■ユーロ圏も米国も混迷し、先行きが不透明になっている
債務問題解決へのゲームチェンジャーとして期待された欧州の金融機関に対するストレステスト(健全性審査)を終えても、ユーロ圏の混乱は沈静化の兆しが見られません。
欧州周辺国のスプレッド(金利上乗せ幅)は拡大の一途です。ヨーロッパの銀行株は低迷し、イタリアの銀行株の一部は一時取引停止となりました。
ユーロを取り巻く環境はますます混迷を深めています。
ただ、アメリカもdebt ceiling(米国債の債務上限引き上げ)問題に揺れており、格下げは避けられるのでしょうが、米国経済の先行きは不透明です。

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以上の結果、ユーロ/米ドルという通貨ペアは決め手に欠けており、1.38~1.44ドルのレンジで乱高下しています。
■対ユーロで暴騰した後、大きく調整したスイスフラン
このような環境下で、前回のコラムでもご紹介したとおり、ファンド勢の「ユーロ売り」の主体はスイスフランとなっています(「『QE3』の可能性で海外勢のドル売りが加速。ドル/円は76.25円が視野に入った!?」を参照)。
現在、ユーロ周辺国の債務問題を筆頭にグローバルマーケットの先行きが不透明であるため、過度のリスクを嫌う投資資金は、わずかばかりの金利差よりも安全資産へと移行しつつあります。
その対象通貨が、世界一の避難通貨とされるスイスフランです。
このところのスイスフランの上昇には目を見張るものがあり、ユーロ/スイスフランの下落は収まりません。7月18日(月)のアジア市場では大きく窓を明けて下落し、ついに1.1375フランの安値まで暴落(スイスフランは暴騰)しました。

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ユーロ/スイスフランは直近1週間で600ポイントも暴落(スイスフランは暴騰)しており、投資家の多くが安全資産であるスイスフランへと資金を逃避している状況がうかがえます。
ただ、先週後半からのスイスフランの上昇はあまりにも一方的でした。
7月19日(火)の欧米市場で「スイスの銀行がドイツ税務当局に、最大100億ユーロの支払いで合意した」との報道が流れたため、その後のユーロ/スイスフランは急反発(スイスフランは急落)しており、一時は1.1750フランまで急反発しました。
これは7月18日(月)の安値から短期間で370ポイントも急騰(スイスフランは急落)していることになり、スイスフランは短期間で大きく調整したと言えるでしょう。
そこで、投資資金の次の逃避先として注目が集まっているのが円です。
■震災後の復興需要への期待でNZドル買いが続いている
さて、数カ月前から、スイスフランとともにファンド勢の注目を集めているのがNZドル/米ドルです。
今年2月のクライストチャーチの震災後、一時は大きく下落したNZドル/米ドルですが、連日で上昇して、一時は0.8573ドルの高値まで到達しました。
ニュージーランドの中央銀行であるRBNZ(NZ準備銀行)が今年後半以降の利上げを示唆したことなどを背景に、ファンド勢のみならず、アジアの中央銀行からも大量の資金が流入しているためのようです。

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なお、このNZドル/米ドルの高騰の要因としては、震災後の復興需要も挙げられるでしょう。
■米ドル/円は76.25円へ向けてジワジワと下落する展開か
震災後の復興需要と言えば、日本も大きな復興需要があると予測されており、これは円にとってのポジティブファクターとなります。
加えて、投資資金があまりにもスイスフランに集中したため、もう1つの避難通貨である円へ投資資金が分散されるとの見方が増えつつあり、円が徐々に脚光を浴びてきています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
米ドル/円は先週79.00円を割り込み、78.47円まで下落して以降は固定相場かと疑うほど、こう着相場が続いています。
ただ、6月分の米国雇用統計の結果が発表されて以降、本邦輸出勢の米ドルに対する目線は明らかに下がってきています。
現在では、80.00円レベルでの「米ドル売り」の注文が徐々に増えてきているようで、これが米ドル/円の上値を限定的にしています。
米ドル/円は東日本大震災後にG7(先進7カ国)による協調介入が行われたこともあり、介入警戒感は根強く、急落することもないのですが、前述したような背景によって「円買い」の圧力が高まりつつあります。
マーケットでは、7月21日(木)のEU(欧州連合)首脳会議に注目が集まっていますが、欧州の債務問題は先送りが続いており、今回も劇的な改善は期待しづらいでしょう。
加えて、米国もdebt ceiling問題に揺れており、グローバルマーケットの混迷は深まっています。よって、避難通貨への資金シフトは今後も続きそうです。
このところ、避難通貨の役割を唯一演じていたスイスフランの状況が変わりつつある中、もう1つの避難通貨である円の上昇に注目が集まっています。
米ドル/円は引き続き、3月につけた76.25円の安値へ向けて、ジワジワと下落する展開が続くのではないでしょうか?
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