ザイFX! - 初心者必見のFX総合情報サイト

西原スーパーバナー
----年--月--日(-)日本時間--時--分--秒
西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

ユーロは「ゲームチェンジ」! ドイツの劇的な財政改革案
を受け、ドイツ債が過去35年で最大の下落幅となり、ユー
ロ買いで反応。米ドル/円はトランプの円安政策批判で続落

2025年03月06日(木)14:52公開 (2025年03月06日(木)14:52更新)
西原宏一

投資情報充実の外為どっとコム!当サイト口座開設者限定キャンペーン実施中!

トランプ大統領、日本や中国が通貨安政策取るなら米国は不利な立場になり、その場合、関税措置を講じる可能性を示唆

 みなさん、こんにちは。

 今週(3月3日~)の為替市場ではいくつかの重要な変化があり、市場のトレンドが大きく変わっています。1つずつ確認していきましょう。

 3月3日(月)のNY市場の為替市場で注目が集まったのが、トランプ米大統領による「日本と中国の通貨安政策」に対する批判です。


トランプ米大統領は3日、日本と中国が通貨安政策を取るなら米国は「不当に不利な立場に置かれる」と述べるとともに、そのような場合、関税措置を講じる可能性を示唆した。
(出所:Bloomberg)


 この発言を受け、米ドル/円は一気に148.10円まで急落しています。

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足チャート

(出所:TradingView

 先週(2月24日~)を振り返れば、明確に米ドル安に転換する可能性が高まっているというコメントが多数で、例えば、Bloombergのリサーチは以下のように伝えています。


昨年4Qに主流であった現在および予想される循環的なドル強気ケースは、今年初めに転換した。これは主に調査などのソフト・データで確認されているが、もしハード・データで確認されれば、1Q後半から2Qにかけてのドル安をさらに後押しすることになるだろう。
(出所:Bloomberg)


 年初から主要通貨ペアが米ドル安に推移していることを、マーケット参加者は理解していますが、ウクライナ問題が深刻化すると、もう一度ユーロ/米ドルは下値をトライする(ユーロ安・米ドル高)というのがマーケットのコンセンサスでした。

 ところが今週、そのユーロ/米ドルが突然反転を開始しました。その結果、今月(3月)の主要通貨は対米ドルでユーロを筆頭に全面高になっています。

主要通貨の対米ドル騰落率(3月)

ユーロ急騰の背景はウクライナ停戦期待の再燃と、ドイツの財政拡大政策発表

 それでは、ユーロになにが起こって、いきなり「ゲームチェンジ」となったのかみてみましょう。

 3月4日(火)のNY外国為替市場でユーロ/米ドル、ユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)が突然急騰。 ユーロ/米ドルは1.0627ドルと年初来高値を更新。本日も続伸して1.0800ドル台を回復しています。

 ユーロが上昇するためには、ユーロ/スイスフランの上昇が必要ですが、ユーロ/スイスフランも0.9630スイスフランと大きく値を上げています。

ユーロVS世界の通貨 4時間足
ユーロVS世界の通貨 4時間足チャート

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 4時間足

 その背景をチェックしていくと、以下の3つが挙げられます。

★ユーロ急騰の背景
(A)ウクライナ停戦期待の再燃
(B)ドイツの財政拡大政策発表
(C)欧州に「地殻変動」〜ドイツ債過去35年で最大の下落

(A)ウクライナ停戦期待の再燃

 先週金曜日(2月28日)、トランプ政権とウクライナのゼレンスキー大統領の会談が決裂。 米国からウクライナへの武器の輸出も一時停止し、ユーロクロスが一時急落。ユーロ円も一時155.60円まで下げました。

【※関連記事はこちら!】
ユーロ/円を引き続き戻り売り! ゼレンスキーの皮肉なコメントに、米国とウクライナの会談は決裂。ユーロの上値が重くリスクオフに。株安を重視なら豪ドル/円も注目(3月3日、西原宏一&叶内文子)

 しかし、米トランプ大統領が議会演説で「ウクライナが鉱物ディールを望んでいる」とコメントしたとの報道を受け、ウクライナ停戦期待が再燃。これがまずユーロ/スイスフランを急騰させています。

 過去のコラムでもご紹介させていただいているように「ウクライナが停戦に向かうとユーロ/スイスフランは大きく反発する」というのがマーケットのコンセンサスなので、これはわかります。

【※関連記事はこちら!】
為替市場は米国の関税政策と、ロシアとウクライナの停戦をめぐる報道で変動! ユーロ/米ドルやユーロ/円より、ユーロ/スイスフランに注目すべき理由とは?(2月13日、西原宏一)

 これに加えて、ドイツから「ドイツの財政拡大政策発表」という強烈なユーロ買いのニュースが出ているので確認しましょう。

(B)ドイツの財政拡大政策発表

 ドイツ次期政権樹立に向けて連立交渉中の政党は、5000億ユーロのインフラ基金設立と、借り入れ規則の全面見直しで合意したと発表。

 この報道を受け、ベレンベルク銀行のチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「この発表はドイツが防衛に真剣であることを明確に示すシグナルになる」と指摘。「これは欧州を強化し、ユーロ高の支援となるとみられるが、貿易を巡るリスクも考慮する必要がある」とコメントしています。

欧州に「地殻変動」! ドイツ債が過去35年で最大の下落を演じている中、ユーロ/米ドルやユーロクロスの動向に注目

 最後は、ドイツ債が過去35年で最大の下落という衝撃的な出来事です。

(C)欧州に「地殻変動」~ドイツ債過去35年で最大の下落

 3月5日(水)の相場で驚かされたのがブンズ(ドイツ国債)の動向。

 ドイツ債は過去35年で最大の下落となり、ドイツ10年債利回りは30ベーシスポイント(bp=0.01%)上昇し、2.80%と2023年11月以来の水準に。

 1日の変動幅としては、ベルリンの壁崩壊後にドイツ再統一への準備が進められていた、1990年3月以来(過去35年)の大幅上昇になっています。

ドイツ10年債利回り 日足
ドイツ10年債利回り 日足チャート

(出所:TradingView

 その要因は、次期首相就任が確実視されるメルツ氏の発表にあります。

 メルツ氏は、大規模な財政改革の一環として5000億ユーロ(約80兆円)の特別基金を設立すると発表しました。

 また、防衛費として国内総生産(GDP)の1%以上を支出する場合、憲法上の借り入れ制限(債務ブレーキ)の対象外とすることも提案しています。

 これは、財政規律を重視する「財政タカ派」として知られるドイツにとって劇的な変化です。

 彼は、国を守るために「あらゆる手段を講じる」と強調しています。

 メルツ氏が防衛力強化のため、大胆な財政改革案を提示したことに、相場が即座にユーロ買いで反応したわけです。

 欧州に「地殻変動」が起きて、ドイツ債が過去35年で最大の下落を演じている中、当面はユーロ/米ドルとユーロ/スイスフランを筆頭としたユーロクロスの動向に注目したいところ。

 ユーロクロスの反発の影響で、下落スピードは緩慢になりましたが、米ドル安トレンドの中、米ドル/円の下落にも注目しています。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView


【ザイFX!編集部からのお知らせ】

 ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)です。

西原宏一投資戦略メルマガ「トレード戦略指令!」

「トレード戦略指令!」10日間の無料体験期間がありますので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。

人気のザイFX!限定タイアップキャンペーンをPickUp!
FXの税金&確定申告特集
FX初心者のための基礎知識入門
スワップポイント比較 ザイ投資戦略メルマガ CFD口座おすすめ比較
スワップポイント比較 ザイ投資戦略メルマガ CFD口座おすすめ比較
『羊飼いのFXブログ』はこちら
↑ページの先頭へ戻る