目先は米ドル高を支援する材料が多く、米ドル高の勢いが止まらない
米ドル高の勢いが止まらない。執筆中の現時点で、ドルインデックスは103.69まで高騰し、いったん2024年8月2日(金)以来の高値に達していた。
(出所:TradingView)
無理もない、目先、米ドル高を支援する材料が多いからだ。
まず、ECB(欧州中央銀行)は想定どおりとはいえ、昨日(10月17日)利下げを決定した。連続利下げである上、これからの見通しに関して、総じてハト派の姿勢を示したから、早ければ12月にも利下げありと思われる。
BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])に関しても同様で、総裁のハト派発言以来、英利下げ継続の観測が高まっており、主要外貨(円を除く)の多くは利下げ周期にある。
対照的に、9月米雇用統計や昨日(10月17日)リリースされた米小売売上高などの結果から、最近の米経済指標の総合判断として、米大幅利下げ観測を後退させたのは事実である。
この前、一時過激な利下げ観測の剥落があったから、目先は一転して「もう年内は利下げなし」といった「反動」も出始めている模様だ。
ゆえに、ドルインデックスの連騰は、円を除き、想定される通貨間の金利差(見通し)に基づいており、「正当化」できる節がある。この間に、米利下げに関する過激な予想が修正されるわけで、米ドル安に対する反動、という位置付けなら話もわかりやすいかと思う。
米ドルの反騰はそろそろ終焉の時期、米ドルの高値をむやみに
追わないほうが賢明
肝心なのは、これからどうなるか、である。米ドル安に対して大きな反動があったのはわかるが、その反動が続くかどうか、そしてどこまで続くかが問題なのだ。
結論から申し上げると、筆者は前回のコラムと同じ見方を維持、米ドルの反動高が想定より強かったが、そろそろ終焉の時期に差し掛かり、ここからさらなる上昇余地は限られていると強調しておきたい。
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⇒米ドル/円の切り返しに上値余地あり! 性急な戻り売りは避けたいが、本流の米ドル安は変わらないとみる。米長期金利やドルインデックスの頭打ちも間近か?(2024年10月11日、陳満咲杜)
(出所:TradingView)
なぜなら、前述のように、米ドル高を支援する材料が出揃っており、主要外貨の利下げ継続を織り込んだ上、米ドルの長期金利がさらに上がっていくとの想定が目下米ドルのリバウンドにつながっているが、これからさらなる米ドル高の支援材料が出ない限り、米ドルのリバウンドも限界に差し掛かる、というリスクのほうが大きいからだ。
言い換えれば、現時点のレートはすでに外貨のマイナス材料やネガティブな見通し、そして米ドルのプラス材料やアクティブな要素を目いっぱい織り込んでおり、これから新たな材料が出ない限り、米ドルの反動が続くよりも、続かない公算が高い。米ドルの高値をむやみに追わないほうが賢明だと思う。
ユーロは「売られすぎ」の疑いあり。200日線から考えて、米ドルに対してはユーロより英ポンドや豪ドルの方が反発しやすいか
同じ視点では、目先、ユーロは悪材料を目いっぱい織り込んでいるから、逆に「売られすぎ」の疑いがある。
ユーロ/米ドルはいったん1.08ドルの節目に接近、日足におけるRSI(2)が大きく2024年年初来安値に対応した水準(1)を割りこんでおり、いわゆる「リバーサル」のサインを鮮明に点灯させた。
(出所:TradingView)
ここからユーロの下落余地があっても限定的であり、むしろこれから底打ちを図りやすいかとみる。
そのほかの主要通貨対米ドルは概ね同じ状況にあり、200日移動平均線(200日線)の割り込みの有無を基準としたら、英ポンド、豪ドルなど主要外貨対米ドルはユーロ/米ドルよりはマシな状況なので、米ドルの頭打ちがあれば、英ポンドや豪ドルのほうがより反発しやすいかと思う。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
厄介なのは円だ。いったん150円の節目を打診したものの、ドルインデックスの急騰に比べ、米ドル/円のリバウンドは「高揚感」がなく、むしろ「出遅れている」感じさえある。
なにしろ、米ドル高の時期において、米ドル全体より米ドル/円のほうがより反応するのがいままでのパターンなので、今回は米ドルのロング筋にとって、「物足りない」感があったのではと推測できる。
利上げ余地のある円は本来売られていくような存在ではないが、米長期金利が反騰している間は仕方がない
もっとも、円は主要外貨のうち、唯一利下げではなく、利上げの余地のある通貨として、本来売られていくような存在ではない。
しかし、為替は米ドル次第、そして米ドルは米長期金利次第なので、米長期金利が反騰している間は仕方がないとも言える。
米10年物国債利回りがいったん4.12%まで戻っていたことから考えて、大まかま試算では、仮に同金利が4.2%まで上昇するなら、日米金利差がおよそ3.2%へ拡大し、米ドル/円は151円を超えることになる。そして日米金利差が3.25%へ拡大した場合(米金利4.3%を想定)、152円以上の戻りがあってもおかしくないとされる。
(出所:TradingView)
しかし、ものごとには限界がある。日米金利差がこれから大きく拡大していくとは思わない。そもそも長期金利はいろんな思惑を織り込んだ上で形成されているから、日米金利差がガンガン拡大していくといった推測はあてにならない。
このあたりの話はまた次回に譲るが、最後に誤解をされないように言っておきたいのは、筆者は米ドル/円の151~152円の打診なし、とは言っていない。その上の定着が容易ではない、と言っている。市況はいかに。
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