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田向宏行
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FX情報局

ジャクソンホール会議が行われる建物は
ジャクソンホール? なぜ、ジャクソンホールは
世界中のトレーダーの注目を集めるのか?

2021年08月23日(月)21:10公開 (2021年08月23日(月)21:10更新)
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ジャクソンホール(会議)ってなに?

 最近、為替関連の解説などで「ジャクソンホール」という言葉をよく聞くのではないでしょうか。

ジャクソンホールとはなんでしょうか?

【参考記事】
豪ドルは、先週がセリングクライマックスか。ジャクソンホール会議のパウエル講演を控え、ドルストレート回避なら、豪ドル/円の買いで(2021年8月23日、西原宏一&大橋ひろこ)
半導体不足トヨタも苦しみクロス円全面安、すっかりジャクソンホール待ち態勢だが(2021年8月20日、持田有紀子)
ロックダウン発表を受けNZドルが急落! ジャクソンホール講演より9月FOMCか?(2021年8月18日、FXデイトレーダーZERO)
ジャクソンホールでパウエル議長が再び「失言」か!? 米ドル/円は戻り売り継続で!(2019年8月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
ジャクソンホールを前にドラギECB総裁講演への期待後退。ユーロ/円は調整局面入り(2017年8月17日、西原宏一)
ジャクソンホールでは、イエレン議長より黒田総裁に注目すべし! その理由は?(2016年8月26日、陳満咲杜)

 「ジャクソンホール」というのは、毎年8月下旬に開催される経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」のこと。金融市場では末尾の「会議」という言葉を省略してしまって、単に「ジャクソンホール」と言われることがしばしばあります。

 このジャクソンホール会議を主催しているのは、米国の12地区にある連邦準備銀行(連銀)の1つ、カンザスシティ連銀です。ジャクソンホール会議の主催者は米国の1つの連銀にすぎないというわけですが、基本的な建て付けはそのようなものなのに、この会議には近年、世界的な注目が集まっています。

そういった金融市場にとってのジャクソンホール会議の重要性についてはあとで詳しく触れたいと思いますが、まずは場所のことを片付けましょう。

>>>「ジャクソンホール会議の重要性」について詳しくはコチラ

ジャクソンホールはホール(Hall、会場)ではなく、米国ワイオミング州の地域の名称

 ジャクソンホール会議という名前なら、会議が行われるのがジャクソンホールというホール(Hall、会場)なのだろうと思う人もいるかもしれません。コンサートホールやダンスホールの「ホール」と同じような意味で、ジャクソン「ホール」なのだろう、ということですね。

 しかし、ジャクソンホールはホール(Hall、会場)ではないのです。

ジャクソンホールとは米国西部、ワイオミング州にある地域の名称。英語で書けばJackson Hole。「Hall」ではなく、「Hole」なのです。Hole(穴)というからには、大きな穴でも開いているのか……と思いきや、ジャクソンホールの実際の地形は穴ではなく、谷となっています。

 ジャクソンホール(Jackson Hole)は谷の北側と東側の山があまりに高く、斜面が急で、19世紀初頭のわな猟師たちが穴に入ったかのように感じたことから、Hole(穴)と名付けられました。それではジャクソン(Jackson)はなんなのかというと、これは19世紀初頭のわな猟師たちの1人である、デイビッド・エドワード・ジャクソン (David Edward Jackson) に由来しています。

 そんなジャクソンホールは全米でも有数の観光地です。谷の北側にはジャクソン湖 (Jackson Lake) があり、谷の西半分はグランドティトン国立公園が占めています。近隣にはイエローストーン国立公園もあり、冬はスキーリゾートとして全米屈指の人気を誇るなど、観光客が1年を通して押し寄せてくるそうです。

 ジャクソンホールがこのように豊かな自然に恵まれていることは、カンザスシティ連銀がこの地を会議開催地に選んだことと無縁ではないのですが、それについては本記事の最後に触れます。

ジャクソンホールの写真

ジャクソンホール会議が行われるジャクソンホールは全米でも有数の観光地で、観光客が1年を通して押し寄せてくるそう (C)ullstein bild/Getty Images

ジャクソンホール会議に世界的な注目が集まる理由は?

 そんなジャクソンホールで毎年8月下旬に開催されるジャクソンホール会議では、世界の中銀総裁や政治家、学者、エコノミストなどが参加(※)し、世界経済が直面する重要な経済問題について議論が交わされます。

(※2020年、2021年のジャクソンホール会議はコロナ禍の状況を踏まえ、オンライン形式で開催)

 ジャクソンホール会議に世界的な注目が集まる理由。それは、過去にFRB(米連邦準備制度理事会)議長などが将来の金融政策の方向性を示したことがあったからです。

その契機となったのは2010年8月のジャクソンホール会議。このとき、当時のバーナンキFRB議長がジャクソンホール会議でQE2(量的緩和第2弾)導入を示唆しました。そして、同年11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、実際にQE2が導入されたことから、ジャクソンホール会議での発言が、今後の金融政策を占う上で重要とみなされるようになったのです。

当時のバーナンキFRB議長の写真

2010年8月のジャクソンホール会議では、当時のバーナンキFRB議長がQE2導入を示唆。11月のFOMCで、実際にQE2が導入された (C)Bloomberg/Getty Images

 また、2012年8月のジャクソンホール会議では、当時のバーナンキFRB議長が「より強い経済回復と労働市場のより持続的な改善を促すために、必要な追加緩和策をとる用意がある」と発言。この発言自体は新味に欠ける内容だったのですが、9月のFOMCでQE3が導入されたのです。

 そして、2014年8月のジャクソンホール会議では、当時のドラギECB(欧州中央銀行)総裁がユーロ圏のインフレ期待低下に強い懸念を表明。9月のECB理事会で追加利下げが行われたことも、ジャクソンホール会議への注目度を高めることになりました。

当時のドラギECB総裁の写真

2014年8月のジャクソンホール会議では、当時のドラギECB総裁がユーロ圏のインフレ期待低下に強い懸念を表明。翌月9月のECB理事会で追加利下げが行われた (C)Bloomberg/Getty Images

2018年~2020年のジャクソンホール会議での、パウエルFRB議長の主な発言は?

 パウエルFRB議長は例年、ジャクソンホール会議に出席して講演を行っています。今年(2021年)の講演テーマは「経済見通し」です。「経済見通し」とはずいぶん素っ気ないテーマではありますが、金融市場では、パウエルFRB議長がジャクソンホール会議で何を語るか、その発言内容が例年よりさらに注目されているのです。

 その理由を説明する前に、パウエルFRB議長が過去に出席した2018年、2019年、2020年のジャクソンホール会議で、主にどんなことを発言してきたのかを簡単に確認しましょう。

2018年、2019年、2020年のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の主な発言
2018年、2019年、2020年のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の主な発言

 2018年のジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長はインフレ率について、FRBが目標とする2%に接近してきたものの、2%を超えて上昇が加速するような気配は見えないことから、「緩やかな利上げ持続が適切」と指摘しました。

 2019年のジャクソンホール会議では、米中対立激化による貿易政策の不確実性や、インフレ圧力の鈍さを背景に、景気拡大維持のため「適切に対応する」と述べた一方、対応する時期については言及しませんでした。

 そして、2020年のジャクソンホール会議は、新型コロナウイルス感染拡大の影響からオンライン形式で行われましたが、そこでパウエルFRB議長は、今後FRBは一定期間の平均で2%のインフレ率を目標にすると発表しました。

 単純にピンポイントで2%のインフレ率を目標にするのではなく、一定期間の平均で2%のインフレ率を目標にしたということは、インフレ率が2%を超える状況が続いてもしばらくはそれを容認するということになります。これは、コロナ禍での金融緩和を当面続けるという明確なメッセージを発信したことになり、金融市場にとってはかなり重要な出来事だったと言えそうです。

2021年のジャクソンホール会議で、パウエルFRB議長がテーパリングの開始時期を示唆するのか、大注目に

 それでは、今年のジャクソンホール会議での、パウエルFRB議長の発言への注目度が例年より高まっているのはなぜか――それは、パウエルFRB議長がテーパリング(※)の開始時期を示唆する可能性があるからです。

(※「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 足もとの米国の経済状況をザックリ見てみると、今年前半の米経済は好調で、米国株も堅調。6月と7月の米CPI(消費者物価指数)は13年ぶりの高水準となり、7月の米雇用統計も良い結果でした。FOMCメンバーからはテーパリングに前向きな発言が増え、FOMC議事録では「ほとんどのメンバーが今年年内のテーパリング開始を支持」と記されるなど、テーパリング開始に向けて、着実に外堀が埋まりつつある感じです。

【参考記事】
米ドル買い戦略の継続に、益々自信を深めたワケは? 米ドル/円は緩やかに112円、ユーロ/米ドルは1.16ドルがターゲットに(8月19日、今井雅人)
米ドル買い戦略を継続! FOMCメンバーは考え方をすり合わせ、強気方向に統一している(8月12日、今井雅人)

 一方で、2021年春先ぐらいからの米CPI上昇加速について、パウエルFRB議長は一時的なものとかねてから発言しており、この姿勢は13年ぶりの高水準を維持した7月の米CPIを受けても変わりませんでした。同議長はテーパリング開始に慎重な姿勢を示しているのです。

 また、ミシガン大学消費者信頼感指数など、直近の経済指標には悪い結果が出ているものも結構あるうえに、新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株の感染は米国でも再び急拡大してきています。

【参考記事】
FRBがテーパリングに向けて慎重に動く中、トレンドが出にくい状態が続く。米ドル/円は利益確定を早めに行うトレードがよさそう(8月17日、バカラ村)
忍び寄る、デルタ変異株による新しい危機。デルタ株が猛威を振るうと、米国株は上昇するのか?(8月4日、志摩力男)

 つまり、今年のジャクソンホール会議は、FRBがテーパリングを早期にやるかどうかについて、プラス材料とマイナス材料が入り混じった微妙な状況のなかで開催されるということです。

 そんななかで、パウエルFRB議長がテーパリングの開始時期を示唆したとなれば、米長期金利(米10年債利回り)や米ドル/円が大きく上昇する可能性があります。逆に、テーパリングの開始時期を示唆しなければ、それはそれで米長期金利や米ドル/円が下落する可能性もあります。

 仮に、パウエルFRB議長の発言が金融市場にとって当たり障りのない内容になったとしても、9月21日(火)から22日(水)開催のFOMCで、テーパリングの開始が決定されれば、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言が蒸し返されて話題となる、といったことも考えられそうです。

2021年のジャクソンホール会議は対面形式からオンライン形式に切り替え

 そんな今年のジャクソンホール会議は、8月26日(木)~8月28日(土)にジャクソンホールの現地に集まって、従来どおりの対面形式で行われる予定でした。

 しかし、主催者のカンザスシティ連銀は8月20日(金)、コロナ禍の状況を踏まえ、今年のジャクソンホール会議をオンライン形式に切り替え、日程を8月27日(金)に限ると発表しました。

 それでは、肝心のパウエルFRB議長の講演がいつ行われるのかというと、日本時間8月27日(金)23時から、カンザスシティ連銀のYouTubeチャンネルで講演する予定となっています。

 日本時間8月27日(金)23時ということは、FX、米国株、米国債などの取引時間中の講演となります。金融市場は、パウエルFRB議長の一言一句を固唾を呑んで見守りながら、テーパリング関連の発言などが伝われば、ダイレクトに市場が変動するといった展開になりそうです。

パウエルFRB議長の写真

今年のジャクソンホール会議は、コロナ禍の状況を踏まえ、対面形式からオンライン形式に切り替えられ、2021年8月27日(金)の1日限りの開催に。パウエルFRB議長の講演は日本時間8月27日(金)23時の予定で、テーパリングの開始時期を示唆するのか、金融市場は固唾を呑んで見守ることになりそう (C)Bloomberg/Getty Images News

フライフィッシング大好きな当時のボルカーFRB議長を招聘するため、経済シンポジウムがジャクソンホールで開催されるように

 最後に、ジャクソンホール会議の歴史について簡単に紹介したいと思います。

 カンザスシティ連銀が経済シンポジウムの開催を始めたのは1978年から。2021年まで44年の歴史があるシンポジウムになります。

 もっとも、1978年から1981年までは農業経済政策をテーマとしていて、世界の注目を集めるようなシンポジウムではありませんでした。また、開催場所もジャクソンホールではなく、毎年違った場所で開催されており、この期間のシンポジウムはそもそも、ジャクソンホール会議とは呼ばれていませんでした

 その後、カンザスシティ連銀は1982年から経済シンポジウムをジャクソンホールで開催するようになります。その狙いは、当時のボルカーFRB議長を招聘することにありました。

 ボルカーFRB議長は大のフライフィッシング(※)好きでした。ジャクソンホール全域には、フライフィッシングの名所として有名なスネーク川が流れていることから、経済シンポジウムをジャクソンホールで開催して、フライフィッシング好きのボルカーFRB議長を招聘できれば、世界の注目を集めるシンポジウムに発展すると、カンザスシティ連銀は考えたようです。

(※フライフィッシング(西洋式毛ばり釣り)とは、虫に見せかけた毛ばり(フライ)を川に流し、魚を釣ること)

 そして実際に、ジャクソンホール会議は毎年、世界の中銀総裁や政治家、学者、エコノミストなどが集結する注目イベントになったというわけです。

 ちなみに、記事冒頭でジャクソンホールの「谷の北側にはジャクソン湖 (Jackson Lake) 」があると書きましたが、ジャクソンホール会議が行われる会場は、ジャクソン湖のほとりに位置する「ジャクソン レイク ロッジ(Jackson Lake Lodge)」です。

ジャクソン レイク ロッジ公式サイト
ジャクソン レイク ロッジ公式サイト

 記事冒頭で、「ジャクソンホール会議という名前なら、会議が行われるのがジャクソンホールというホール(Hall、会場)なのだろうと思う人もいるかもしれません」と書きましたが、ジャクソンホール会議が行われる会場は、ジャクソンホールというホール(Hall、会場)ではなく、ジャクソン レイク ロッジだった、ということになります。

まとめ

 ここまで、ジャクソンホール会議について見てきました。

 米国西部に位置するワイオミング州ジャクソンホールで、毎年8月下旬に開催される経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」は、世界の中銀総裁や政治家、学者、エコノミストなどが参加し、世界経済が直面する重要な経済問題について議論が交わされます。

 過去のジャクソンホール会議で、当時のバーナンキFRB議長やドラギECB総裁が、将来の金融政策の方向性を示唆する発言をしたことから、この会議は世界の注目を集める一大イベントとして知られています。

 2021年は8月26日(木)から8月28日(土)に対面形式で開催される予定でしたが、コロナ禍の状況を踏まえ、8月27日(金)1日限りのオンライン形式での開催に切り替えられました。

 2021年のジャクソンホール会議で、金融市場が一番注目しているのは、パウエルFRB議長がテーパリングの開始時期を示唆するかどうか

 パウエルFRB議長がテーパリングの開始時期を示唆したとなれば、米長期金利や米ドル/円が大きく上昇する可能性があります。逆に、テーパリングの開始時期を示唆しなければ、それはそれで米長期金利や米ドル/円が下落する可能性もあります。

 仮に、パウエルFRB議長の発言が金融市場にとって当たり障りのない内容になったとしても、9月21日(火)から22日(水)開催のFOMCで、テーパリングの開始が決定されれば、ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の発言が蒸し返されて話題となる、といったことも考えられそうです。

パウエルFRB議長の講演は日本時間8月27日(金)23時に予定されており、FX、米国株、米国債などの取引時間中の講演となります。金融市場は、パウエルFRB議長の一言一句を固唾を呑んで見守りながら、テーパリング関連の発言などが伝われば、ダイレクトに市場が変動するといった展開になりそうです。

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