く相場に、そう簡単に、また素直に乗れないのも世の常。ゆえに、相場は難しい。
とはいえ、筆者は手放しで景気のいい話をすればよいとも思っていない。強調したいのは、本格的な景気後退や相場の崩れは、市場参加者の大半が警戒しているうちは、あまり発生しないということである。
したがって、目下はリスクオンの姿勢を維持したい。
市況はいかに。
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