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神田トレードによる米ドル/円逆張りポジションは報われるのか?
日本の通貨当局は為替介入を警告しますが、米ドル/円レートは150円の少し下に張りついたままです。円高に行く気配は、あまりありません。
昨年(2022年)の為替介入が良く効いたからでしょうか、神田財務官は個人投資家からの信頼が厚く、多くの人が米ドル/円ショート(売り建て)で逆張りしているようです。
しかし、そのポジションは報われるのでしょうか。介入期待の米ドル/円ショートポジションは「神田トレード」と呼ばれているようです。
円安進行の中、FX投資家のドル・ポジション(対円)は、ついに4週連続の売り越しとなりました。これは異例! 高水準の日米金利差によるスワップの払いもある中、あえて日本政府の円買い介入に賭けた逆張りでしょうか? この勝負、果たしていかなる結末が?? pic.twitter.com/LL29kPhTbC
— 清水功哉(日本経済新聞) (@IsayaShimizu) September 28, 2023
今は「介入するぞ!」と脅すことで円安を止めていますが、いつまで持つのでしょうか。海外の投機筋も「介入があれば、そこで米ドル/円をロングにしたい」と待っています。「神田トレード」組のショートポジションもあります。介入は絶好の円売りチャンスになりそうです。
150円接近、介入を歓迎する海外勢
(出所:日本経済新聞)
状況を客観的に見ましょう。そもそも、今年(2023年)は米ドル/円が下がるという予想が多かったはずです。
米国は金融引き締めを停止し、利下げ局面に入る。日本は新しい日銀総裁を迎え、過度な緩和政策を中止し、いずれ引き締めに転じる。金融政策のダイバージェンスから、米ドル/円のショートが「Trade of the Year」だとされていました。
ところが、強力な引き締めにも関わらず米国経済は好調、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策転換は逃げ水のように遠のいていきます。一方、日銀は「物価目標の持続的安定的な実現が見通せる状況に至っていない」として、金融緩和を続けます。7月にYCC(イールドカーブ・コントロール)修正に動きましたが、ほとんど円安修正の効果はありませんでした。
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円の運命は米国の金融政策次第。日本に円をコントロールする力はない
なぜこれほど円が弱いのか。
それは、日本が金融引き締めに動けないと見切られているからです。賃金上昇からの好循環を目指すと植田総裁が言っており、確認のためには来年(2024年)の春闘まで待たなければなりません。よって、マイナス金利解除は早くて来年(2024年)4月と予想されています。
また、マイナス金利を解除しても、そこからどこまで金利を引き上げることができるでしょうか?
市場参加者の多くは、日銀は利上げしても0.25%ないしは0.50%程度と想定しています。他の国のように、0.50%とか0.75%ずつの引き締めには動けないのです。
それは、根本の経済が弱いからです。賃金上昇が需要の拡大、企業収益の拡大となり、さらなる賃金上昇に結びつく、こうした持続的賃金上昇による好循環が生まれればと政府も日銀も言います。実現できればそれに勝るものはありませんが、過去20~30年実現できなかったことが、ある日突然できるようになるでしょうか。
人口が減少する高齢化社会では、そもそも基礎的な需要が毎年減少します。日銀の言う、持続的賃金上昇による物価目標の実現というのは相当難しい。
そして超金融緩和政策の裏にある本当の理由、日本の債務があまりにも巨額なので、そもそも金利を上げられないということがあります。金利が上昇すると、債務が自己膨張し、国家破綻となります。
こうした根本的理由により、日本が金融引き締めに動けないのであれば、円の運命は米国の金融政策次第となります。米国経済が好調でFRBが引き締めに動けば、円は限りなく安くなり、米国経済がリセッション(景気後退)に陥り、FRBが金融緩和に動けば、円は反発します。日本に円をコントロールする力はありません。
何か影響を及ぼすとすれば、為替介入しかないのですが、所詮金額に限界があります。
米国経済のリセッションが当面先となれば、5%以上もの金利差があるので、当然、米ドル高・円安になります。まもなく新NISAも始まり、資産運用先を探すマネーが外に行き始めるでしょう。
(出所:TradingView)
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近づく「真実の瞬間(The Moment of Truth)」。米ドル/円は当面150円前後の攻防だがやがて突破される
円安は続きます。目先は、介入等で押し止めることができるかも知れませんが、時間稼ぎでしかありません。そこで、日本は決断を迫られます。
金融緩和を続けて、永遠の円安を許容するのか。それとも、国内景気を冷やし利払いが増えたとしても、金融引き締めに転じて円防衛に動くのか。
為替防衛すれば、インフレは収まりますが、国内景気は冷ますことになるでしょう。しかし、インフレの高騰から自民党が政権を失うかもしれないとなると、その方向に動くかも知れません。
参考になるのが米国の例です。米国は1971年、ニクソン政権の時に金ドル交換停止に踏み切り、為替は変動相場制へと移行し米ドル安が進みましたが、7年後の1978年11月1日、カーター大統領は米ドルの下落に歯止めをかけるために「米ドル防衛策」を発表しました。それは、金利の引き上げ(公定歩合1%上げ、預金準備率2%上げ)、外貨建ての債券発行(カーターボンド、ドルの価値保証)、そして各国と協調介入に動きました。
日本も米ドル/円が170~180円ぐらいになると、さすがに円安がほとほと嫌になり、「円防衛策」を出して円安対策をするかもしれません。
カーター大統領が米ドル防衛策を出したのが、1ドル=178円前後のときです。反対側なので、その為替レートに意味はないですが、米ドル/円もそこまでいけば、日本政府も動くのではないかと思います。
また、そうした状況を想定しなければならないほど、現在の円は弱いと思います。当面は為替介入との戦いで、150円前後の攻防になるかもしれませんが、やがてそれは突破され、160円、170円を試す展開まで想定しなければならないと思います。
(出所:TradingView)
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