YCCの運用緩和は、金融緩和政策の変更とは無関係。日銀は当面、金融政策を変更するつもりはない
今回は、まず日銀の話から始めたいと思います。
7月28日(金)に開催された、日銀の金融政策決定会合の議事録が発表されました。
この会合では、YCC(イールドカーブコントロール)の運用柔軟化が決定されましたので、そのときの議論がどういうものだったかに注目が集まりました。
まず、物価の見通しに関してですが、「足元の物価上昇率は、4月の展望レポートにおける想定よりも上振れているとの認識を共有」してはいますが、一方で「中心的な物価の見通しは2023年度は大幅に上振れているが、2024年度と2025年度は概ね不変であるとの認識を共有」とありますので、来年(2024年)以降、物価は下がるとみていることが確認されました。
これを見る限り、金利の正常化に向かう兆候はありませんでした。
さらに「何人かの委員は、今回の運用の柔軟化は出口への一歩ではなく、日本銀行が粘り強く金融緩和を進めていく姿勢に変わりはないことを明確に説明していく必要があると指摘」しています。
つまり、YCCの運用緩和は、金融緩和政策の変更とは無関係だということがわかりました。
日銀は当面、金融政策を変更するつもりはありません。
ただ、以前から申し上げている通り、どこかでYCC自体を廃止する可能性はありますが、もし、そうだとしても、緩和政策の変更ではないと説明すると思います。
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急激に円安にならなければ介入しづらいが、米ドル/円が昨年高値を超えるような展開になれば、介入が入りそう
次に、為替介入の可能性についてです。
米ドル/円はいよいよ150円に近づいてきましたので、為替介入の可能性は高まっています。
(出所:TradingView)
しかし、イエレン米財務長官が「日本の為替介入は、過度な変動を緩和する目的であれば正当化できる」という趣旨の発言をしたことによって、急激に円安になっている状況でなければ介入がしづらくなっています。
また、現在は後述するとおり、米国の長期金利(10年債利回り)の上昇による米ドル高が原因ですので、それも介入の阻害要因になっていると思います。
ただ、そうはいっても、昨年(2022年)の高値が視野に入ってきましたので、そこを超えるような展開になってくれば、介入が入るのではないかと考えています。
米長期金利はリーマンショック以前の水準に戻り、米ドル全面高を誘発している
最後に、現在のメインテーマである米国の長期金利の上昇です。
一時4.6%を超え、リーマンショック以前の水準に戻ってきました。実に十数年ぶりです。これが米ドル全面高を誘発しています。
(出所:TradingView)
度重なる利上げにもかかわらず、直近の経済指標が堅調であることが要因となっています。
他の主要国の利上げが停止している状況ですので、どうしても米国の優位性が目立ちます。
特に、米国の国債市場は世界最大ですので、その国債の利回りが上昇してくれば、他国からの資金シフトが起きます。
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米ドル買い方針を継続。ユーロ/米ドルは中期的に1.00ドルのパリティが視野に
今後発表される米国の経済指標に明確な鈍化が確認されない限り、この傾向は続く可能性が高いと思いますので、基本は米ドル買い方針を継続します。
ユーロ/米ドルを見ると、長らくもみ合っていた1.06ドル台を下に抜けました。中期的には1.00ドルのパリティが視野に入ってきたのではないかと考えています。
(出所:TradingView)
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