ベッセント財務長官は4月の米国債の混乱を沈静化させたことで、金融関係者の間で信頼が高まっている
みなさん、こんにちは。
4月は、トランプ政権の関税に関する報道で金融市場が混乱しました。
一時は、米国の株、債券(利回りは上昇)、通貨がすべて急落する「トリプル安」となる局面もあり、マーケットは大混乱となりました。
特に、米国の債券が急落、つまり利回りが上昇しているにもかかわらず、米ドルが続落していることに危機感を抱いた市場参加者も多数。
この混乱を収拾したのが、ベッセント財務長官です。
彼は「国家による米国債売却の証拠はなく、主にレバレッジ解消によるものだ」との解釈を改めて表明しました。
また、「必要に応じて市場の乱調に対処する手段が財務省にある」ことを示唆したことで、米国債と株、そして米ドルの急落は沈静化しました。
これにより、金融関係者の間ではベッセント財務長官への信頼が高まりました。
ベッセント財務長官はもともと、ジョージ・ソロスのヘッジファンドで働き、1992年に英国政府に英ポンドの固定為替レートを放棄させたとされる「英ポンドを破綻させた」件で有名です。
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⇒ポンド危機:中央銀行がヘッジファンドに敗れポンドが暴落した「ブラックウェンズデー」
トランプ政権内で頼りになるのは、金融市場を熟知しているベッセント財務長官というわけです。
そんなベッセント財務長官は就任以降、「トランプ氏の政策が実行されれば、米10年債利回りは時間とともに自然に低下するはずだ」と主張し、自身とトランプ氏が米国債の「魅力を高める」ことにも注力しているとコメントしています。
実際に、彼は米国債の混乱を見事に沈静化させたと言えるでしょう。

(出所:TradingView)
それでは、そのベッセント財務長官は、通貨米ドルに対してはどういうスタンスなのか確認してみましょう。
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米ドル/円は4月の10円強急落の調整があるかもしれないが、引き続き135円方向。米国は穏やかな米ドル安・円高を望んでいる
ベッセント財務長官は、米10年債利回りを押し下げて低めに維持するというトランプ政権の計画を、毎週のように講演やインタビューで繰り返し説いています
連邦政府の借り入れコストを抑えるのは、財務長官の仕事の一部である点を踏まえれば当然ですが、10年債利回りを巡るベッセント氏の強い執着ぶりを背景に、ウォール街の銀行の多数が2025年の利回り見通しの変更を余儀なくされました。
トランプ政権は「利回りが4.5%を上回り始めれば、口先介入を行い、連邦債務や財政赤字・政府支出の削減に重点を置いていることを改めて強調するだろう」と考えている市場参加者も増えています。
それでは、このように金融市場の鍵を握るベッセント財務長官は、通貨米ドルについてどう考えているのでしょう。
以下は、4月10日(土)のBloombergの記事です。
ベッセント氏はFOXビジネスに「日本では円高が進行しているが、これは日本経済の強い成長とインフレ期待上昇の結果だ」と述べた。堅調な経済指標の結果として「日本銀行は金利を引き上げており、全ては自然なことだ」と付け加えた。
(出所:Bloomberg)
この記事から、ベッセント財務長官は日銀の金利引き上げと円高を自然なことと考えていることがわかります。
また先週末には、ベッセント財務長官が「ドル安・円高が望ましい」とコメントしたと読売新聞オンラインが報じました。
ベッセント氏「ドル安・円高が望ましい」、具体的な為替目標は求めず…日米財務相会談 【ワシントン=鞍馬進之介、下里雅臣】加藤財務相は24日、米ワシントンで米国のベッセント財務長官と会談し、為替政策を巡って協議した。ベッセント氏は「ドル安・円高が望ましい」と述べ、トランプ米大統領の意向に沿って為替水準への強い懸念を表明した模様だ。為替水準の目標などの具体的な要求は示されなかったが、今後の協議で米側の対応については予断を許さない。
(出所:読売新聞オンライン)
これに対し、加藤財務大臣はまったく事実と異なると否定しています。
しかし、肝心のベッセント財務長官が為替について話し合ったとXでポストしています。
Very constructive talks with Minister of Finance Katsunobu Kato of Japan.
— Treasury Secretary Scott Bessent (@SecScottBessent) April 26, 2025
I was pleased to follow up on previous reciprocal trade discussions between the United States and Japan, as well as to discuss matters pertaining to exchange rates.
Looking forward to our next… pic.twitter.com/9B8Q5Ny7Ri
日本の加藤勝信財務相と非常に建設的な会談を行うことができた。日米間のこれまでの相互通商協議のフォローアップや、為替レートに関する問題を話し合うことができたことを嬉しく思う。次回の会談を楽しみにしている。
(ベッセント財務長官のXのポストを和訳)
これらの状況を総合すると、米国は米ドル安・円高を望む一方で、急激な米ドル下落は避けたいといったところでしょう。
4月の米ドル/円は高値から一時10円強急落する大相場を演じました。
米国はこのような米ドル急落を望んでいるわけではないのですが、穏やかな米ドル安・円高を望んでいると言えそうです。
米ドル/円相場は4月に10円強急落しただけに、短期的には調整局面が見られるかもしれませんが、135円に向けての米ドル安・円高は続くと考えています。

(出所:TradingView)
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