株式市場は少し落ち着きを取り戻したが、半導体関連には再度懸念材料が出ている
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 先週(4月14日~)も日米関税交渉の思惑でマーケットが大きく動く展開でしたね。
終わってみれば、米ドル/円中心に米ドルが着実に下落する流れは変わらず。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円は135円への下落過程! 関税が米ドルを弱体化させれば、米ドル安のなかで米ドル/円はじり安に。日米関税交渉で「円高誘導」があれば、目標値はもっと下がる!(4月17日、西原宏一)
それでは、先週の株式市場の振り返りからお願いします。
MC叶内 はい、よろしくお願いします。
先週は米政権の関税を巡る警戒感がやや和らぎ、市場は少し落着きを取り戻しています。
米国がスマートフォンなどの電子機器を相互関税の対象から一時除外、自動車関税で救済策を検討しているとも伝わり、軌道修正への期待が生まれました。
先陣を切って日米の交渉も始まり、その内容に世界からも関心が寄せられたと思います。懸念されていた為替に関する議論が出なかったことで、日本株市場にはひとまず安心感が広がりました。また、米国債券売りも一服しました。
そんななか、半導体関連には再度懸念材料が出ています。
米政府はエヌビディアが中国向けに設計された半導体「H20」を輸出規制の対象にすると発表。先週戻していたエヌビディア株は急反落しました。蘭ASMLの決算がコンセンサスを下回ったことも警戒感につながりました。近く詳細が発表される半導体への関税とともに、AIブームの反動懸念が根強いようです。
ただその後、日本のディスコや台湾のTSMCは決算後に買われる動きとなっています。TSMCは今年の設備投資計画を下方修正しませんでした。
米国は4月18日が聖金曜日のため株式市場は休場、4月17日(木)のS&P500の終値は先週末比1.50%安で2週ぶりの反落。NYダウは2.66%安、ナスダック総合指数は2.62%安でともに反落しました。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が利下げに慎重な見方を示したことも市場心理を冷やしました。これに対して、トランプ大統領はパウエル議長の解任を検討していると伝わっています。もしこれが具体化してくれば、中央銀行の独立性という新たな問題が発生することになります。
日経平均は前週末比1144.70円高(+3.41%)の34730.28円と4週ぶりに反発しました。様子見ムードが強く商いは低調だったものの、内需小型株や医薬品株などが物色されました。輸出関連は関税をめぐる不透明感と、一時1米ドル=140円台まで進んだ円高で買いにくい状況です。
為替市場はいかがでしたか。
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米ドル/円中心に米ドルが下落。4月23日からのG20財務相・中央銀行総裁会議でも何らかの議論がありそう
トレーダー西原 先週も引き続き、米ドル/円中心に米ドルが続落しました。
ドルインデックスの週足を見てみると、ついに100を割り込んできました。

(出所:TradingView)
144円台で始まった先週の米ドル/円も、141円台まで下落しました。
注目された「赤沢・ベッセント会談」ですが、「赤沢亮正経済再生担当相がベッセント米財務長官らとの協議後、為替は議題に上らなかった」と記者団にコメントしたことで、一時米ドル/円が反発する局面もありました。
しかし「為替は財務相・財務長官で協議と米側は理解している」とのコメントで、米ドル/円の上値は重いまま。
そして、週明けの東京市場で、米ドル/円は一時140.62円付近まで下落。これに関しては、後ほど触れます。

(出所:TradingView)
それでは、今週(4月21日~)のスケジュールを確認しましょうか?
MC叶内 はい。国内では、4月25日(金)に4月東京都区部CPI(消費者物価指数)の発表が予定されています。
海外では、4月21日(月)に中国4月ローンプライムレート、米3月景気先行指数、IMF(国際通貨基金)・世界銀行春季総会(~4月26日、ワシントン)。4月22日(火)に4月ユーロ圏消費者信頼感指数、米2年債入札、4月23日(水)にG20(20カ国・地域)財務大臣・中央銀行総裁会議(~4月24日、ワシントン)、4月の独・欧・英・米・製造業とサービス業PMI、ベージュブック、4月24日(木)に独・4月Ifo景況感指数、米国で新規失業保険申請件数、4月25日(金)に米・4月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)の発表があります。
経済指標で注目されるのは、各国のPMIです。関税の影響で欧州がどの程度悪化したか、米国サービス業に影響は出ているのかなどを見たいところです。
また、今週は注目の大手ハイテク企業の決算発表があります。テスラは4月22日(火)、アルファベット(GOOGL)は4月24日(木)です。
トレーダー西原 それでは、これらを踏まえ、日本株の見通しをお願いします。
MC叶内 今週の株式市場は半導体などの関税と、そのほかの修正、各国との交渉が引き続き注目です。
4月21日(月)からのIMF・世界銀行の春季総会や、4月23日(水)からのG20財務相・中央銀行総裁会議でも何らかの議論がありそうです。
4月22日(火)のIMF世界経済見通しが悪化すると、景気懸念が一層強まるとの見方もありました。
米国ではテスラ、アルファベットの他にも、ベライゾン、ボーイング、IBM、プロクター&ギャンブルなども決算発表予定です。
国内でも、4月23日(水)にファナック(6954)、ニデック(6594)、4月25日(金)にキーエンス(6861)、信越化(4063)、デンソー(6902)、アドバンテスト(6857)と決算発表が本格化します。
業績見通しをどう出してくるでしょうか、あるいは出さない企業もあるかもしれません。業績の不透明感が高まるようだと下振れリスクがありそうです。
為替市場はいかがですか。
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米ドル/円は135円に向けて売り継続! トランプ大統領の投稿で米ドル安が進行。日米財務相会談を控え円高の駆け引きも
トレーダー西原 先ほどふれましたが、週明けの東京市場から米ドル/円が140.62円付近まで続落。
これはトランプ大統領が、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に「非関税貿易障壁のごまかし(NON-TARIFF CHEATING)」と題した投稿を行ったことがきっかけ。
投稿の中では、以下のように為替操作を一番にあげており、米ドル安が進行しています。
●トランプ大統領の「非関税貿易障壁のごまかし(NON-TARIFF CHEATING)」と題した投稿の概要
1=為替操作
2=関税および輸出補助金として作用する付加価値税(VAT)
3=コストを下回るダンピング(不当廉売)
4=輸出補助金および他の政府補助金
5=保護的な農業基準
6=保護的な技術規格(ボーリングのボールを使った日本の検査)
7=偽造、著作権侵害、知的財産の窃盗
8=関税逃れのための積み替え
(出所:Bloomberg)
このうち、保護的な技術規格については、トランプ大統領は政権1期目当時から「日本では約6メートルの高さから自動車にボーリング用ボールを落とし、ボンネットにデント(へこみ)ができれば不合格とされる」と繰り返し主張しているようです。
さらに、知的財産の窃盗は年間1兆ドル(約142兆円)を上回ると主張。
この投稿により、米ドルは総じて下落。米ドル/円は140.62円付近まで下落。ユーロ/米ドルも1.1532ドル付近にまで上昇しています。
一方、今週の米ドル/円相場は「加藤・ベッセント会談」がフォーカスされています。
4月24日(木)に会談する方向で調整が進んでいる「加藤・ベッセント会談」ですが、「為替の課題については私とベッセント財務長官の間で緊密に協議すると確認している」と加藤財務大臣はコメント。「訪米時においても同長官と議論する可能性を念頭に置いている」としています。
マーケットでは「加藤・ベッセント会談」の場で「円安への懸念や、もう少し円高に振れるべきといったメッセージが出されるのではないか」との警戒感が高まっています。
前述のように、米ドル/円だけでなく、米ドルは全般に続落。この米ドル売り圧力の大きさを示すキーワードとして「米国一極集中の是正」が浮上しています。
きっかけは、トランプ米大統領の関税政策と米景気悪化懸念。
振り返れば、新型コロナウイルス禍以降、世界経済で最も力強く成長する米国に投資マネーが流入してきました。
「マグニフィセントセブン(※)」がけん引役となり、世界の株式時価総額の半分を米国が占めるほどに拡大。
(※マグニフィセントセブンとは、米株式市場を代表するテクノロジー企業であるアルファベット、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、テスラ、エヌビディアの7社を指す)
こうした流れは、他の国と違う米国独自の特性として「米国例外主義」と呼ばれてきました。
しかし、米景気の悪化見通しを受けて、米国の資産をひたすら買う地合いはさまがわり。
米バンク・オブ・アメリカが公表したファンドマネジャー調査によると、73%の投資家が「米国例外主義をテーマにした取引はすでにピークを超えた」と答えたようです。
市場参加者の間で意識されているのは、欧州投資家による自国回帰シナリオと米国の景気悪化懸念。
ECB(欧州中央銀行)の追加利下げに加え、ドイツの財政出動拡大など景気を支える動きもあり、欧州の資産を買う過程で、ユーロ買い・米ドル売りを誘引し、ユーロ/米ドルも上昇。本稿執筆時点では1.15ドル台前半で推移しています。

(出所:TradingView)
「米国例外主義」がピークアウトし、米ドル安に。「加藤・ベッセント会談」を控え、関税と円高の駆け引きの中、米ドル/円は135円に向けて続落中。米ドル/円のショート継続です。

(出所:TradingView)
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も為替のトレードを楽しんでいきましょう。
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