米ドル安が顕著、米ドル/円下落の要因も米ドル側にある
「今晩(7月7日)の米雇用統計は1つのきかっけとなりやすく、中身はどうであれ、米ドル売りの材料になりやすいと思う。だいぶ性急かつ大胆な予測を書いたので、本日はここまでにしたい。間違ったら来週言い訳を言うのではなく、きちんと謝る(笑)」
先週(7月7日)のコラムは末筆にこのように書いていたが、幸い見通しは間違っていなかったので、謝らずに済んでよかった(笑)。少し生意気な言い方をすると、米ドル売りという点は「当たり過ぎ」だったかもしれない。
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⇒米ドル/円は、上昇ウェッジを形成して反落か。為替市場にわずかな「異変」が発生。今晩の米雇用統計は結果がどうであれ、米ドル売りの材料になりやすい(2023年7月7日、陳満咲杜)
なにしろ、米CPI(消費者物価指数)やPPI(生産者物価指数)の低下で市場センチメントが大きく変わり、強烈な米ドル売りが確認されている。
執筆中の現時点で、ドルインデックスは99台まで売られ、ユーロ/米ドルは1.12ドル台前半、英ポンド/米ドルは1.31ドル台前半と、揃って2023年年初来高値を更新、かつ強いモメンタムを維持している。
(出所:TradingView)
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米ドル/円は目先138円割れとなり、一見してだいぶ円高の方向にシフトしているように見えるが、米ドル全体の立場から見ると、円はなお弱いままだ。
(出所:TradingView)
何しろ、ドルインデックスは2023年年初来安値を更新し、実のところ2022年4月以来の安値を更新しているから、これに比例しているユーロや英ポンドなどの外貨に比べてみると、円は随分「出遅れている」状態であることが確認できる。
換言すれば、少なくとも現時点では、「円の立場で市況を語るべからず」である。円高・円安云々はナンセンスであることは明らかだ。
米ドル/円は随分下落したとはいえ、5月中旬の安値さえ割り込んでいないから、「目先は米ドル安であって、円高ではない」と言い切ってもいいだろう。
(出所:TradingView)
ゆえに「植田トレード」の逆転云々、日銀政策の修正思惑云々はセンセイたちの適当な言い訳にすぎない。いわゆる専門家の言い訳を聞く暇があったら、マーケットの値動きを自らの目でチェックしたほうが、よほど相場の本質がわかる。
要するに、米ドル安が目先のトレンドの要であり、そのほかはすべて二の次である。
「リスクオンならクロス円」で間違いなし! 押し目買いのスタンスで
では、なぜ米ドルはこんなに売られているのだろうか。いろいろ解釈があっても本質的には1つしかないだろう。それは、市場センチメントの急変だ。
言ってみれば、市場センチメントは、インフルエンザのようによくはやり、またよく変異するものである。
先週(7月3日~)は、ADP雇用統計の数字が好調で米金利の急上昇があったが、その後、一転して急落。米10年物国債利回りは、先週(7月3日~)の4.08%から目先3.76%まで急落してきた。
(出所:TradingView)
米利上げ長期化といった市場参加者たちの先週(7月3日~)の思惑が総外れとなり、今度は逆に、もう利上げはないのではないかという疑心暗鬼を生んで、米ドルロング筋の狼狽売りをもたらしたわけだ。
しかし、よく考えてみればわかるように、米利上げ長期化にしても、もう利上げなしにしても、どちらも過激な予想で現実的な見方ではないはずだ。しかし、市場センチメントは常に過激で、また常に偏る傾向にあるから、白黒をつけようとする急変も実によくある話。別にサプライズではない。
だから、今さら驚くなかれと言いたい。別にサプライズではないから、大げさに解釈しなくてもよい。円高なんかは勘違いであり、円高の株安なんかは犬も食わない古いロジックとなり、今さら持ち出されても困る。
実際、米S&P500とナスダックは揃って2023年年初来高値を再更新、NYダウの追随は時間の問題だ。日経平均も一時3万2000円の大台を下回ったが、あれはサマーバーゲンのほかあるまい。円高の株安などというバカげた論調を聞いているうちに、絶好の押し目買いのチャンスを逃したのだとしたら、本当に残念だ。
米株は買われ過ぎかもしれないが、サマーラリーの最中なので、リスクオンである現状を強調したい。リスクオンだから、サマーラリーに「出遅れている」日経株平均の高値再更新も、これからだと思う。
そして、リスクオンだから、だいぶ調整してきたクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)に、触手を伸ばさないほうがおかしいだろう。「リスクオンならクロス円」、これだけは大きな間違いがなさそうだ。押し目買いのスタンスで臨みたい。
米ドル/円が145円台で頭打ちとなったのは、間違いないだろう
ところで、肝心の米ドル/円は、円高ではなく米ドル安の結果であっても145円台にて頭打ちとなったのは間違いないだろう。
(出所:TradingView)
前回7月7日(金)のコラムでチャートをもって示した「上昇ウェッジ」の下放れを果たしただけに、目先、一気に137円台前半まで急落したこと自体、やや行き過ぎ感があるものの、総じてフォーメーションの指示どおりの値動きなので、これも大したサプライズはない。
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米ドル/円の150円や160円といった上値ターゲットを、さすがに今になって提示する方はもういないと思うが、先々週(6月26日~)まであたかも正解のように解釈されただけに、その反動も大きい。だから今の137円台前半の打診がある、と言いたい。
ただし、前述のように、市場センチメントは基本的に常に過激で、常に偏っているから、また変わることが十分想定される。米国はもう利上げなしと思われるような米ドルの急落自体、目先行き過ぎであることも明らかだ。
とはいえ、大きなトレンドとして米ドル安は変わらないから、短期の逆張りよりも少し余裕をもって戻りを待った方がいい、と主張したい。
もちろん、戻り売りのスタンスなので、2023年年内かどうかはまだはっきりしないが、米ドル/円は早晩127円台の割り込みを果たすだろう。
(出所:TradingView)
市況はいかに。
11:30執筆
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