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雇用統計(雇用指標・雇用データ)とは?
米雇用統計(失業率・NFP)、ADP、新規失業保険申請
件数、日本やユーロ圏で注目される雇用指標を詳しく解説

2023年12月14日(木)14:00公開 (2023年12月14日(木)14:00更新)
ザイFX!編集部

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雇用統計とは?

「雇用統計」とは、失業率、就業者数、平均時給、求人倍率などの、労働市場の状態を表した雇用に関する経済指標を総称する言葉で、「雇用指標」や「雇用データ」などと呼ばれることもあります。

 データの集計対象となる人や算出方法などは、国や地域によって異なる場合があるものの、雇用の動向は個人の所得や消費に影響を与えるだけでなく、景気の先行きを左右する可能性も高いため、雇用に関する経済指標はどの国や地域でも重要なデータの1つとされています。

 中でも「米雇用統計」と呼ばれる米国の雇用統計は、発表される結果次第では米ドルを中心に為替相場が大きく動く可能性があることから、事前予想と結果、結果を受けた為替相場の動きや今後の見通しなどをライブ配信するFX会社もあるほど、FXでは多くのトレーダーから高い注目を集める経済指標として知られています。

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雇用統計の見方

 一般的に景気が悪いと企業は人材採用の見送りや人員整理をおこなうため、就業者数が減少(失業者が増加)して失業率が上昇するなど、雇用の指標は悪化します。逆に景気が良いときは、企業はモノやサービスの提供を増やすために人員を補充するので、就業者数が増加(失業者が減少)して失業率が低下するなど、雇用の指標は好転します。

 ただし、これまで職探しを諦めていた人が求職活動を再開するなどのポジティブな要因があった場合、失業者の定義に当てはまる人が増えて失業率が上昇するなど、一時的に雇用の指標が悪化することもあります。そのため、単月の結果にとらわれすぎず、中長期的な推移を確認することが大切です。

 また、雇用と景気の関係は「景気悪化→失業者増加→失業率上昇」、もしくは「景気好転→失業者減少→失業率低下」という循環が一般的なので、基本的に失業率の推移は景気の推移に遅れる傾向があるということも、押さえておきたいポイントです。

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 ちなみに、どれだけ好景気で人手不足が深刻化しても、失業率がゼロ%になることは基本的にありえません。やむを得ない事情で仕事に就くことができない人、より良い条件を求めて自発的に仕事を探している人などの「摩擦的失業状態」の人が、常に一定数は存在するためです。

 そのため、マクロ経済学には「完全雇用」という概念が存在します。「完全雇用」とは、摩擦的失業状態の人を除き、働く意思と能力のある人すべてが仕事に就いていて、非自発的な失業者が存在しない状態のことを言います。完全雇用とみなす失業率の水準は国や地域によってさまざまですが、この完全雇用の状態が、労働市場がもっとも健全な状況であると考えられています。

米雇用統計(米国の雇用統計)

「米雇用統計」とは、米労働省労働統計局(BLS)が発表する、労働市場の状態を示すデータの総称です。その中でも「失業率」「非農業部門雇用者数(NFP)」のデータは、結果によっては米ドルを中心に為替相場が大きく動くこともあるため、非常に高い関心が寄せられます。また、近年では1時間あたりの賃金の伸びを表した「平均時給」も注目されることがあります。

 米雇用統計のデータは、世界一の経済大国である米国の金融政策の方針を決めるときにも考慮されるため、数ある経済指標の中でも特に重要度が高いデータです。

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 米雇用統計は、毎月12日を含む週が調査期間となり、3週間後の金曜日に集計結果が発表されます。そのため、ほとんどの月で毎月第1金曜日に前月の結果が発表されますが、カレンダーの並びによっては第2金曜日になることもあります。

 発表時刻は、米国がサマータイム(夏時間)中は日本時間午後9時30分、標準時間(冬時間)中は日本時間午後10時30分です。

■米雇用統計(米国の雇用統計)の概要
指標名 米雇用統計(Employment Situation)
発表元 米労働省労働統計局(BLS)
発表日 おおむね毎月第1金曜日(12日を含む週の3週間後の金曜日)
発表時刻 米サマータイム(夏時間)…日本時間午後9時30分
米標準時間(冬時間)…日本時間午後10時30分

・米国の失業率(米失業率)

 米国の「失業率」は、米商務省の一機関である国勢調査局(センサス局)の調査員が、全米の約6万世帯の16歳以上を対象に直接ヒアリングする、家計調査で得た回答をもとに作成されます。

 米国の失業率にはU1からU6までの6種類がありますが、その中の「U3」の失業率が米国の公式な失業率と定義されています。FX会社の速報系ニュースなどが伝えるのも「U3」の失業率で、もっとも注目されるデータです。

 U3の失業率は、「失業者÷労働力人口」で算出されます。失業者は、「仕事があればすぐに就職できる」「過去4週間、仕事を探しているけれど見つからない」の両方に当てはまる人が該当し、景気が悪いなどの理由で一時的に解雇(レイオフ)されている人も含みます。労働力人口は「失業者と就業者の合計」で、働くことができる人の総計です。

■米国の失業率の種類
U1 15週間以上失業している人の割合
U2 解雇や一時的に契約が完了(レイオフ)している人の割合
U3 失業者の割合(公式の失業率)
U4 U3に職探しを諦めた人を加算した割合
U5 U4に家事や育児の都合で働けない人を加算した割合
U4 U5にやむを得ずパートタイムで労働している人を加算した割合
※すべて労働力人口に対する割合

 公式の失業率はU3ですが、広義の失業率とされるU6も、米国の雇用の状況をより広く捉えることができるデータとして、金融当局や一部の市場参加者に注目されています。

・非農業部門雇用者数(NFP)

「非農業部門雇用者数」は、農業部門を除く民間企業や政府機関に属する事業所の給与支払い帳簿をもとに、前月から就業者数にどれだけの増減があったかを表したデータです。「非農業部門雇用者数変化」や「非農業部門就業者数」などと訳されることもありますが、正式名称の「Nonfarm payroll employment」を略した「NFP」で呼ばれるのが一般的です。

 非農業部門雇用者数は約48万の事業所データをもとにした、事業所調査によって作成されます。農業部門が対象に含まれないのは、農業は天候や収穫時期などによって従事する人の数が大きく変化するためで、含めてしまうと労働市場全体の実態や傾向が把握しづらくなるからという理由があります。速報性が高くサンプル数も多いため、失業率より注目度が高いとも言われています。

 ただし、非農業部門雇用者数は月ごとのブレ(変動)が比較的大きく、発表月の翌月と翌々月の2度にわたって数値が修正されるため、中長期的な雇用の動向を見極めるには失業率のほうが有効ともいわれています。月ごとのブレをならすため、非農業部門雇用者数の3カ月平均を分析対象にする手法も知られています。

 また、非農業部門雇用者数は、結果が市場予想値と大きく異なる頻度が他の経済指標よりも高いという傾向があります。過去にはそれが原因で、発表直後に米ドル/円のレートが一瞬で1円や2円も動くことも、珍しくありませんでした。

 結果によっては大きな値動きも予想される非農業部門雇用者数の発表を取引チャンスと考え、発表前に思惑的なポジションを大きく積み上げるトレーダーが増えることも、発表後の値動きの荒さを助長する一因になっているといえます。

 また、非農業部門雇用者数と似た方法で民間企業が算出する雇用データの「ADP全国雇用者数」が、非農業部門雇用者数の市場予想値にそれなりの影響を与える一方、非農業部門雇用者数とADP全国雇用者数の結果に開きが生じることが少なくないことも関係していると考えられます。

米雇用統計以外で注目される米国の雇用指標

 「米雇用統計」以外にも、米国では雇用に関連する経済指標が数多く発表されます。

 中でも「ADP全国雇用者数」「新規失業保険申請件数」は、米雇用統計の結果を予測するうえでも注目されることの多い経済指標です。

・ADP全国雇用者数

「ADP全国雇用者数」は、全米約50万社の給与計算を代行する大手アウトソーシング会社のADP(Automatic Data Processing)が、自社の顧客を対象に調査・集計した、民間部門の雇用者数に前月からどれだけの増減があったかを表したデータです。正式名称は「ADP National Employment Report」ですが、単に「ADP」と呼ばれることが多く、日本語では「ADP全米雇用報告」や「ADP民間雇用者数」などとも訳されます。

 原則、米雇用統計の2営業日前に発表されるため、非農業部門雇用者数の結果を予測する先行指標的な位置づけとして注目を集めます。

 発表時刻は、米国がサマータイム(夏時間)中は日本時間午後9時15分、標準時間(冬時間)中は日本時間午後10時15分です。

■ADP全国雇用者数の概要
指標名 ADP全国雇用者数(ADP National Employment Report)
発表元 ADP(Automatic Data Processing)
発表日 米雇用統計の2営業日前
発表時刻 米サマータイム(夏時間)…日本時間午後9時15分
米標準時間(冬時間)…日本時間午後10時15分

 2012年11月に調査方法が変更されたことで、ADP全国雇用者数と非農業部門雇用者数の間には変更前と比べ、ある程度の相関性が確認できるようになっています。ただし、ADP全国雇用者数と非農業部門雇用者数の間に数万人単位の違いが生じることは、現在でも珍しくありません。

・新規失業保険申請件数

「新規失業保険申請件数」は、米労働省雇用訓練局(ETA)が給与に関する業務を扱う州事務所の報告を受けて作成する、全米で前の週に失業保険の給付を初めて申請した人数を示すデータです。正式名称は「Initial Jobless Claims」で、日本でも「イニシャルクレーム」と呼ばれることがあります。

 原則として毎週木曜日に発表される週次の経済指標で、失業者が増えると新規失業保険申請件数は増加し、失業者が減ると新規失業保険申請件数は減少します。米雇用統計の調査週にあたる毎月12日を含む週の結果は、米雇用統計の結果を予測するうえでも特に重要と考えられています。

 発表時刻は、米国がサマータイム(夏時間)中は日本時間午後9時30分、標準時間(冬時間)中は日本時間午後10時30分です。

■新規失業保険申請件数の概要
指標名 新規失業保険申請件数(Initial Jobless Claims)
発表元 米労働省雇用訓練局(ETA)
発表日 毎週木曜日
発表時刻 米サマータイム(夏時間)…日本時間午後9時30分
米標準時間(冬時間)…日本時間午後10時30分

 一般的には、新規失業保険申請件数が40万件、時期によっては30万件を下回ると、非農業部門雇用者数の結果がプラスになる傾向が確認されると言われています。ただし、失業保険を申請できる人の割合は失業者全体の半数以下とも言われているので、実際の失業者数は新規失業保険申請件数で発表される数よりも多いと考える必要があります。


 そのほかにも、イエレン米財務長官がFRB(米連邦準備制度理事会)議長時代に注目していたことで知られる、米労働省労働統計局が発表する「JOLT求人件数(求人労働異動調査)」や、人材斡旋会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社が発表する「チャレンジャー人員削減数」、モンスターワールドワイド社が全米のオンライン求人情報を集計した「モンスター雇用指数」なども、米国の雇用に関するデータとして有名です。

 また、ISM景況感指数、消費者信頼感指数などの経済指標にも、調査項目の中に雇用に関する項目が含まれているため、労働市場のセンチメント(心理)を把握するデータとして分析に役立てられています。

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日本の雇用に関連する経済指標

 日本の雇用に関連する経済指標としては、総務省が発表する「完全失業率」と、厚生労働省が発表する「有効求人倍率」が有名です。

 発表元は異なるものの、原則として毎月同じ日の、日本時間午前8時50分に発表されます。基本的には月末に前月分のデータが発表されますが、カレンダーの並びによっては翌月の月初めになることもあります。

・完全失業率

「完全失業率」は、全国から無作為に抽出された約4万世帯の世帯員の中から、15歳以上の約10万人を対象にした調査結果をもとに集計されます。総務省の労働力調査の一環で、都道府県知事に任命された調査員が調査世帯に調査票を配布し、それを回収する方法によって実施しています。

 完全失業率は、「完全失業者÷労働力人口」で算出されます。完全失業者(失業者)には、「働く意欲があり仕事があればすぐに就職できるが、調査期間中に一度も仕事をしていない」「調査期間中に就職活動などの仕事を探す活動をしていた」の両方に当てはまる人が該当します。

 完全失業率を含む労働力調査の結果は閣議に報告され、政府が発表する月例経済報告でも雇用関連の指標として景気分析に利用されます。また、白書の作成や、大学・研究機関などにおける研究などでも、重要な資料として利用されています。

・有効求人倍率

「有効求人倍率」は、厚生労働省が「一般職業紹介状況」として公表する指標の中にある、全国のハローワーク(公共職業安定所)で仕事を探す人(求職者)1人当たりの求人数を示したデータです。

 有効求人倍率は、「ハローワークに登録された企業の求人数÷求職者の数」で算出されます。仮に求人数が1000人、求職者の数が800人なら、有効求人倍率は1.25倍(1000人÷800人)です。

 求職者の数よりも求人数が少なく、有効求人倍率が1倍を下回った状態は、多くの人が仕事を探しにくい状況にあるといえます。逆に、求職者の数よりも求人数が多く、有効求人倍率が1倍を上回った状態は、多くの人が仕事を探しやすく、就職に有利な状況にあるといえます。

 有効求人倍率はFXの速報系ニュースなどで伝わる全国平均とあわせて、都道府県別のデータも公表されます。高い地域と低い地域では、有効求人倍率に2倍近い差が見られるときもあります。ハローワークを介さない求人と求職の実情は反映されませんが、日本の労働市場のすう勢を示す指標として注目されるデータです。

ユーロ圏の雇用に関連する経済指標

 ユーロ圏の雇用に関連する経済指標としては、ユーロスタット(Eurostat・欧州委員会統計局)が毎月発表する「ユーロ圏の失業率」が有名です。

 これは欧州連合(EU)加盟国のうち、欧州の統一通貨「ユーロ」を導入している20カ国の失業率をまとめたもので、原則として毎月月末に前月分のデータが発表されます。

 発表時刻は、欧州がサマータイム(夏時間)中は日本時間午後7時、標準時間(冬時間)中は日本時間午後8時です。

 ユーロ圏の失業率は、ユーロ圏全体としての労働市場の傾向を把握するデータとして注目されますが、あくまで域内の平均であり、国別の失業率には大きなばらつきがあります。そのため、通貨ユーロの動向を予測するうえでは、個別で発表されるドイツをはじめとした、ユーロ圏の中でも経済規模の大きいいくつかの主要国の失業率も、あわせて確認するのがよいでしょう。


 それ以外にも、FXでは豪ドルならオーストラリア統計局(ABS)が発表する失業率と就業者数、ニュージーランドドルならニュージーランド統計局が発表する失業率と雇用者数、英ポンドなら英国立統計局(ONS)が発表する失業率と就業者数など、主要国の雇用に関する経済指標が注目されます。

 これらは、発表後にそれぞれの通貨を変動させる要因になるだけでなく、将来的な金融政策の方針を予測する重要な手がかりとなることもあります。該当する国の通貨が絡んだ通貨ペアのポジションを持っている人、エントリーのタイミングを伺っている人などは、結果を必ず確認するようにしましょう。

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