■市場のセンチメントがかなり変化してきたが…
米ドル安のトレンドが続いているものの、2月3日(木)の欧州市場からユーロは反落している。
マーケット関係者の多くはECB(欧州中央銀行)の利上げの可能性に注目し始めているが、この日行われた会見におけるトリシェECB総裁の発言は、彼らにとって明らかに「肩透かし」なものとなった。
ただ、英国や豪州と同様に、インフレの進行を受けて欧州が米国よりも早く利上げするといった観測は根強く、これが最近の米ドル安の原動力となっている。
その一方で、ユーロのソブリンリスク(国家に対する信用リスク)はあまり論議されなくなり、ひと頃のような「ユーロ崩壊論」はまったく聞かれなくなった。
そればかりか、パリティ(1ユーロ=1ドル)割れを主張してきた人々が、一転して1.5000ドルといった上値目標を掲げ始めた。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
シカゴの通貨先物市場でユーロの買い越し(ロングとショートポジションを相殺したネット統計)の規模を見ると、先週は先々週に比べて4倍に増えている。これは、市場のセンチメントがかなり変化した証拠である。
もっとも、市場のコンセンサスはインフルエンザのようなもので、「変異」と「流行」という大きな特徴がある。
米ドル安が進行するにつれて、ユーロに対する弱気が強気に「変異」し、その変異した見方が流行り始めているようだ。
ただ、基本的には、こういった市場コンセンサスとは距離を保つべきである。
実際のところ、「理不尽」、「理外の理」とされる相場の値動きばかりか、ファンダメンタルズ予想の基礎となる利率変動やその周期に関する予測自体もかなりアテにはならず、注意が必要だ。
■足元の米ドル安のスピードはいったん調整されるだろう
その好例として、昨年行われた米国の「2回目の量的緩和」が挙げられるだろう。
2009年末から2010年3月あたりまで、世界中のほとんどのエコノミストやアナリストは「2回目の量的緩和」を事前に予測していなかった。
そればかりか、皆が競って米国の利上げの可能性とそのタイミングを予測していたほどで、正反対の結果となった。何を隠そう、筆者も2009年末において、最大のイベントとして米国の利上げを挙げていた(「2010年最大のイベントは米国の利上げ!米ドル/円の上値は重く、かなりの波乱も!!」を参照)。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)
したがって、予測ならば何でも好きなようにやればよいのだが、トレードの前提としてこういった利上げ予測に基づくシナリオを取り上げるのは不適切だ。
実際のところ、BOE(イングランド銀行)のキング総裁にしても、ECBのトリシェ総裁にしても、これから利上げすべきかどうかを誰か教えてくれないかと切望するほど悩んでいるのではないだろうか?
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