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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

2023年8月はちょっと不思議な月だった…。仮に米国が
深刻な景気後退に陥り米金利が低下しても、米ドル/円の
下値が限定的なものになるその理由とは?

2023年08月31日(木)22:06公開 (2023年08月31日(木)22:06更新)
志摩力男

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2023年8月はちょっと不思議な月だった

 2023年8月は、ちょっと不思議な月でした。

 特徴的だったのは米長期金利の上昇ですが、特に超長期(Super Long)とも呼ばれる30年債利回りの上昇が顕著でした。

米30年債利回り 週足
米30年債利回り 週足

(出所:TradingView・筆者提供)

 しかし、考えてみると少し不思議です。米国の政策金利は、引き上げてもあと1回ぐらいと言われています。つまり遅かれ早かれ、天井です。政策金利の天井が迫っているのに、なぜ米長期金利は上昇したのでしょうか。

Fed Watch
Fed Watch

(出所:CME・筆者提供)

 いくつか理由がありますが、もっとも大きかったのが、ニューヨーク連銀がブログに掲載した議論、すなわち米国の自然利子率(Rスター)が上昇しているとの議論が、ジャクソンホールのテーマになるとウワサされたことです。

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米ドル/円は一時147.34円まで上昇。米超長期金利の低下には追随せず

 自然利子率が上がっているのであれば、FOMC(米連邦公開市場委員会)におけるLonger Run(長期均衡金利)も上昇し、長期金利が従来よりも高くならなければならないということになります。

 この長期金利の上昇に、米ドル/円は上昇し、米国株は警戒で下落しました。

米ドル/円・米30年債利回り・ナスダック総合指数 日足
米ドル/円・米30年債利回り・ナスダック総合指数

(出所:TradingView・筆者提供)

 米超長期金利はジャクソンホール会議目前の8月20日(日)前後にピークを打ち、低下しています。そして、ナスダック総合指数は金利の動きを追い、下落し急反発しています。

 しかしながら、米ドル/円は米超長期金利が低下してもそれに追随せず、8月29日(火)には147.34円と年初来高値まで更新しています。

 しかし、米国の政策金利が今後低下する道筋が見えているのであれば、米超長期金利も低下して良いはずです。米国の長期金利が低下すると、米国株は自然に反発します。

米国経済がいかに強いとは言え、5%を超える政策金利を続けていれば、どこかで景気がスローダウンしてくるでしょう。

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米金利が低下しても急激には下がらない。米ドル/円の下値も限定的か

 今週(8月28日~)は、JOLTS(求人労働異動調査)の数字が882.7万件と予想946.5万件を大きく下回りました。ADP雇用統計も17.7万人の増加と、前回の37.1万人の増加を下回りました。9月1日(金)に発表となる米雇用統計が弱ければ、さらに金利が下がることになり、その時はさすがに米ドル/円も少しは下落するでしょう。

 強すぎる米国経済も今がピークであり、米金利が低下すれば、米ドル/円もピークを打つのではないかと見る人も増えています。

 しかし、筆者としては、仮に米金利がピークを打ったとしても急激に下がるわけでもないので、米ドル/円は仮に下がったとしても下値は限定的ではないかと思っています。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:TradingView

 米国経済が深刻な景気後退に陥り、米10年債利回りが3%を割ってくる状況が見えてくるならば、米ドル/円も結構下がることになるでしょうが、当面、米10年債利回りは4%前後でサポートされ、米ドル/円も大きな円高局面にはなりにくいと思っています。


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