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西原宏一_メルマガ取材記事
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バカラ村の「FX専業トレーダーの相場観」

米ドル/円を今週は買い! 日銀会合後の円高が137~138
円の「鉄壁」で止まったのなら、145円を目指し、超える
可能性も。金融ショックの気配も、1週間程度はなさそう

2023年08月01日(火)10:39公開 (2023年08月01日(火)10:39更新)
バカラ村

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YCC運用の柔軟化で不可解な乱高下。「円を買ってはいけない相場」に

 大きな注目を集めていた7月28日(金)の日銀会合(日銀金融政策決定会合)は、長期金利(10年債利回り)の上昇を1%まで容認する、という結果になりました。

 前日(7月27日)の深夜2時に、日経新聞が公開した記事とほぼ同じ結果でしたが、為替市場は不可解な乱高下を見せました。

 チャートが動いた瞬間に「発表があった」とわかったので、日銀のホームページで内容を確認したところ、「1%」の文字が見えました。

1%への上昇を容認するなら、円が買われると思ったのですが、発表直後は139円から142円手前まで上昇しました。「『±0.5%程度』を目途」との文言が残っていたために、誤解されたのかもしれません。

米ドル/円 1時間足
米ドル/円 1時間足チャート

(出所:TradingView

 夜になってからは、141円台まで本格的な反転が始まりました。発表内容を見て売った人たちの、売りポジションがひたすら踏まれ、さらに日米金利差を狙った円キャリートレーの新規資金も入ったのでしょう。

米ドル/円 1時間足
米ドル/円 1時間足チャート

(出所:TradingView

 クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も総じて反転し、「円を買ってはいけない相場」となりましたが、日銀の発表内容だけを見れば円買いだったため、損失を抱えた投資家が多かったかもしれません。

世界の通貨VS円 1時間足
世界の通貨VS円 1時間足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 1時間足

1米ドル=137円から138円の価格帯は「鉄壁」。145円を目指すか

 米ドル/円の週足を見ると、137円から138円が「鉄壁」に見えます。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足チャート

(出所:TradingView

 昨年(2022年)11月の米CPI(消費者物価指数)ショック後の円高も、137円台で一度はサポートとなりました。その後はレジスタンスに役割を転じて昨年12月、今年(2023年)3月、5月と3度も上昇を食い止める役割を果たしましたし、7月の円高局面は137円台で止められたのは記憶に新しいところです。

今回の日銀会合後の円高も138.06円が安値でした。止まるべきポイントで止まっているため、重要な転換点だった可能性が高いと考えています。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足チャート

(出所:TradingView

 日本の長期金利は早速、0.5%を超えて上昇しましたが、昨日(7月31日)の朝に、日銀の臨時オペが早速入ったことで円が売られ、米ドル/円は上昇しています。

 138.06円が当面の安値となるなら、145円を目指すのでしょうし、今回の上昇で145円を超える可能性もあると考えています。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足チャート

(出所:TradingView

 8月は円高になりやすい傾向があるため、145円超えは9月以降になるのかもしれませんが、少なくとも今週(8月1日~)の米ドル/円は買い目線で考えています。

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FOMC、ECBとも「0.25%利上げ、9月はデータ次第」だが、実態は段違い!

 先週(7月24日~)は日銀だけでなく、FOMC(米連邦公開市場委員会)、そしてECB(欧州中央銀行)の会合もあり、ともに「0.25%利上げ、次回9月の利上げはデータ次第」とよく似た結果となりました。

 ただ、内容を見ると米欧で大きな違いがあります。

 米国は、直近のインフレ率が+3.0%(前年比、以下同)と低下し、経済指標も比較的強い結果が続いています。

 ところが、ユーロ圏は、昨日発表されたインフレ率が+5.3%と低下傾向にはあるものの、依然高い水準にあり、経済指標も弱い数字が目立ちます。

「インフレ率がまだ高い、だから金利はまだ上がる」と考えるなら、ユーロは買われることになりますし、「景況感が悪い」というほうにフォーカスすれば、ユーロは売られやすくなります。

 同じような状況だったのが、7月の英ポンドです。利上げがフォーカスされた間の英ポンド/米ドルは上がり続けましたが、英CPIが低下したことで、景況感がフォーカスされ下がりました。

英ポンド/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView

 今すぐユーロが下がるとは思いませんが、こうしたことがあるため、円安だからといってユーロ/円などのクロス円よりも、米ドル/円を買ったほうがいいと思っています。

金融ショックは年1、2回起こる。そろそろ頭の片隅に入れておくべきか

 日米欧ともに次回の金融政策発表は9月となり、経済指標を除けば、次の大きなイベントは8月24日(木)から26日(土)にかけて開催されるジャクソンホール会合となります。

【※関連記事はこちら!】
ジャクソンホール会議が行われる建物はジャクソンホール? なぜ、ジャクソンホールは世界中のトレーダーの注目を集めるのか?

 今は、円が中心の相場となっており、しばらく続く可能性がありそうです。

円売りに対するリスクは金融ショックです。今年3月に起きた、米地銀連鎖破綻のような規模の金融ショックであれば、年に1、2回は起こります

 株式市場が総楽観に傾いたようなときや、オシレーターが長期的な買われすぎ水準に達したようなときは、金融ショックに対する警戒が必要ですが、少なくとも向こう1週間程度を見通せば、そのような気配はなさそうです。

植田総裁の異例な発言。円安進行時の日銀には警戒心が高まりそう

 少し先の話になりますが、9月22日(金)の次回日銀会合が近づいた段階で、145円を超えるような円安が進んでいると要注意です。

 日銀は今回動いたことで、「しばらく政策変更はない」と考える人もいますが、そうは思いません。

 政策変更の理由を問われた植田和男総裁は、「今回は為替市場のボラティリティ(変動)も含めて考えている」と明言しました。

 これまで、金融政策を決める上で為替市場は考慮しないというのが建前だったため、為替市場も考慮して、金融政策を決めたと明言したのは、かなり異例です。それだけ円安に対する警戒心が強いことのあらわれだと思います。

 円安が進んで、日銀会合が近づいた場面では、これまで以上に日銀への警戒感を高めるかもしれないひと言でした。

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お知らせ

 毎週火曜日に更新されているこのコラムは、来週が最終回となります。

 2017年6月からスタートし、約6年間の連載となりましたが、次回が最後となります。最終回も引き続き、よろしくお願いいたします。

(構成/ミドルマン・高城泰)

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