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ハマスのイスラエル奇襲でパンドラの箱が開けられた?
10月7日(土)、パレスチナ、ガザ地区を実効支配するハマスが、イスラエルを奇襲しました。
5000発ものロケット弾が打ち込まれ、イスラエルが誇るアイアンドームもこの飽和攻撃を防ぎきれず、一部はテルアビブ市内にも着弾、同時に国境が破られ、1000人ほどのハマス側兵士がイスラエル領内に入り、無差別に銃を撃ち残忍な殺戮行為を行い、音楽フェスティバルの参加者100名以上が人質として、ガザ地区内に連れ去られました。
中東最強を誇るIDF(イスラエル国防軍)、世界最強とも言われる諜報機関モサド、彼らはまったくハマスの計画に気付かず、大変な惨事となりました。
イスラエルはハマスに宣戦布告、これは1973年の第4次中東戦争以来になります。
ネタニヤフ首相は「われわれは戦争状態にある。敵はかつてない代償を払うだろう」と宣言しました。米国もイスラエルを完全に支持し「米国はイスラエルと共にある」と述べました。
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当初の市場の反応は意外にも穏やかだった
近年にない規模での中東における衝突ですが、当初の市場の反応は意外にも穏やかでした。
金(ゴールド)は1%ほど、原油価格も3%ほど上昇しましたが、かつてであれば、原油価格は100ドルを越えて吹っ飛んでいたでしょう。
株は、当初少し下げました。しかし、米長期金利が「質への逃避」や、FRB(米連邦準備制度理事会)関係者から長期金利上昇への懸念が相次いだことで低下、下落する米金利を見て株価はむしろ上昇しました。日経平均は週を通して1500円ほど上昇、米国株も安値から反発しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米ドル/円は1円弱円高に、しかしその後は149円台後半へ円安が進みました。スイスフランの急騰と比べると、あまりにも寂しい動き。新旧「リスクオフ通貨」の交代を感じさせられました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
戦いがガザ地区内に留まるのか否かが重要なポイントになる
ここからのマーケットへの影響ですが、エスカレーションがあるのかどうかで違ってきます。すなわち、戦いがガザ地区内の小規模なもので終わるのか、それとも他の地域を巻き込むものになるのか。
ハマスの背後にはイランがいると言われています。これまでさまざまな形でイランがハマスをサポートしてきたのは間違いないでしょう。しかし、今回のテロにイランが直接的に関与していたかはわかりません。
米国もエスカレーションは望まないでしょう。中東で戦火が広がると、原油価格が上昇します。バイデン大統領は、大統領選挙前になんとかインフレ率を抑えたいはずです。そのため、最近は秘密裏にイランの石油輸出拡大も認めていました。
イラン側も経済の立て直しが最優先なので、米国側と対立したくないはずです。9月18日(月)、米国による制裁で凍結されていた60億ドルを、囚人交換で手にすることができましたが、今回のことで再度凍結ということになってしまいました。
米国は背後のイランに甘い顔はできなくなりました。イランが特別に許可されていた中国への原油輸出が制限される可能性は高まっています。どの程度制限されるかわかりませんが、それは原油価格上昇につながります。
万が一、イランによる今回のテロ行為の積極的関与が示される証拠が出てきたら、イスラエルはイラン攻撃に動くかもしれません。その時は、次元が変わります。原油価格は吹っ飛び、金も上昇、世界中でリスクオフの動きになるでしょう。
(出所:TradingView)
ただ、そうなることを米国は望んでないでしょうから、イスラエルを抑えると思います。
しかし、ハマス自身はエスカレーションを望んでいるはずです。今回のテロの目的が何なのか、それは明確にはわかっていません。サウジとイスラエルが国交回復交渉をしていたので、それを阻止したかったようではあります。
今回のテロは意図的に残忍に行ったようにも見えます。イスラエル側は当然怒り狂い、激烈な攻撃を仕掛けハマス殲滅を目指すでしょう。そこだけを見れば、なぜハマスがテロを行ったのか疑問です。
だが、これまでと違い、イスラエルが行う攻撃は世界中に報道されることになります。狭いガザ地区内で軍事行動を行うので、当然一般市民の犠牲者も多数出るでしょう。コーヘン・イスラエル駐日代表の話を聞けば、軍事行動の際に多少一般市民の犠牲が出ても、それはしょうがないことに聞こえます。
テロ攻撃を受けたイスラエルには、当然自衛の権利があります。ハマス殲滅に動くでしょうが、ハマスのリーダーはガザにはいません。どこか海外にいます。何を持って戦闘終結とするのかが難しい。
米国がオサマ・ビン・ラディンを追いかけて、最終的にパキスタンで抹殺しましたが、イスラエルも同じことをするのでしょう。
しかし、その過程で世界はガザにおける多数の民間人犠牲者を見ることになります。数千では済まず、数万という単位で犠牲者が出るかもしれません。
連日、民間人の虐殺を見た場合、世界の多くの人々は、当初イスラエルに同情していても、その過激な行動にショックを受け、支持が失われる可能性があります。
ハマス側としては、イスラエルの残酷な面が世界に示されることで、逆説的ですが、パレスチナ問題が世界中の人々に再認識されることを考えているのではないか、と思いました。
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原油価格が100ドル突破するような動きになれば、米ドル/円は155円方向へ
安倍元首相が山上容疑者に殺害されたとき、日本中が喪に服し偉大な宰相の死を悼み、同情が自民党に集まると岸田首相は思ったはずです。
しかし、事態は意外な方向に転がり、統一教会という、日本人であれば誰もが一度は嫌な思いをした経験がある、特殊な宗教団体に対する憎しみ、山上容疑者への同情へと変わりました。
山上容疑者のやったことは決して許されることではありません。また、ハマスの行為も許されることでありません。しかし、事の経緯はともかく、統一教会は解散の方向に向かっています。
イスラエルの怒りは理解できますが、行き過ぎたガザでの軍事行動がイスラエルバッシングにつながる可能性はあるでしょう。
特に欧州はどこまでイスラエルの行為に付き合いきれるでしょうか。それこそ、ハマスが狙っていることかもしれません。
思わぬ方向にエスカレーションする可能性があり、その場合、為替市場ではやはりスイスフランが買われるのでしょうか。
今回リスクオフの円買いがあまり出なかったとしたら、円売りに転嫁する可能性があります。
そして、何かの衝撃で原油価格が100ドルを突破するようなことになったら、米ドル/円は150円を越えて、155円方向に行くことになるのでしょう。
(出所:TradingView)
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