雇用統計の結果がどうであれ、米ドル高は一服する可能性が高い!
米ドル高は、天井知らずの様相を露呈している。今週(10月2日~)も陽線引けであれば、ドルインデックスは7月後半から週足にて「12陽連」を果たし、まさに「陽の極み」の状況を示している。
(出所:TradingView)
今晩(10月6日)の米雇用統計次第で、米ドル全般は一段と買われ、ドルインデックスはさらに大きく上値余地を拡大する、といった見通しが「無難」なので、筆者もそう書けば楽であることは間違いない。
しかし、そのような「いい加減」な見通しは、筆者には書けない。なぜなら、「データ次第」といった見通しは、見通しとして成り立たない上に、誰も聞きたくないはずだからだ。内容次第、データ次第となら誰にでも言えるし、いつでも言えるから、まったく見通しとして成り立たない。
独断と偏見になってしまうリスクを冒して、あえて言うなら、筆者は今晩(10月6日)の米雇用統計次第ではなく、雇用統計がどうであれ、米ドル高一服の「きっかけ」になる公算が高いと思う。
なぜなら、前記のように、今、米ドル全体は「陽の極み」の状況なので、米ドルロング筋の「出尽くし」になりやすいと推測されるからだ。
もっとも、7月後半から米ドルの連騰は、米金利の暴騰と連動してきた側面が大きい。米10年物国債利回りは、一時4.887%まで急騰しただけに、米ドル全面高が天井知らずの様相を見せたのも、自然ななりゆきだと思われる。
(出所:TradingView)
ここまでくると、いつものように、金利の一段上昇といった予測が市場のコンセンサスとなっている。ウォール街の面々は米10年物国債利回りが早晩5%乗せといった予測を連発し、大物たちも相次いで米高金利の長期化を予言。また、高金利長期化がもたらすリスクに関する警告を繰り返している。
しかし、株の王様ことバフェット氏がかつて指摘したように、一貫して正しく金利の動向を予測できる人間は、この世にいない。ウォール街の面々はもちろん、FRB(米連邦準備制度理事会)の幹部たちさえ実に将来のことを読み間違ってきた前例がたくさんあり、枚挙に暇がない。
そもそもコロナ後の金利正常化において、FRBの開始のタイミングに判断ミスがあったから、今回の大幅利上げ、また利上げ周期の長期化がもたらされた経緯がある。同じように、利上げサイクルのピークアウト、また次回利下げのタイミングに関する判断について、FRBが間違いを犯さない、という保証はない。
行きすぎは早晩修正されるが、その度合いを見極めるのは難しい
前回のFOMC(米連邦公開市場委員会)通過後、いわゆる高金利の長期化が市場のコンセンサスになっているが、それ自体もインフルエンザのようなもので、流行りといった側面が強い。
去年(2022年)11、12月における米ドルの急落局面を思い出していただきたい。当日はいわゆる「逆CPIショック」で、市場は早期利上げを想定していたから、パニック的、また異常な米ドル売りを仕掛けていたことが記憶に新しいはずだ。
言ってみれば、市場コンセンサスもトレンドも往々にして行きすぎとなるものだ。行きすぎたからと言って、必ずすぐ修正されるものではない上、行きすぎたからこそさらなる行きすぎをもたらす、といった「悪循環」になるケースも多い。
しかし、行きすぎは早晩修正されるというのも、市場の歴史に照らして考えるとわかる。難しいのは、その度合いを見極めることだ。
なかなか数値化できないが、日本語で言う「猫も杓子も」、すなわち群集心理の偏りが大きければ大きいほど、度合が深く、反転されるタイミングに近い、という経験則がある。
往々にして、「猫も杓子も」の現象が深刻になればなるほど、「その方向しかない」と思われるような局面になりやすく、また市場センチメントが偏りすぎになりやすいから、要注意だ。
なんだかんだか言って、今、マーケットの関心は米金利動向に集中しているだろう。米国債が売られれば売られるほど、金利が上昇していくから、金利が連騰すればするほど、米国債売りの意欲が刺激され、金利が一段と高まっていく、といった連鎖が継続的に観察されている。
だからこそ、足元は要注意だ。
本日(10月6日)の筆者のX(旧ツイッター)のつぶやきが示しているように、「猫も杓子も」米国債売りに参入している状態で、米金利の一段高しか見込んでいないようだ。これは、健全な状況ではなく、むしろかなり脆弱だと思う。
猫も杓子も米国債売り(30年来最多)に賭けるから、一旦反転が有れば.....今晩の米雇用統計が「きっかけ」になるかも^_^ #米雇用統計 pic.twitter.com/e3ahpYcngA
— 陳まさと@プライスアクション (@chinmasato) October 6, 2023
ゆえに、今晩(10月6日)の米雇用統計次第ではなく、米雇用統計がどうであれ、実は米ドル高一服になりやすいかと思う。
何しろ「猫も杓子も」米国債売り、また米ドル買いに仕掛けている。よって、仮に雇用統計がさらなる利上げを支持する内容となれば、「猫も杓子も」米国債のショートポジションや米ドルのロングポジションをたくさん持っているから、一時の米国債急落や米ドルの高騰を、決済のタイミングと見なして利益確定に走るだろう。
そうなれば、利上げを支持する内容になっても、米国債の一段低下や米ドルの一段高が長く続かず、また反転してくる可能性さえ大きいから、要注意だ。
もちろん、さらなる利上げや高金利の長期化を支持しない中身となれば、「猫も杓子も」過大なポジションを抱えているから、狼狽決済に殺到する可能性が大きい。この場合は結果的に米ドル高の一服、また反転のきっかけとなるが、「データ次第」の話ではないことを強調しておきたい。
日銀介入の有無に関する論争は、大した意味を持たない
最後に、10月3日(火)に米ドル/円の波乱があったが、日銀介入の有無に関する論争は、大した意味を持たないことを記しておきたい。
クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の話もいっしょで、詳細はまた次回に譲りたいが、米ドルの高値を追いたくないことを再度強調しておきたい。市況はいかに。
15:30執筆
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