米ドル/円は「急落のパターン」が崩れて、反発のターンへ
来週(7月24日~)に日銀会合(日銀金融政策決定会合)を控え、G7(先進7カ国)財務相・中央銀行総裁会議に出席中の、植田日銀総裁の発言が報道されました。
「ひと頃の金利形成の『ゆがみ』はかなり緩和されてきている」としており、この発言からは金融緩和を継続させるように感じます。
ただ、市場では日銀の政策変更期待がくすぶっており、先週(7月10日~)は1米ドル=142円から137.23円まで円高が急進しました。
この米ドル/円急落には、あるパターンがありました。「一度大台を割ると戻ることなく下げていく」というパターンです。
142円を下抜けると142円台に戻ることはなく、141円を下抜けると141円台に戻ることはなく、140円を下抜けると140円台に戻ることはない、という動きです。
そのときの節目が、レジスタンスになりながら下がってきたパターンです。
(出所:TradingView)
ただ、このパターンは金曜日(7月14日)に終了しました。
金曜日は138円台から137.23円まで下げたものの、138円台に戻り、高値は139円台へと大台を切り上げています。
(出所:TradingView)
先週ずっと続いていたパターンが終わったため、急落もいったんは小休止、ということになるのではないかと考えています。
金曜日の安値は、3月安値から6月高値のフィボナッチ・リトレースメントの50%押しでもありました。わかりやすい節目で止まったことからも、短期的な底打ちと判断していいのではないかと思います。
(出所:TradingView)
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IMMポジションは円売りに偏ったままも、「建玉は減った」ことの意味
先週の米ドル/円下落は、ポジション調整によるものだと思いますが、IMM(国際通貨先物市場)ポジションは円売りに偏ったままです。
買いポジションから売りポジションを引いた「ネット」は先々週とほぼ変わらず偏っているのですが、細かく見ると買い・売りともにポジション数が減っており、建玉そのものが減っています。
(詳しくはこちら → IMM通貨先物ポジション/経済指標・政策金利)
建玉が多いからこそ、「ストップで走る」といった大きな動きが出てきます。建玉が減ってきたことからも、先週のような急落はいったん落ち着くのではないかと考えています。
チャート的にも月曜日(7月17日)時点では反発するような形となっていますが、来週、7月28日(金)の日銀会合が近づくとともに、日銀動向についてのヘッドラインや、投機的な円買いの仕掛けが出てくる可能性があります。
そのため、この反発が終わって、再び下げ始まると戻り売りの形になるとも考えられます。
ただ、大きく下がるとも考えておらず、下が137円、上が141円程度の大きなレンジとなりそうな印象です。
(出所:TradingView)
中期展望:日銀の7月、円高の8月を過ぎれば円安再開か
もう少し視野を伸ばして、中期で考えると、8月は季節的に円買いとなりやすい時期です。
IMMポジションも円売りに偏ったままであることから、7月、8月は上値が重い展開となるのかもしれません。
ですが、9月以降は「意外高」もありうると思います。
(出所:TradingView)
日米金利差の水準は大きく、米ドル/円の売りポジションを1カ月持っているだけで60pipsのコストになります。
売りポジションを2カ月持っていたら、売値よりも1.2円下がってやっとトントンですから、売り手には厳しい金利差です。
そう考えると、相場がゴルティロックスに陥って動かなくなったときには、スワップ目当ての買いがジリジリと集まり、上がりやすい環境です。
米ドル/円の戦略を中期で考えるなら、8月に下げたところで買っておき、9月以降の上昇に期待する、というのも悪くないでしょう。
とはいえ、ひと相場終えた米ドル/円は今、買いたいとも売りたいとも感じません。
先週の米ドル/円急落は当初、米ドル安・円高のなかで進みましたが、円高は一服し、米ドル安だけが残っています。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円、クロス円は戻り売りのチャートに! 円高とともに進んだのは「腑に落ちない米ドル安」。米ドル/円が一番売りやすい形に。豪ドル/円のチャート形状も悪化(7月11日、バカラ村)
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重要サポート&大台をあっけなく割ったドルインデックス。米ドル安は続きそう
ドルインデックスは節目の100.80を割り込み、大台の100も割ってきました。
この下には目立ったサポートも見当たらず、しばらくは米ドル安が続きそうな形となっています。
(出所:TradingView)
ただ、先週にも書いたのですが、「なぜ米ドル安なのか」がまだ腑に落ちていません。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円、クロス円は戻り売りのチャートに! 円高とともに進んだのは「腑に落ちない米ドル安」。米ドル/円が一番売りやすい形に。豪ドル/円のチャート形状も悪化(7月11日、バカラ村)
先週発表された米CPI(消費者物価指数)が、前年比3.0%と予想以上にインフレが落ち着いてきたことで「利上げサイクルの終焉」が意識されたのかもしれませんが、説明としては不十分に感じます。
中央銀行が、外貨準備を米ドルから他通貨に換えているのか、なにか大きな資金が動いている気配を感じます。
理由はともかくとして、ドルインデックスのチャートを見るかぎり、米ドルを売りたい形となっています。どの通貨に対して米ドルを売るか、強さが目立つのはユーロや英ポンド、それにスイスフランの欧州通貨です。
米ドル/スイスフランは超長期のサポートラインを割ってきました。ドルインデックスのサポート割れと同時に割り込んでいるため、しばらくは下落が続きそうなチャートとなっています。
(出所:TradingView)
各国CPIの発表ラッシュ。日銀会合直前に発表される日本のCPIは?
来週のFOMC(米連邦公開市場委員会)、そして日銀会合を控え、今週(7月17日~)は日本、英国、カナダ、ニュージーランドなどでCPIが発表されます。
このなかで注目したいのが、7月21日(金)に発表される日本のCPIです。
日銀会合のちょうど1週間前ということもあり、予想3.2%(前年比)よりも高い数字が出るようだと、修正期待が高まって円高となる可能性もありそうです。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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