■いずれ米国はAAAの最高格付けランクを失う
筆者の私見では、前者はあり得るが、現時点では後者の可能性は低いとみる。
簡単に言えば、借金大国の米国にとって最高格付けを失うことは、F1選手が出場権を失うようなもので、逆にデフォルトになることは、F1の試合中、エンジンの故障で一旦降りて、修理してからまた走るようなものだ。
これらは性質が違うから、米債務上限に絡む「真珠湾攻撃」(=デフォルト)があっても最高格付けを失うわけではない。
とはいえ、いずれ米国はAAAという最高格付けランクを失うことにはなるだろう(2010年4月2日掲載「米国の景気回復シナリオは裏切られ、米国のソブリンリスクは必ず問題となる!」を参照)。
ただ、最高格付けランクを失うことは時間の問題ではあるものの、現時点では時期尚早の感が強い。
■米ドル安圧力は薄らぎ、ドルインデックスは反発する
実際、「米国がAAAの格付けランクを失うことはあり得ない」と断言していたガイトナー米財務長官は最近辞意を表明。国会による債務上限引き上げの成立と引き換えに、自らの首を差し出しているのである。
言ってみれば、財務長官ほどこの問題の重大さを知っているから、何としても債務上限の引き上げにこぎつけたいということなのだろう。
従って、当面米債務上限の引き上げをめぐる懸念は強いが、期限が近づくにつれ、米国議会では妥協が見られるはず。米ドル安に作用する圧力は弱まるだろう。
QE3計画が実施されない限り、筆者は引き続き、ドルインデックスの底固め、至って反発の可能性に注目しておきたいと思う。
(出所:米国FXCM)
■米国が保有しているとされる金8100トンは幻か!?
最後に、前回は「邪説」としてIMF前専務理事の逮捕が大量の金(ゴールド)の紛失と関係あることを暴露したが、米国国内では、実は帳面上記載された金(ゴールド)のほとんどを保有していないのではないかという疑いが濃厚であることにも言及した(前回掲載「金高もドル安も金融マフィアが仕組んだ! ストロスカーン氏逮捕もアメリカのワナか!?」を参照)。
米国は公には金(ゴールド)を8100トン保有としているが、実際1950年代以来、米国は1回も金(ゴールド)の保有数を点検しておらず、またFRBの金(ゴールド)の保有量を審査する法案はずっと否決されてきた。
そうなると、金(ゴールド)が足りないから、これからは金(ゴールド)が上昇一途となるのではないかという推測もあるが、米国政府および「金融マフィア」の利益と思惑から考えると、これからはむしろ反対で、金(ゴールド)は下がる公算大とみる。
何しろ、昨年欧州のデリバティブ商品の清算機構(ICE Clear Europe)と米シカゴ商品取引所(CBOT)が金(ゴールド)を担保として受け取ることを開始して以降、米ユタ州議会も金貨・銀貨を法定通貨とみなす法律を制定し、EUでは7月に金(ゴールド)を金融取引の担保として受け入れるかどうかの最終協議に入る。
同法案が通れば、それはある意味、金本位制への復帰であり、米ドルの基軸通貨としての地位は大打撃を受ける。
これは米国が最高格付けランクを失うことと同じで、米国にとって米ドルの基軸通貨としての地位消滅はアキレス腱の断裂を意味する。それを阻止するためにも、米国は金価格を何としても押し下げなければならず、それにつられた形での米ドル上昇があり得るというわけだ。
■「国際金融マフィア」と「米政府」の思惑が一致!
その上、前回推薦した鬼塚英昭氏の著作(※)が指摘しているように、金価格の高騰は「国際金融マフィア」らに操作され、通貨不安が煽られた結果といった側面が大きい。
すでに「収穫期」に入った金(ゴールド)のブル相場を終焉させ、もう1回儲けようと狙う彼らの思惑は米政府の思惑とも合致するので、これからは金(ゴールド)の動向から目が離せない。
あのジョージ・ソロス氏が金から手を引いたと言われるように、もしかしたら金はすでにトップアウトした(天井を打った)可能性がある。
(※『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない金の値段の裏のウラ』、『金は暴落する!2011年の衝撃 ロスチャイルド黄金支配のシナリオを読み解く』(ともに成甲書房刊))
(出所:米国FXCM)
この見方が正しければ、米ドルもすでに底を打っているのかもしれない。市況はいかに。
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