「経済指標」とは、各国の雇用・景気・物価などの状況を数値で表したデータのこと。
経済指標の結果は、その国や地域の将来的な金融政策の行方や、為替レートの当面の方向性などに影響を与えることがあるので、注目度の高い経済指標のスケージュールと結果をチェックすることは、FXトレーダの基本です。
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為替市場で注目される主な経済指標を解説!
ここではFX取引で多くの投資家に注目されている経済指標の中から、主に米国(アメリカ)の経済指標を中心に一部を紹介します。
■ 雇用統計
■ ADP全国雇用者数
■ 新規失業保険申請件数
■ GDP(国内総生産)
■ 消費者物価指数(CPI)
■ 生産者物価指数(PPI)
■ 小売売上高
■ 消費者信頼感指数
■ 貿易収支
■ ISM製造業景況感指数・ISM非製造業景況感指数
■ PMI(購買担当者景況感指数)
為替相場に大きな影響を与えることがある、米国のFOMC、日本の日銀金融政策決定会合、ユーロ圏のECB理事会などの、中央銀行が政策金利や当面の金融政策方針を決定するために開催する会合については、以下で詳しく解説しています。
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■ 雇用統計
「雇用統計」とは、失業率や就業者数などの雇用に関連する経済指標のこと。金融市場では、BLS(米労働省労働統計局)が毎月発表する「米雇用統計」(Employment Situation)が、もっとも有名で注目されます。
米国は世界最大の経済大国で、欧州や日本より労働者を柔軟に解雇できる政策を採っているため、経済状況の変化によって雇用者の数がダイナミックに変化しやすいという特徴があります。そのため、米雇用統計の結果が市場予想値と大きく異なり、為替相場が動く可能性もある経済指標です。
米雇用統計は労働市場の状態を表したデータの総称で、その中でも非農業部門の就業者数が前月からどれだけ増減したかを表した「非農業部門雇用者数(NFP)」、労働力人口に対する失業者の割合を表した「失業率」、賃金(所得)の伸びを表した「平均時給」の3項目の結果が特に注目されます。
【※「米雇用統計」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒米雇用統計:FX初心者のための基礎知識入門
雇用情勢は、個人の所得や消費の動向に影響を与え、先行きの景気の動向を左右する可能性が高いことから、米国だけでなく、多くの国や地域の雇用統計も、重要な経済指標と考えられています。
日本では、総務省が発表する完全失業率、厚生労働省が発表する有効求人倍率などが、雇用関連の経済指標として注目されます。
【※「日本の雇用統計」を詳しく解説した記事はこちら!】
⇒日本の雇用統計:FX初心者のための基礎知識入門
・ 失業率や就業者数などの雇用に関連する経済指標
・ 米国の雇用情勢を表した「米雇用統計」がもっとも有名
・ 米雇用統計は「非農業部門雇用者数」「失業率」「平均時給」の3つに注目!
■ ADP全国雇用者数
「ADP全国雇用者数」とは、全米約50万社の給与計算を代行する民間企業のADP(Automatic Data Processing)が、自社の顧客を対象に集計した雇用者数の動向を表したデータです。
サンプル数が多く、原則として米雇用統計の2営業日前に発表されることから、米雇用統計の非農業部門雇用者数を予測するための指標として注目を集める経済指標です。
【※「ADP全国雇用者数」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒ADP全国雇用者数:FX初心者のための基礎知識入門
ただし、ADP全国雇用者数と非農業部門雇用者数では、集計方法や調査対象が異なるため、ADP全国雇用者数と非農業部門雇用者数が似たような良い結果になるとは限らない点に注意が必要です。
・ 米国の民間企業ADPが集計する雇用者数の動向を表したデータ
・ 米雇用統計の非農業部門雇用者数を予測するうえで注目される
■ 新規失業保険申請件数
「新規失業保険申請件数」とは、前の週に失業保険の給付を初めて申請した人数を集計したデータです。原則として、毎週木曜日にETA(米労働省雇用訓練局)が発表します。
直近の米労働市場の動きがわかる速報性の高さから、景気の状況をすばやく把握できるというメリットがあります。一方、週によって結果がブレやすく、翌週には高い確率で数値が改定されるという特徴もあり、新規失業保険申請件数の結果だけで労働市場の状況を判断するのは、あまり適切ではないと言えます。
【※「新規失業保険申請件数」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒新規失業保険申請件数:FX初心者のための基礎知識入門
なお、新規失業保険申請件数は新規で失業保険の給付を申請した人の数で、失業保険を継続して受給している人の数は「失業保険継続申請件数」で知ることができます。この2つの指標は、同じタイミングで発表されます。
・ 前の週に、初めて新規失業保険を申請した人数を表した経済指標
・ 速報性は高いが、毎回の結果にブレが大きい
・ 他の雇用関連指標の結果とあわせて判断することが重要
■ GDP(国内総生産)
「GDP」とは、一定期間内に国内で生み出された付加価値の合計額を表したデータです。日本語では「国内総生産」といいます。その国の経済規模を表したデータで、期間内に経済がどれだけ成長したかを把握できる、非常に注目度の高い経済指標です。
GDPには、付加価値の金額を単純に合計した「名目GDP」と、名目GDPから物価の影響を除いた「実質GDP」の2つがありますが、通常は「経済成長率」などと呼ばれる「実質GDP」の伸び率の方が、市場では注目されます。
米国のGDPは、四半期ごとのデータをBEA(米商務省経済分析局)が発表します。もっとも注目されるのは速報値ですが、翌月に発表される改定値、さらにその翌月に発表される確報値も、数値が大幅に変更されていた場合などは為替相場を動かす要因になることがあります。
【※「GDP」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒GDP:FX初心者のための基礎知識入門
また、米国ではGDPと同時に発表される、物価の変動を数値化した「GDPデフレーター」や、GDPの構成比率の7割近くを占める「個人消費」の結果も、為替相場を動かす可能性の高い経済指標として注目されます。
日本では内閣府、欧州(ユーロ圏)では欧州統計局(ユーロスタット)、中国では国家統計局、英国ではONS(英政府統計局)が、四半期ごとのGDPを公表しています。
・ その国の経済規模を把握することができる経済指標
・ 四半期に一度の発表が一般的
・ 物価の影響を除いた「実質GDP」の伸び率が特に注目される
■ 消費者物価指数(CPI)
「消費者物価指数」とは、消費者が実際に購入する時点の小売価格の動向を表したデータのこと。物価の推移を表す指標の中でも、もっともポピュラーなものとして知られている経済指標で、一般的には英語表記「Consumer Price Index」の頭文字をとって「CPI」と呼ばれます。
消費者物価指数は、対象となる全品目の動向を集計した「総合指数」と、価格の変動が大きくなりやすい品目を除いた「コア指数」の2つが発表されるのが一般的ですが、どちらかというと「コア指数」の方に注目が集まると考えられているようです。
現代では、多くの主要中央銀行がインフレ目標を導入して、物価上昇率が目標とする水準で安定的に推移するよう政策金利の水準を動かしたり、資金の供給量を調整したりする金融政策運営を行っています。そのインフレ目標の数値として、多くの中央銀行が消費者物価指数の上昇率を用いていることから、消費者物価指数は先行きの金融政策の方向性を予測するうえでも非常に重要なデータと考えられています。
【※「消費者物価指数(CPI)」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒消費者物価指数とは?:FX初心者のための基礎知識入門
米国の消費者物価指数は、BLS(米労働省労働統計局)が毎月発表します。全人口の9割近くの消費動向をカバーしていると言われていて、米国全体の物価動向を把握するのに役立ちます。
【※「米国の消費者物価指数」の詳細はこちら!】
⇒米国の消費者物価指数・生産者物価指数:FX初心者のための基礎知識入門
ただし、米国には消費者物価指数と似た「PCE(個人消費支出)デフレーター」という物価の指標もあり、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策の運営方針を決めるときには、PCEデフレーターの動向を重視していることが知られています。
【※「PCEデフレーター」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒PCEデフレーター:FX初心者のための基礎知識入門
日本では総務省が毎月、全国消費者物価指数と東京都区部消費者物価指数を発表します。東京都区部の消費者物価指数は、全国消費者物価指数よりも発表時期が早いことから、全国消費者物価指数の動向を予測する先行指標としても活用されます。
【※「日本の消費者物価指数」の詳細はこちら!】
⇒日本の消費者物価指数・生産者物価指数:FX初心者のための基礎知識入門
ユーロ圏では、加盟各国がそれぞれ発表する自国の消費者物価指数にはCPIという名称が使用されますが、欧州統計局(ユーロスタット) が発表するユーロ圏全体の消費者物価指数は「HICP」と呼ばれています。「Harmonised Index of Consumer Prices」の頭文字をとったもので、マーストリヒト条約による統一基準に基づいて算出されたデータとなり、毎月、速報値と確報値が発表されます。
【※「ユーロ圏の消費者物価指数」の詳細はこちら!】
⇒ユーロ圏の消費者物価指数・生産者物価指数:FX初心者のための基礎知識入門
・ 小売価格の動向を表したデータ
・ 一般的には価格の変動が大きくなりやすい品目を除いた「コア指数」が注目される
・ その国の金融政策にも影響を与えるため、注目度は非常に高い
■ 生産者物価指数
「生産者物価指数」とは、製造業者による出荷時点の販売価格の動向を表したデータのこと。一般的には英語表記「Producer Price Index」の頭文字をとって「PPI」と呼ばれます。
米国の生産者物価指数は、BLS(米労働省労働統計局)が毎月発表します。消費者物価指数の数日前に発表されることから、消費者物価指数の先行指標として活用されることもあります。
生産者物価指数と消費者物価指数は、長い目で見ると似たような推移をたどることが知られていますが、単月やそれほど長くない期間を比べると、相関性が高くないときもあります。
【※「生産者物価指数(PPI)」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒生産者物価指数とは?:FX初心者のための基礎知識入門
米国では、国内の製造業者が販売する約1万点の品目が、生産者物価指数の集計対象となります。輸入品は含まれず、輸入品の物価動向を表したものには「輸入物価指数」という、別の経済指標があります。
日本では、日銀(日本銀行)が毎月発表する企業物価指数が、生産者物価指数と似たような経済指標として知られています。しかし、企業物価指数の集計対象には輸入品も含まれるほか、輸送費なども考慮されることからまったく同じものとしては扱えません。
ユーロ圏の生産者物価指数は、毎月、欧州統計局(ユーロスタット) によって発表されます。
・ 販売価格の動向を表したデータ
・ 製造業者の出荷時点の価格が集計対象
・ 消費者物価指数とは一定の相関性がある
■ 小売売上高
「小売売上高」とは、コンビニやスーパー、百貨店などの小売・サービス業の売上高を集計したデータのこと。米国ではBLS(米労働省労働統計局)が毎月発表し、前月からの変動率が特に注目されます。
小売売上高が前月比でプラスなら個人消費は堅調、マイナスなら個人消費が落ち込んだと判断するのが一般的です。米国の個人消費はGDPの構成比率の約7割を占めることから、小売売上高の動向は米国の経済状況を確認するうえで高い注目を集めます。
特に、感謝祭(11月第4木曜日)翌日からクリスマスまでのホリデーシーズンが含まれ、プレゼントの購入などで小売り業者の売上高が大きく伸びる傾向にある11月と12月分の米小売売上高の結果には、毎年、投資家からも大きな関心が寄せられます。
日本では経済産業省が商業動態統計調査の中で毎月発表している「小売業販売額」が、小売売上高に該当します。ユーロ圏では欧州統計局(ユーロスタット) が毎月、小売売上高を発表しています。
・ 小売、サービス業の売上高を集計したデータ
・ 個人消費の強さや弱さを判断できる重要な経済指標
・ 11月と12月の米小売売上高の結果は特に注目される
■ 消費者信頼感指数
「消費者信頼感指数」とは、米民間調査機関のコンファレンスボードが5000人の消費者を対象にアンケートを行い、その結果から消費者の抱いているセンチメント(印象や心理状態)を指数化したデータのこと。英語表記「Consumer Confidence Index」の頭文字をとって、「CCI」と呼ばれることもあります。
今の経済・雇用(=現状指数)、半年後の経済・雇用・所得(=期待指数)に対するセンチメントを集計して算出する指標で、個人消費や景気の動向との相関性が高いことでも知られています。
米国には似たような経済指標として、ミシガン大学が発表する「ミシガン大学消費者信頼感指数」があります。調査数が500人と少ないのですが、速報値の結果が消費者信頼感指数よりも早く発表されるため、消費者信頼感指数の先行指標として活用されることもあります。
日本では内閣府が消費動向調査の中で毎月発表している「消費者態度指数」が、消費者信頼感指数と似たような意味合いをもった経済指標として知られています。
・ アンケート結果をもとに消費者のセンチメントを表したデータ
・ 個人消費や景気の動向と高い相関性がある
■ 貿易収支
「貿易収支」とは、その国の輸入と輸出の収支の差を表したデータのこと。輸出額が輸入額よりも大きければ貿易黒字、輸入額が輸出額よりも大きければ貿易赤字となります。貿易収支のデータは景気の動向だけでなく為替レートにも関係してくるため、為替市場の参加者からも一定の注目を集める経済指標です。
米国の貿易収支は、米商務省が毎月発表します。2020年の米国の輸出額は世界第2位、輸入額は世界第1位と、輸出も輸入もトップレベルの金額を誇りますが、輸出額よりも輸入額の方が大きい貿易赤字の状態が恒常的に続いていて、米国の貿易赤字の金額はダントツで世界最大となっています。
貿易収支のデータはIMF(国際通貨基金)の定める国際収支マニュアルに基づいて作成されるのが一般的で、国際的な比較が容易にできるという特徴もあります。
日本の貿易収支には、財務省が発表するものと、日銀と財務省が共同で発表する国際収支統計の中のデータの2種類があります。一般的には国際収支マニュアルに沿って作成される国際収支統計の中の貿易収支の方が、貿易の状況をより広範に把握でき、各国との比較がしやすいことから注目度が高いと考えられます。
・ 輸入と輸出の差額を表したデータ
・ 為替レートにも関係する指標で注目が高い
・ 国際的な比較が容易にできるという特徴がある
■ ISM製造業景況感指数・ISM非製造業景況感指数
「ISM製造業景況感指数」とは、ISM(全米供給管理協会)が製造業の仕入れ(購買)担当者にアンケート調査をした結果から作成する、製造業企業の景況感(景気の状況に対する印象)を表したデータのこと。ISM製造業景気指数や、ISM製造業景況指数と呼ばれることもあります。
「ISM非製造業景況感指数」は、非製造業の仕入れ担当者にアンケート調査をした結果から作成する、非製造業企業の景況感を表したデータのこと。ISM非製造業景気指数、ISM非製造業景況指数と呼ばれることもあります。
どちらの指標も、新規受注・生産・雇用などの5つの項目について、前月から「良くなった」、「変わらない」、「悪くなった」の中から回答してもらい、それらを数値化したものが発表されます。一般的には、5項目すべてから算出された総合指数が注目され、総合指数の50が企業活動の拡大と縮小の分かれ目とされています。50を上回ると企業活動が拡大、50を下回ると企業活動が縮小していると判断されます。
【※「ISM」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒ISM製造業景況感指数・ISM非製造業景況感指数とは?:FX初心者のための基礎知識入門
また、数ある米国の経済指標の中でも、この2つは前月分のデータの発表時期が極めて早いため、他の経済指標の結果を予測するために活用されることもあります。
・ ISM製造業景況感指数は、製造業の景況感を表したデータ
・ ISM非製造業景況感指数は、非製造業の景況感を表したデータ
・ 総合指数の「50」が、企業活動の拡大と縮小の分かれ目
■ PMI(購買担当者景況感指数)
「PMI」とは、企業の仕入れ(購買)担当者の景況感(景気の状況に対する印象)を集計したデータこのと。英語表記「Purchasing Managers Index」の頭文字をとったもので、日本語では「購買担当者景況感指数」などと呼ばれます。
米国のISM製造業景況感指数やISM非製造業景況感指数も、PMIの1つと考えることができますが、通常はPMIといえば、情報会社IHSマークイット(IHS Markit)が発表しているものを指すのが一般的です。「PMI」とその正式名称「Purchasing Managers Index」は、IHSマークイットの登録商標でもあります。
IHSマークイットは、世界40以上の国や地域で同じ調査方法に基づいてPMIを集計しています。中国には国家統計局が発表する、PMIの名称がついた経済指標もありますが、中国のもう1つのPMIとして有名な財新PMIは、IHSマークイットと提携して発表されているデータになります。
PMIでは主に、製造業・非製造業・サービス業などの業種別に集計されたものと、それらをまとめた総合PMIが発表されるのが普通です。指数が50を上回ると企業活動が拡大、50を下回ると企業活動が縮小していると判断されます。
企業の景況感を表すデータは、PMI以外にもいくつかあります。米国ではニューヨーク連銀(NY連銀)が発表するNY連銀製造業景況感指数(エンパイア・ステイト景況感指数)やフィラデルフィア連銀が発表するフィラデルフィア連銀製造業景況感指数(フィリー指数)、ドイツのIfo経済研究所が発表するIfo景況感指数やZEW(欧州経済研究センター)が発表するZEW景況感指数なども注目を集めます。
日本にも、auじぶん銀行がIHSマークイットと提携して発表している「auじぶん銀行日本PMI」があります。しかし、日本の景況感を示す経済指標としては、日銀(日本銀行)が四半期ごとの調査をもとに集計した日銀短観などと呼ばれる「全国企業短期経済観測調査」の方が有名です。また、内閣府が毎月発表する「景気動向指数」、「景気ウォッチャー調査」などもあります。
【※「PMI」をさらに詳しく解説した記事はこちら!】
⇒PMIとは?FX初心者のための基礎知識入門
・ 企業の仕入れ担当者の景況感を表したデータ
・ IHSマークイットが公表するデータを「PMI」と呼ぶのが一般的
・ 景況感を表すデータはPMI以外にも各国で発表されている
中央銀行が政策金利や金融政策方針を決める会合を紹介!
各国の中央銀行は、自国の政策金利や主要金利の水準、当面の金融政策方針などを決めるための会合を、定期的に開催しています。中央銀行の決定事項は、その内容によっては金融市場全体に影響を及ぼす可能性があるため、非常に注目されるイベントです。
以下、為替市場で注目されることが多い、米国・日本・ユーロ圏・英国・オーストラリアの会合を紹介します。
■ 米国…FOMC(米連邦公開市場委員会)
■ 日本…日銀金融政策決定会合
■ 欧州(ユーロ圏)…ECB理事会
■ 英国…英MPC(金融政策委員会)
■ オーストラリア…RBA理事会
■ 米国…FOMC(米連邦公開市場委員会)
「FOMC」とは、米国の中央銀行に相当するFRB(米連邦準備制度理事会)が、米国の政策金利に相当するFF(フェデラル・ファンド)金利や当面の金融政策の方針を決定する会合のこと。「Federal Open Market Committee」の頭文字をとったもので、日本語では「米連邦公開市場委員会」などといいます。
通常は6週間に一度のペースで年に8回、各会合とも火曜日と水曜日の2日間にわたって開催され、水曜日の会合終了後には決定事項をまとめた声明文の発表と、FRB議長の記者会見が行われます。
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また、2会合に1回の割合で、FOMCに参加したメンバーの経済予測をまとめたレポート「Economic Projections」が公表されます。ここには「ドット・チャート」と呼ばれる、参加メンバー全員の金利見通しも掲載されていて、先行きのFF金利の変動を予測するうえで、多くの市場参加者が注目しています。
FOMCが終了した日の3週間後には、より詳細な議論の中身などが記載された議事要旨(議事録)も公表されます。
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・ 6週間に1度、年8回のペースで開催される米国の金融政策を決める会合
・ 終了後には声明文の発表とFRB議長の記者会見が行われる
・ 2会合に1回、参加メンバーの経済予測をまとめたレポートも公表される
■ 日本…日銀金融政策決定会合
「日銀金融政策決定会合」とは、日銀(日本銀行)が当面の金融政策の運営方針などを決定するために開催する会合のこと。主に金融市場の調節方針や金融政策手段などが議論され、当面の方針が決定されます。
通常は各会合とも2日間の日程で、6週間に一度、年に計8回開催され、2日目の会合終了後には決定事項の公表と、日銀総裁による記者会見が行われます。また、2会合に1回の割合で、参加メンバーの先行きの経済や物価の見通しをまとめた「経済・物価情勢の展望(基本的見解)」が公表されます。
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日銀金融政策決定会合では、会合終了後に直ちに決定内容が公表されるため、金融政策などの決定事項の発表時刻が決まっていないという特徴があります。そのため、政策の変更などが予想されている会合のときは、市場参加者が日銀の政策発表を、固唾を飲んで待ち構えるといったこともあります。
会合が終了した日の6営業日後には、会合内で出た主要な意見を取りまとめた「主な意見」、次の会合の3営業日後に議事要旨(議事録)が公表されます。
・ 6週間に1度、年8回のペースで開催される日本の金融政策を決める会合
・ 会合終了後に決定事項の発表と日銀総裁の記者会見が行われる
・ 2会合に1回、経済や物価の見通しをまとめたレポートも公表される
■ 欧州(ユーロ圏)…ECB理事会
「ECB理事会」とは、ECB(欧州中央銀行)の主要メンバーとユーロ圏各国の中央銀行総裁らが参加して定期的に開催される会合のこと。
通常、政策金利を含む主要金利の水準や当面の金融政策方針などを決定する会合は、6週間に一度、年8回のペースで、毎回木曜日に開かれます。会合終了後には金融政策の方針が発表され、そのあとECB総裁の記者会見が行われます。
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また、ユーロ圏の成長率やインフレ率の予想を示した「スタッフ予想」が2会合に1回、各理事会の4週間後には議事要旨(議事録)も公表されます。
・ ECBの主要メンバーとユーロ圏各国の中央銀行総裁らが参加する会合
・ 政策金利や金融政策方針などを決定する会合は、6週間に一度、年8回開催される
・ 会合終了後に金融政策方針の発表とECB総裁の記者会見が行われる
■ 英国…英MPC(金融政策委員会)
「英MPC」とは、英国の中央銀行であるBOE(イングランド銀行)が、政策金利や当面の金融政策方針などを決定するために開催する会合のこと。です。MPCは「Monetary Policy Committee」の頭文字をとったもので、日本語では「金融政策委員会」と言います。
通常は年8回、およそ6週間に一度のペースで、毎回水曜日と木曜日の2日間にわたって開催され、木曜日の会合終了後には、決定事項をまとめた議事録が発表されます。
MPCの政策は、投票権を持つ9名のメンバーの賛成多数決で決定されますが、特徴的なのは誰が政策の決定に賛成したか反対したか、どのような票数で政策が決定されたかが、議事録に記載されている点です。賛成票と反対票が拮抗していた場合などは、次回の会合に対する市場参加者の思惑が交錯して、英ポンド相場に影響を与えることもあります。
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2会合に1回の割合で、先行きの物価や経済成長の見通しが示された「四半期インフレ報告」の公表と、BOE総裁の記者会見も行われます。この、金融政策の発表とあわせて四半期インフレ報告公表とBOE総裁の会見が同時に行われる日は「スーパーサーズデー(Super Thursday)」と呼ばれ、特に市場参加者の注目を集めることで知られています。
・ 6週間に一度、年8回のペースで開催される英国の金融政策を決める会合
・ 会合終了後に決定事項をまとめた議事録が公表される
・ 2会合に1度の、四半期インフレ報告とBOE総裁の記者会見もある会合は特に注目される
■ オーストラリア…RBA理事会
「RBA理事会」とは、オーストラリアの中央銀行であるRBA(Reserve Bank of Australia)が、オーストラリアの政策金利にあたるORC(オフィシャル・キャッシュレート)や当面の金融政策方針などを決定するために開催する会合のこと。RBAは、日本語では「オーストラリア準備銀行」、「豪準備銀行」などと呼ばれます。
通常は年に11回、1月を除く毎月第1火曜日に開催され、会合終了後には決定事項をまとめた声明文が発表されます。会合での議論の内容が詳細に記された議事要旨(議事録)は、会合の2週間後に公表されます。
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RBAは会合後に公表する声明文の中で、自国通貨である豪ドル(オーストラリアドル)の為替レートの水準に言及することがあります。過去と比べて直近の豪ドルの水準が割高だった場合は、通貨高をけん制するような内容が盛り込まれることもあり、決定した金融政策の方針以上に、豪ドル相場を動かす材料にされることがあります。
また、通常は2月・5月・8月・11月のRBA理事会が開催された週の週末に、「金融政策に関する声明」(Statements on Monetary Policy)と呼ばれる、物価や経済の見通しが記されたレポートが公表されます。
・ 1月を除き毎月開催される、オーストラリアの金融政策を決める会合
・ 会合終了後に決定事項をまとめた声明文が公表される
・ 声明文で豪ドルの為替レートについて言及することがあり、豪ドル相場を動かす材料になることも
ここで紹介した内容は、通常時に行われる会合の内容をまとめたもので、各中央銀行とも緊急を要すると判断した場合は、臨時の会合を開いて金融政策の変更などを行うことがあります。
また、ほかにもニュージーランド・スイス・カナダ・トルコ・南アフリカのなどの金融政策を決める会合が、為替相場を動かす可能性のあるイベントとして注目されることがあります。
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