米ドル/円は一時140円割れも、日米財務相会談で米国から「為替の水準や目標への言及なし」とが発表され、143円台に踏み上げ
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 先週(4月21日~)は、トランプ大統領がパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長について「ミスター・トゥー・レイト(遅過ぎる男)という、とんでもない負け犬が今すぐ金利を下げなければ、経済は減速する恐れがある」と強烈に批判する局面もあり、米ドル/円は一時139.89円と140円台の大台を割り込みました。
月末まで数日残していますが、今月(4月)の高値からは一時10円以上急落しています。
一方、注目の日米財務相会談ですが、米国から「為替の水準や目標への言及なし」ということが発表され、米ドル/円は143円台後半まで踏み上げて週を終えています。

(出所:TradingView)
米ワシントンを訪問中の加藤勝信財務相は24日(現地時間)、ベッセント米財務長官と二国間協議を行い、為替を巡る原則について再確認した。加藤財務相によると、米国側から為替相場の水準や目標についての言及はなかったという。
(出所:Bloomberg)
ただ、読売新聞オンラインが週末に、ベッセント財務長官が「ドル安・円高が望ましい」とコメントしたと報道したことが話題となり、米ドル/円の戻しは限定的となっています。
これに対し、加藤財務相はまったく事実と異なると否定していますが、この件については後ほど取り上げます。
S&P500は2月高値から4月7日の半値戻しをしっかり超えてくれば、安心感がさらに広がりそう
トレーダー西原 先週の株はいかがでしたか?
MC叶内 米中の貿易摩擦が緩和に向かうとの期待感から、株式市場は戻り歩調となりました。特に、米大型ハイテク株の買い戻しが目立ちます。
前半、トランプ大統領がパウエルFRB議長の解任を検討しているとの報道に、大きく反応して売られる場面もありましたが、後半に日米貿易交渉が進展したことや、テスラとアルファベット(GOOGL)の決算も無事に通過し、市場心理が改善したようです。「恐怖指数」と呼ばれる米VIXが4月24日(木)に26まで低下しました。
米国株は3指数そろって反発しました。NYダウは2.48%高で4月24日(木)に節目の4万ドルを回復。S&P500は 4.59%高、ナスダック総合指数は6.73%高、半導体株の指数SOXは10.94%の大幅上昇でした。
日経平均は975円(2.8%)高の3万5705円で週を終え、2週連続で上昇しました。
トレーダー西原 今週(4月28日~)のスケジュールと日本株の展望をお願いします。
MC叶内 4月30日(水)~5月1日(木)に日銀会合(日銀政策決定会合)が開催されます。先週金曜日(4月25日)発表の都区部CPIが高かったことで、年内追加利上げの確率が上がっていたようです。植田総裁の会見と合わせて注目度が高いです。
また、5月1日(木)に日米貿易交渉第2弾が行われる予定です。
国内の経済指標では、4月30日(水)に3月鉱工業生産、5月2日(金)に3月完全失業率と有効求人倍率が発表されます。
米国では、4月29日(火)に3月JOLTS求人件数、コンファレンスボード消費者信頼感指数。4月30日(水)に4月ADP雇用統計、米国1~3月期GDP、米国3月のPCEデフレータ、個人所得、個人消費支出。5月1日(木)に4月ISM製造業景気指数。5月2日(金)に4月雇用統計と盛りだくさんです。
そのほか、4月28日(月)にカナダで総選挙が実施され、4月30日(水)に中国4月製造業PMIが発表されます。
さらに翌週(5月5日~)、日本の連休中には、5月3日(土)にバークシャー・ハサウェイ株主総会、5月4日(日)に日中韓財務大臣・中央銀行総裁会議があり、5月5日(月)に米4月ISM 非製造業景況指数が発表されます。そしてFOMC(米連邦公開市場委員会)は5月6日(火)~7日(水)です。
今週の日本株を展望します。
米国の関税政策が世界経済にとって前向きな方向に進みそうで、ひとまず戻りを試す展開が継続しそうです。ただ、日本は4月29日(火)が休場。飛び石連休の形でゴールデンウィークが始まります。市場参加者が減る中で決算発表や重要指標が目白押しです。
特に米決算では、4月30日(水)にマイクロソフトとメタ、5月1日(木)にアップルとアマゾンが発表予定と、マグニフィセントセブン(※)のうち4社が集中します。
(※マグニフィセントセブンとは、米株式市場を代表するテクノロジー企業であるアルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社を指す)
メタは広告収益が主なので景気の影響を受けやすいです。中国の大手広告主の動向も気になります。巨額のAIインフラ投資に対する説明も求められるでしょう。
これら時価総額の大きい銘柄群の決算が投資家の期待感を誘い、株価が上昇するようであれば、S&P500も上昇しやすくなります。
S&P500は2月の高値から4月7日(月)までの下げの半値戻しが5500ポイント程度で、これを上回ってきています。しっかりここを超えてくれば安心感がさらに広がりそうです。

(出所:TradingView)
日経平均は急落前の3月26日(水)から4月7日(月)までの下げの半値戻しは達成、3分の2戻し水準もザラ場では上回りました。どこまで戻ることができるのか、売買代金を伴っているかに注目です。
トレーダー西原 こうして株と為替の動きをチェックすると、リスクオンで株が上がっても、米ドル/円が重いのが気になるところですね。
MC叶内 それでは、米ドル/円の見通しはいかがですか。
米ドル/円は135円を目指して戻り売り継続。第2のプラザ合意のようなものではなく、じわじわと値を下げていく展開か
トレーダー西原 為替市場がフォーカスしているのが米ドル/円です。
前述した読売新聞の記事ですが、本日も加藤財務相がまったく事実と異なると否定しました。加えて、三村財務官が「米側から円高・ドル安望む発言はなかった」と読売新聞の報道を否定しています。
ただ、ベッセント財務長官はXで下記のようにコメントしています。
Very constructive talks with Minister of Finance Katsunobu Kato of Japan.
— Treasury Secretary Scott Bessent (@SecScottBessent) April 26, 2025
I was pleased to follow up on previous reciprocal trade discussions between the United States and Japan, as well as to discuss matters pertaining to exchange rates.
Looking forward to our next… pic.twitter.com/9B8Q5Ny7Ri
日本の加藤勝信財務相と非常に建設的な会談を行うことができた。日米間のこれまでの相互通商協議のフォローアップや、為替レートに関する問題を話し合うことができたことを嬉しく思う。次回の会談を楽しみにしている。
(ベッセント財務長官のXのポストを和訳)
結局、為替の目標や水準は示されませんでしたが、為替レートに関する問題は話し合ったということなのでしょう。
加藤財務相や三村財務官が読売新聞の報道を否定するのですが、米ドル/円相場にはまったく影響は見られませんでした。
むしろ否定すればするほど、米ドル/円がじわじわと重くなっているともいえます。
このコラムで何度かご紹介させていただいていますが、ベッセント財務長官は「日本経済の成長とインフレによって日銀が金融正常化を速め、円高になるのが自然なこと(=so all that's natural)」としています。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は138円に向けて戻り売り継続! トランプ政策のもとになる論文が「米ドル高是正」を提案。今週は「ベッセント財務長官と赤澤経済再生相の会談」に大注目!(4月14日、西原宏一&叶内文子)
この文脈においては、仮に米ドル/円が急騰すれば「自然なことではない」となるため、関税も絡めて為替は議題にあがっているとみます。
ただ、噂されている第2のプラザ合意のようなものではなく、米ドル/円はじわじわと値を下げていくという展開でしょうか?
米ドル/円は135円を目指して、戻り売り継続といった方針です。

(出所:TradingView)
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう。
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