日米関税交渉における円高誘導の可能性はあるか?
みなさん、こんにちは。
「(重い重責に)胃が1センチ上がったような感じは正直ある」
これは、赤沢亮正経済再生担当相が「ベッセント財務長官との会談」を控えてのコメント。
石破総理が「国難」と称している現在の状況を打破するために、大役を仰せつかった赤沢大臣は、かなりの決意で交渉に臨んでいます。
本稿執筆時点で日米関税交渉が開催されており、マーケットはその動向に注目が集まっています。
本日(4月17日)早朝も「赤沢亮正経済再生担当相がベッセント米財務長官らとの協議後、為替は議題に上らなかった」と記者団に述べたとの報道だけで、米ドル/円が一気に142円台後半にまで反発するといった神経質な展開。

(出所:TradingView)
ただ、その後、赤沢経済再生相が「為替は財務相・財務長官で協議と米側は理解している」とのコメントで沈静化しています。
先月(3月)から、米ドル/円相場は何度となくこうしたヘッドラインで乱高下しているので、あの時どういうヘッドラインで2〜3円も反発したのかが思い出せないぐらいです。
今週(4月14日~)は、まだまだこうしたヘッドラインでマーケットは混乱するでしょう。
ただ、3月からの米ドル/円相場はこうした急反発を繰り返しながらも、着実に円高に進んできた相場であることは変わりません。

(出所:TradingView)
現在のマーケットは「日米関税交渉における円高誘導の可能性はあるか?」に注目が集まっていますが、米国から円高誘導がなければ米ドル/円は反発するのかというと、それも難しいでしょう。
なぜなら、今回の相場は円高ではなく、米ドルが総じて下落していることから、米ドル/円が続落しているという側面もあるからです。
★ザイFX!で人気の西原宏一さんの有料メルマガ「トレード戦略指令!」では、タイムリーな為替予想や実践的な売買アドバイスなどをメルマガや会員限定ウェブサイトで配信! メルマガ登録後10日間無料です。
米ドル安トレンドの中、米ドル/円は135円への下落過程。円高誘導があれば目標値はもっと下がることに
このコラムで「ドイツがゲームチェンジ」したことにより、ユーロ/米ドルは1.1200ドルまで反発するといった投稿を何度かしていますが、本稿執筆時点でのユーロ/米ドルは節目の1.1200ドルをあっさりブレイクし、一時1.1473ドルまで急騰しています。
【※関連記事はこちら!】
⇒ユーロ/米ドルは1.1200ドルへ上昇中! ドイツが数十年ぶりの財政拡大に大転換し、欧州の再軍備化がテーマに。史上最大の円ロング調整終了まで、米ドル/円は安値売り厳禁(3月19日、西原宏一)
⇒ユーロは「ゲームチェンジ」! ドイツの劇的な財政改革案を受け、ドイツ債が過去35年で最大の下落幅となり、ユーロ買いで反応。米ドル/円はトランプの円安政策批判で続落(3月6日、西原宏一)

(出所:TradingView)
スイスフランや英ポンドなど他の主要通貨も、年初から米ドルに対して大きく値を上げています。米ドル全面安といった展開です。

それでは、関税は米ドルを弱体化させるのでしょうか?
また、マーケットはそれを織り込む形で米ドル安になっているのでしょうか?
これに対してゴールドマン・サックスは、下記のようにレポートしています。
●米関税はGDP成長の減速に伴いドル安を招く
過去10年間、米ドルはユーロ圏、日本、ノルウェーなどの先進国経済からの資産流入により恩恵を受けてきました。他の資産の利回りの魅力不足と米ドル資産の相対的なパフォーマンスの優位性が、米ドルのグローバルポートフォリオにおけるシェアの著しい増加を後押ししてきました。このポジションは現在、逆転すると予想されています。
「私たちは以前、米国の例外的なリターン見通しがドルの強い評価を支えていると主張してきました」「しかし、関税が米企業の利益率や米国民の実際の所得に圧力をかける場合、その例外性を侵食し、結果的に強いドルの基盤を揺るがす可能性があります」
(※ゴールドマン・サックスのウェブページを翻訳引用)
このレポートのとおり、関税が米ドルを弱体化させるのであれば、今回の日米間税交渉で「円高誘導」がなくとも、米ドル安の相場展開の中、米ドル/円もじり安となる可能性が高いでしょう。
一方、懸念されているように、米側から何らかの「円高誘導」があれば、日本のファンダメンタルズとは別に円高のスピードが速くなる可能性もあります。
今年(2025年)の相場は、引き続き政治相場となりそうです。
関税が米ドルを弱体化させるのであれば、米ドル/円は米国からの「円高誘導」がなくても135円に向けての下落過程にあります。
円高誘導があれば、米ドル/円の目標値はもっと下がることになるでしょう。日米関税交渉と米ドル/円の行方に注目です。

(出所:TradingView)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は10日間の無料体験期間がありますので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)