先週は主要中銀ウィークだったが、どの中銀もマーケットのコンセンサスどおりの決定で、大きな動きなし
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 先週(3月17日~)は主要中銀ウィークといわれ、為替の注目度も上がりましたが、結果としては神経質な展開に終始しました。
それでは、先週の株式市場から振り返ってみましょうか?
MC叶内 はい、よろしくお願いします。
S&P500は前週末比0.51%高と5週ぶりの上昇で終えました。反発は2月中旬以来のことで、ようやく下げに歯止めがかかった格好です。
注目されたFOMC(米連邦公開市場委員会)は予想どおり「金利据え置き」で通過。ただ、バランスシート縮小のペースを4月から緩和することも決定し、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言から追加利下げの方向が示唆され、市場はややハト派と受け止めました。
トランプ大統領から目立った関税に関する発言もありませんでした。
2月の小売売上高で、GDP算出に用いられるコントロールグループの数値が改善し、景気後退懸念が和らいだことも背景のひとつでしょう。住宅着工、鉱工業生産、中古住宅販売も市場予想を上回りました。
ただ、マグニフィセントセブン(※)の株価動向は不安が残っています。テスラが9週、アマゾンが7週、メタは5週続落。エヌビディアは反落しています。
(※マグニフィセントセブンとは、米株式市場を代表するテクノロジー企業であるアルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社を指す)
日経平均は623円(1.7%)高の3万7677円と2週連続で上昇、一時3万8000円台を回復しましたが、上値の重さも目立ちました。半導体関連の一角がブレーキになっています。バフェット効果のあった商社、銀行などバリュー株が選好され、TOPIXは7連騰しました。
日銀会合(日銀金融政策決定会合)も予想どおり「現状維持」でしたが、春闘がやや強めの結果で、こちらは利上げ方向の予想が残っています。植田総裁は、不透明感は海外発と述べています。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 先週はFOMC、日銀、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])と、主要中銀の金融政策決定会合が続きました。
ただ、どの中銀もマーケットのコンセンサスどおりの決定で、大きな動きはなし。
主なところをピックアップすると、FOMCは叶内さんがご紹介したように、パウエルFRB議長の発言から「追加利下げの方向」が示唆され、市場はややハト派と受け止めたものの、米金利が続落したわけでもありません。
注目のSNBですが、コンセンサスどおり政策金利を0.25%引き下げ、政策金利を0.25%に変更。
Bloombergのエコノミスト調査で27人中25人が0.25%利下げを予想、わずか2人が0.50%利下げを予想していましたが、今回サプライズはなし。声明の中でも今後の措置についての示唆はなく、無風と言えます。
この中で話題になったのは、日本が主要先進国の中で「最低金利」を脱したということ。これはあとで述べます。
次に、今週(3月24日~)のスケジュールを紹介していただけますか?
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株式市場は3月27日(木)にかけて配当・優待権利取りが入りそう。トランプ政権は4月2日(水)に相互関税を発動
MC叶内 今週、重視されているのは3月28日(金)の米2月個人消費支出(PCE)物価指数でしょう。
予想は前年同月比+2.5%で前月と横ばい、コアは+2.7%で前月(+2.6%)から小幅加速見込みです。景気や個人消費動向が注目されるなか、個人消費支出も要チェックです。前月比で+0.6%と前月の▲0.2%から改善する予想です。
ほかに、週初に各国PMIの発表があります。企業が現状景況感をどうみているのか、景気・設備投資の先行指標でもあります。ユーロ圏の製造業景況感が良化しているかも確認したいです。
米国で3月25日(火)に新築住宅販売件数、住宅価格指数、CB消費者信頼感指数、3月26日(水)に米2月耐久財受注、3月27日(木)に米10~12月GDP確報値が発表されます。
FOMCが終わって高官発言も出てきます。
国内では、3月27日(木)が配当権利付き最終日です。3月25日(火)に1月開催分の日銀金融政策決定会合の議事要旨、3月28日(金)に3月開催分の日銀金融政策決定会合の「主な意見」が公表されます。
指標では3月25日(火)に2月全国百貨店売上高、3月28日(金)に3月東京都区部CPI(消費者物価指数)が出てきます。
先週上場のJX金属は初値好調でした。今週もいくつかIPOがあります。
トレーダー西原 まず、リスク許容度を探るため、今週の日本株をどう見ていますか?
MC叶内 今週の株式市場は、3月27日(木)にかけて配当・優待権利取りが入りそうなほか、配当落ち分に対する先物の買い需要などもあると見られ、半ばまでは底堅い展開が予想されています。
3月11日(火)の3万6000円割れからのリバウンドも確認されています。ただ、3万8000円というここまでのレンジの下限をブレイクするには新たな材料が必要そうです。
トランプ政権は4月2日(水)に相互関税を発動する方針です。鉄鋼とアルミニウムへの関税は先送りの報道が出ていますが、相互関税やそれに対する他国の反応によっては混乱も考えられます。
為替市場はいかがですか。
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基本は米ドルの戻り売りだろうが、本邦の年度末と、4月2日(水)を控え、今週は短期トレード中心にしたほうが安全かも
トレーダー西原 まず、マーケットが注目したのは、日本が主要先進国の中で「最低金利」を脱したということ。
今回、SNBが0.25%利下げをしたことから、日銀は0.50%、SNBは0.25%で政策金利の水準が逆転したことになります。
【※関連記事はこちら!】
⇒日本やスイスなど、主要各国の政策金利の推移をグラフでチェック!
日銀が世界でもっとも金利の低い状態を脱するのは、SNBが利上げ路線にかじを切っていた2022年9月以来となります。
このことにより、円だけが「キャリー取引」における調達通貨であるという動向に変化が生じる可能性があります。
ただ、その差がわずか0.25%であることから、マーケットではあまり意識されていません。
2023年のように、スイスフラン/円が約33円も急騰することは想定しづらく、よって米ドル/円の急激な円安が再来する可能性も低下したと考えています。
今週ですが、来週月曜日(3月31日)は本邦企業の年度末を迎えますので、それに伴う特殊フローに警戒。
加えて、4月2日(水)はトランプ政権からの相互関税の発動を控えています。
そのため、今週は一方向に大きな動きが出ないかもしれません。
円に関しては、IMM(国際通貨先物市場)の円ロングポジションが3月18日(火)週時点で12万2964枚と、前週の13万3902枚に続き7週連続でかなりの円ロングの状態。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
短期筋の円ロングがかなり膨らんだままであるため、週初は米ドルのショートカバーから米ドル/円も上値を探ると思いますが、4月2日(水)を控え続伸するとも考えにくい。
基本、米ドル/円もユーロ/米ドルも米ドルの戻り売りでしょうが、本邦の年度末と、4月2日(水)を控え、今週は短期トレード中心にしたほうが安全かもしれません。

(出所:TradingView)
勝負は4月2日(水)以降でしょうか?
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう。
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