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待てど暮らせどやってこない、米国のリセッション
今年(2023年)初め、多くのエコノミストは、次のように考えていました。
米国経済はいずれリセッション(景気後退)を迎え、米金利は下がり始める。一方の日本は、新しい日銀総裁を迎え、いずれ金融政策が変更される。この金融政策の方向性の違いから、米ドル/円相場は円高方向を探ることになる。
しかし、待てど暮らせど、米国のリセッションはやって来ません。マーケットでは(CMEのFed Watchを参照すると)、リセッションがこの夏から始まるとの観測から、7月もしくは9月から米利下げ開始が織り込まれ始めたりもしました。
2月1日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、パウエルFRB議長が「ディスインフレ」という言葉を使いました。また、3月にはシリコンバレー銀行が破綻し、「やはり大きなリセッションが来る」と多くの人が身構えました。
【※関連記事はこちら!】
⇒日本円が消去法的に上昇する可能性も! 米国の利上げは3月、もしくは5月に終了か? FRBはインフレ抑制を確信、欧米の長期金利は今後、それほど上昇しない(2月3日、志摩力男)
しかし、現実の米経済指標の強さに、そういったリセッション予測は消えていきました。特に、米雇用統計は14カ月連続で市場予想を上回り、4月の失業率はこれまでで最低の3.4%となりました。これだけ雇用が堅調だと、リセッションになりようがありません。
なぜこれほど米国経済は強いのか。それとも、そもそも米国経済がリセッションを迎えるという予測が間違っているのか。
米国経済がリセッションを迎えるという予測は、イールドカーブの形状が逆イールド、すなわち長短金利差が逆転している状況から予想されています。
これまで逆イールドになると、半年から1年、遅くとも1年半後には景気後退局面を迎えてきました。長短金利差の逆転は、これまでリセッションが確実に訪れるという悪魔の警告だったのです。
(出所:筆者提供)
上記のチャートで、青のラインは米10年債利回りと2年債利回りの金利差ですが、真ん中のラインより下に行くと「逆イールド」の状態となります。グレーの帯はリセッションの期間です。過去5回、必ずリセッションとなっています。
ただ、最後の2019年のケースですが、ここは疑念があります。というのは、リセッションが起こったのは「コロナ」のせいだったからです。「コロナ」がなかったら、リセッションに陥ったでしょうか?私は疑問です。
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逆イールドになるとリセッションは来るのか?
なぜ、逆イールドになるとリセッションが来るのか?
逆イールドになるということは、銀行の利ざやが縮小すると考えられます。銀行の収益は低い預金金利で資金を集めて、高い金利で貸し出すから利益が生まれますが、その預金と貸し出しの金利差が縮小、場合によっては逆ざやになるので、その分、貸し出しが厳格になります。与信の縮小が経済成長を抑えることになります。
だが、なぜリセッションにならないのか。疑問が膨らみます。
考えられる理由としては、経済にブレーキをかけるほど金利が高くなっていないからです。米国の短期金利は十分高いのですが、長期金利は現状3.7%前後です。これは十分に高いのでしょうか?
(出所:TradingView)
かつてグリースパン議長が、長期金利がなかなか高くならないことに対して「コナンドラム(難問)」という言葉を使い話題になりました。
しかし、その時の長期金利は4.5%前後でした。十分に高くならないことに対して、名議長は悩んだわけです。インフレ率を考えると、その当時は2%を少し超えたところで、現状のように5%を優に超える水準とは違います。その意味では、米長期金利はもっともっと高くならないといけないのでしょう。
でも、長期金利は市場で決定されるので、中央銀行はコントロールできません。長期金利を引き上げるためには、短期の政策金利ももっと高くないといけない、そうなるでしょう。
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米ドル/円はいずれ経済の実態から141円超えへ
米金利はもっと高くなる。そうであれば、米ドルの水準もいずれもっと高くなる可能性があります。
JPモルガンのダイモンCEOも、米長期金利が「6%、7%といった水準になっても驚かない」という発言をしていました。
米ドル/円は141円前後のところで、3者会合以来抑えられていますが、いずれ経済の実態から超えてくるものと考えています。
(出所:TradingView)
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