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FOMCとは
米国の金融政策の決定で中心的な役割を担うFRB(米連邦準備制度理事会)が6週間に一度、年8回のペースで開催する会合が「FOMC(Federal Open Market Committee)」です。米国の政策金利や当面の金融政策方針を決定する重要イベントで、日本語では「米連邦公開市場委員会」と称されます。
FOMCの決定事項は、米国の金利や株式だけでなく、為替やあらゆる金融商品に大きな影響を与えることから、世界中の市場関係者が注目しています。
米国の金融政策のしくみ
最初に、米国の金融政策のしくみを簡単に紹介しておきます。
米国には他の主要国のように、中央銀行という単独の機関は存在しません。その代わり、複数の組織体から構成される、FRS(連邦準備制度)という制度があります。FRSは正式名称の「Federal Reserve System」を略して、「Fed(フェド)」とも呼ばれます。
そのFRSの構成機関の中に、中央銀行の役割を担うFRB、地区連銀と呼ばれる12の連邦準備銀行、連邦諮問委員会、FRSに加盟している民間銀行などが存在し、そして、金融政策の最高意思決定機関のFOMCがあるという構図になっています。

FRBがFRSの中核をなす機関として存在しているため、FRS自体がFedと呼ばれることもあります。FRB、正式名称「Board of Governors of the Federal Reserve System」は、原則、議長と副議長を含む計7名で構成されます。そのFRBが金融政策を決定するために開催する会合が、FOMCです。
上述のとおり、FRBは7名のメンバーで構成されますが、任期が満了する前にメンバーが退任したなどの理由で、7名に満たない体制で運営されることも珍しくはありません。空席は新しい理事を米大統領が指名し、上院で承認されて就任することで埋まります。
FRBには、地区連銀を統括する役目もあります。米国では、地区連銀が金融政策以外の業務、具体的には米ドルの発行や民間銀行の監督・規制などといった、一般的に他国の中央銀行と同じような活動を担い、FRBがその最終的な責任を負うしくみになっています。
米国の政策金利「FFレート」とは
FOMCでは通常、米国の政策金利にあたる「FF(フェデラル・ファンド)レートの誘導目標レンジ」、「今後の金融政策方針」、「先行きの景気動向や物価に関する判断」などが決定されます。この中のFFレートの誘導目標レンジの決定というのが、政策金利の上げ下げ、いわゆる利上げや利下げです。
FFレートについても簡単に紹介しておきます。
米国の民間銀行には、預金残高の一定割合を、管轄する地区連銀へ預け入れることが義務づけられています。これは、金融不安などで金融機関の資金繰りが悪化した場合に備えるための制度で、米国以外の多くの国も、中央銀行に預け入れるかたちで同じような制度を導入しています。
米国では、この民間銀行が地区連銀に預け入れる資金のことを「フェデラル・ファンド(Federal Funds)」(以下、FF)と呼びます。米国以外の国では、一般的に「準備預金」などと称されます。
民間銀行の預金残高は、日々の業務活動で変動するので、FFにも日々、余剰や不足が生じます。こうした過不足は「FF市場」と呼ばれる銀行間取引市場で、銀行同士が無担保で貸し借りを行うことによって調整されます。そのFFの貸し借りを行うときに適用される金利が「FFレート」です。
FFには金利がつかない(無利子)ので、必要以上の金額を地区連銀に預けていても、民間銀行にはなんの利益も生まれません。もしFFに余剰が生じれば、その分をFF市場でFFが足りない銀行に貸すことで、FFレート分の金利収益を得ることもできます。
このFFレートが、米国の短期金利の代表的な指標とされていて、米国の政策金利という位置づけになっています。
FFレートの調整方法
FRBは、FOMCでFFレートの誘導目標レンジを決定して、FFレートが誘導目標のレンジ内で推移するよう、公開市場操作(オペ)を通じて調整を行います。一般的な手法としては、国債などの有価証券を買って資金を供給したり、保有している有価証券を売って資金を吸収するなど、流通する資金の量をコントロールして、FFレートの目標レンジを維持します。
2008年11月のFOMCまでは、FFレートの誘導目標は一本値でしたが、同年12月以降は上限と下限の2通りを設定して、FFレートがそのレンジ内で推移するよう、政策の方針が変更されました。上限と下限のレンジの幅は2021年現在も0.25%が維持されています。
以下は、1990年以降のFFレートの推移を表したグラフです。

※2008年12月以降は誘導目標レンジの上限を掲載
※FRBのデータをもとに作成(最終情報取得日:2021年3月17日)
FRBはそのほかに、民間銀行が地区連銀から資金を借り入れるときに適用される金利となる、「公定歩合」の決定(※)も行っています。
(※厳密には地区連銀からの要請をFRBが承認して、地区連銀が変更を行うしくみになっています)
FRBに課せられた使命
FRBには「物価の安定と雇用の最大化」という、2つの使命が課せられています。これは、一般的にはデュアル・マンデートと呼ばれ、FRBは物価と労働市場の状況を考慮しながら、FOMCでFFレートの誘導目標レンジを決定しなければいけない決まりとなっています。
厳密には、FRBには「雇用の最大化」、「安定した物価」、「長期的に穏やかな金利」という、3つの追求すべき目標が掲げられていて、そのことはFRSの根拠となる連邦準備法や、FRBの公式サイトにも明記されています。

(出所:FRB)
しかし、雇用と物価に関する目標を達成することができれば、穏やかな金利は自然に達成されるという考え方にもとづいて、通常は「最大の雇用」と「安定した物価」が、FRBの果たすべき目標と考えられています。
FOMCの構成メンバー
FOMCは原則として、12名のメンバーで構成されます。そのうち、FRBメンバー7名とNY連銀(ニューヨーク連邦準備銀行)総裁の計8名は常任委員として、毎回の会合で政策に賛成するか反対するか投票する権利(議決権)を持っています。
残りの4名は、NY連銀を除いた11の地区連銀が4つのグループに分けられ、各グループの中から1年交替でメンバーが選出される輪番制が採用されています。選出された地区連銀の総裁が、その年の議決権を持つFOMCメンバーを担当するしくみです。

しくみ上はこのようになっていますが、FRBのポストに空席が生じているなどの理由で、FOMCメンバーが12名に満たないこともあります。その場合も追加メンバーの補充はされず、議決権のあるメンバーによって政策が決定されます。
議決権のない7名の地区連銀総裁もオブザーバー(議決する権利はないけれど参加できる人)としてFOMCに参加し、FOMCが公表する金利見通しや経済予測に意見が反映されます。
なお、NY連銀総裁が常任委員という立場になっているのは、NY連銀がFOMCの決定方針にもとづいて、金融市場操作を行う実働部隊だからです。金融市場の世界的な中心地である、NYを含む地域を担当しているからという理由もあります。NY連銀総裁がFOMCの副委員長を務める決まりになっていることからも、NY連銀が地区連銀の中でも別格の存在だというのがわかります(FOMCの委員長はFRB議長が務めます)。
FOMCのイベントスケジュール
冒頭でもご紹介したとおり、FOMCは6週間に一度のペースで年に8回開催されます。毎回、火曜日と水曜日の2日間にわたって議論が行われ、最終日の2日目にはFOMCで決定した内容が盛り込まれた、声明文が公表されます。
ただし、深刻な金融危機が生じたなどの理由で、金融政策による早急な対応が必要と判断された場合は、臨時で会合を開催することもあります。新型コロナウイルスの影響で大きなダメージが見込まれた2020年3月には、緊急会合を3回開催して、FFレートの引き下げや金融緩和措置の導入を決定しました。
通常のFOMCでは、FOMCの2週間前に公表される、各地区連銀がそれぞれ管轄する地区の経済状況をまとめた「地区連銀経済報告書(ベージュブック)」や、FRB調査統計局が提出する「グリーンブック」と呼ばれる景気見通しをまとめた資料が、議論のたたき台として使われます。
そして、FFレートの誘導目標レンジや今後の政策方針などが、メンバーによる単純多数決で決定されます。多数決の結果は声明文にも記載されるので、誰が政策の決定に賛成したのか反対したのかが、すぐにわかるようになっています。
以下は、2021年3月のFOMC終了後に公表された声明文の冒頭部分です。基本的にはFFレートの誘導目標レンジ、今後の金融政策方針、先行きの景気動向や物価に関する判断と決定事項が、おおむね5~6段落程度にまとめられ、後段には公開市場操作などを通じた金融政策の実施に関する決定事項などが記載されます。

(出所:FRB)
2会合に一度、一般的に3月・6月・9月・12月に開催されるFOMCでは、FOMCメンバーの金利見通しや経済予測を記したレポート(Economic Projections)が声明文と同時に公表され、そのあと、FRB議長による記者会見が開催されるのが通例でした。ただし、FRB議長の記者会見に関しては、2019年1月のFOMC以降、年8回、すべての会合終了後に開かれています。
一般的に、緩やかなサイクルで利上げや利下げを実施しているときは、経済予測の公表とFRB議長の記者会見の両方がある3月・6月・9月・12月のFOMCで、政策金利が変更されると考えられています。
これは、政策の変更を決定した理由を、経済予測や議長自らの発言ですぐに説明できるという利点もあるからです。実際、2015年12月からはじまった米国の利上げサイクルの中では、FFレートの誘導目標レンジの引き上げはすべて、3月・6月・9月・12月のいずれかで実施され、声明文の公表しかない会合では、一度も利上げは行われませんでした。
しかし、米中貿易摩擦の激化などから世界経済の減速懸念が広がったことも背景に、2019年には経済予測の発表がない7月や10月のFOMCでも、0.25%の利下げが実施されています。
声明文と経済予測をまとめたレポートは、2日目(水曜日)のNY時間午後2時に公表されます。日本時間だと翌午前4時、米国がサマータイム(夏時間)の期間は翌午前3時になります。FRB議長の記者会見はその30分後となる、NY時間午前2時30分からはじまります。日本時間だと翌午前4時30分、米国がサマータイム(夏時間)の期間は翌午前3時30分です。

FOMCが終了した日から3週間後の水曜日には、議事要旨(議事録)が公表されます。この中には、労働市場の環境、景気、物価、金融政策に関する判断を決定するまでの、FOMCのより詳細な内容が盛り込まれていて、今後の金融政策の行方を見極めるうえで、重要な材料となります。
時代にあわせて変化する
以上が現時点におけるFOMCの概要ですが、かつてのFOMCは毎回、火曜日のみの1日開催が一般的で、今のように2日間にわたって開催されるようになったのは、それほど昔の話ではありません。
また、FOMC終了後に声明文が公表されるようになったも1994年からで、それまではFFレートの誘導目標が変更されても、FRBはそのことをすぐに発表しませんでした。そのため、市場参加者はFF市場の動向を見てFRBの政策を判断するしかなかったのです。
議事要旨がFOMCの3週間後に公表されるようになったのも、2004年からです。それまでは6週間後の金曜日に公表されていたため、市場参加者は次のFOMCが終わった2~3日後に、前のFOMCの議論の詳細を把握していました。
さらに、FOMCメンバーの金利見通しや経済予測を記したレポートの公表やFRB議長の記者会見も、2011年からはじまった制度です。先ほども触れましたが、2019年1月のFOMCからは、FRB議長の記者会見が、すべてのFOMC終了後に開催されるようになりました。今後も、金融市場の状況や時代の流れに沿って、FOMCの形式は変化していくと思われます。
FOMCのここに注目!
FOMCを見るうえで大事なポイントは、まずはFFレートの誘導目標レンジが変更されるのか、つまり、利上げや利下げが行われるのかといった点です。しかしこれについては、FOMCが開催されるまでに公表される米国の経済指標の結果や金融市場の状況、FOMCメンバーの講演や会見の内容から、事前にある程度は推測でき、市場参加者の中でも予想が固まります。
FOMCメンバーもそのことがわかっていますので、FFレートの誘導目標レンジの変更や据え置きを市場参加者が予想外と受け取って混乱しないよう、講演や会見などを利用した市場参加者との対話を通じ、ある程度は事前に周知させるような流れが主流となっています。
なので、市場の見方が分かれているときは別ですが、多くの市場参加者の予想が一致していて、そのとおりの結果となれば、為替相場が大きく動くことはあまりありません。
重要なのは、声明文に示された景気の判断や先行きの金利見通しに関する文章が、前回と比較してどう変わっているかという点です。つまり、前回のFOMCが終わってからの6週間の間で、FOMCの認識がどのように変化したかということです。たとえば、景気や物価、労働市場の状況に一段と自信を深めていれば、近い将来に利上げが実施されると予測できますし、利上げサイクルの途中であれば、利上げペースの加速が読み取れます。
また、2会合に一度、3月、6月、9月、12月に公表されるFOMCメンバーの経済予測が、前回と比べてどのように変化しているのかも、同じように注目されます。さらに、FRB議長の会見内容から今後の政策の方針を予測したりと、FOMCはさまざまな角度から、FRBの金融政策運営の行方を見極めることができるイベントです。
日本の深夜、というよりは明け方に近いため、多くの兼業トレーダーにとって、FOMCをチェックするのは大変だと思います。でも、非常に重要なイベントですから、特にポジションを持ったままFOMCを迎えるときは、忘れずチェックするようにしたいですね。
(最終更新日:2021年3月30日)
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