厳密に言えば、金の暴落にしても、原油の反落にしても、リーマン・ショック以降の上昇幅に比べると、なお「調整の範囲内」にとどまっている。本格的なベア(弱気)トレンドに突入したかどうか、現段階では定かではない。
もっとも、「バブル崩壊」だと完全に認定できるのは、往々にして、崩壊からかなりの時間が経ってからである。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
したがって、米ドルが反発したとはいっても、金がトップアウトした(天井を打った)とは断定できないのと同じように、現段階では、なお年初来の下げに対するスピード調整に過ぎないとしか言えない。
■ジョージ・ソロス氏の思惑はバーナンキ議長に近い!?
おもしろいことに、リーマン・ショック以降、巷では、金や銀に投資する投資家のほとんどが、インフレを懸念していた。新興国がその代表的なもので、懸念しているからこそ、金や銀の高値買いも敢行していた。
それに対して、ソロス氏らヘッジファンド筋は米国のデフレを懸念し、貴金属に資金をシフトしていたらしい。
また、消息筋の話によると、ソロス氏は米国の量的緩和策が成功を収め、デフレ懸念が和らぎ、次の緩和策はもうないと読んでいたから、金や銀などの商品を売却しているようなのだ。
このような話は、「ポジショントーク」であることに変わりはない。だが、筆者の感触で言えば、ソロス氏のロジックは、かなり的を射ている話ではないかと思う。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
ソロス氏はマクロ分析を得意とし、政策当局の思惑をよく当てていた。今回もそうであれば、そのロジックはそのままFRB(米連邦準備制度理事会)、強いて言えば、バーナンキ議長の思惑に近いのではないかと思わせる。
すなわち、口先では慎重論を重ね、市場をけん制する姿勢を崩さないが、バーナンキ議長も「QE2」が十分に効果を発揮し、米国がデフレに陥るリスクはかなり後退したという見方に傾いているのかもしれない。
ソロス氏のファンドは、行動をもってこのような思惑を露呈させている。
■米ドルの真価を問う米国の経済データ発表が相次ぐ
マーケットでは、米国が意図的に米ドル安の政策を取っていると見ている市場参加者は多い。
しかし、少なくともFRBの第一目標はデフレ退治であり、米ドル安そのものを志向しているわけではなかったことを、ソロス氏をはじめとするヘッジファンドの関係者はよく知っている。
したがって、「QE2」の終えんが近づくに連れて、「米ドル安トレンド」もいったん終了するだろう。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:米国主要経済指標の推移)
5月6日(金)に発表される雇用統計をはじめ、米ドルの真価を問う米国の経済データがこれから数多く出てくる。
銀の暴落で米ドル安が一服してくるような値動きではなく、これからは、米ドルが自らの内部相場構造に沿って上昇してくるだろう。
この見方が正しければ、次の2点を予測しておきたい。
まず、米ドルが反騰するに連れて、ユーロサイドにソブリンリスク(国家に対する信用リスク)が再燃し、それはさらに拡大するだろう。
次に、米ドルは対円で底堅く推移するが、本格的な上昇は年後半か来年にズレ込む可能性がある。
この辺の話は、また次回!
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