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田向宏行
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ギリシャの悲劇は、まだ開演したばかり。
ユーロ/ドルは来年にもパリティ割れとなる

2011年11月04日(金)18:25公開 (2011年11月04日(金)18:25更新)
陳満咲杜

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■危機の連鎖が広がるリスクが高まっている

 為替マーケットは再び、米ドル高の基調に戻ってきた。

 日本政府・日銀の円売り介入、FOMC(米連邦公開市場委員会)後の量的緩和含みの声明、ECB(欧州中央銀行)の利下げ、ギリシャの国民投票をめぐる混乱など、今週は目まぐるしく材料が噴出した。

 そのような中、財政悪化懸念のあるギリシャ、イタリアなどの国債価格が下げ止まらない。米金融大手のMFグローバル・ホールディングスが経営破綻したが、これにより、危機の連鎖が広がるリスクが高まっている。

ユーロ/米ドル 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足

 ユーロのソブリン危機に関する新たな材料として、次の2点に注目しておきたい。

 まず、ギリシャの首相が突然、独仏との相談なしで国民投票案を持ち出したように、EU(欧州連合)の決定に対して、必ずしもEU内部の「主権国家」が従うとは限らないということだ。

 今後も、EUの決定が遂行されるか否かということとその効果については、各国の政治事情に左右され続けるだろう。

 つまり、危機とその対応策しだいでは、このようなEUの構造的な欠陥が、結束どころか「離心力」として作用してくる恐れさえある。

 また、中国の胡錦濤国家主席が訪欧した際、サルコジ仏大統領が胡錦濤主席に資金拠出を直に要請したが、このことで、EUがソブリン危機に対応できるだけの資金力を持っていないことが明らかになった。

 この点について、ドイツやフランスといったEUの「優等生」の資金力からすると、この見方が必ずしも正しいとは限らないが、「優等生」の出し惜しみでEU自体が「金欠」の状況にあることは間違いない

 中国などの発展途上国に資金援助を乞うサルコジ大統領の姿勢は、「安易な道に逃げこむ」という言葉そのものであろう。

 個人から企業、そして国家まで、安易な道を選んだのは、打開策に困り、あせって決断したためであるだろうが、だからこそ、明るい将来は描きにくい。

中国が安易にEUを助けることはまずない

 ところで、中国は世界2番目の経済大国に成長してきたが、そうは言っても、EUを救えるだけの体力は持っておらず、その意欲もないだろう。

 そもそも、都会に住み、中産階級に属する中国人の年収(1人平均ではないことに注意していただきたい。貧富格差の大きい中国では平均年収はあまり意味をもたないため、ここでは中産階級のみを取る)でも、ドイツ人の6分の1ぐらいしかない。

 EUの「富裕層」が出し惜しみする中、中国がヘタに首を突っ込むと、国民の反発を招くと見込まれる。

 また、EUは中国の市場経済地位の認定を拒み、武器やハイテク技術の対中輸出封鎖を続けており、人権問題に関するあつれきも多い中で、EUの譲歩を引き出せないうちに、中国が安易にEUを助けることはまずない

 そのあたりはEUのほうも承知しているようで、EU高官は「資金援助を引き出すための対中譲歩なし」と強調し、「対中ハト派」をけん制している。

 したがって、サルコジ大統領が片思いだけで送った「秋波」は、「秋」というタイミング(季節)は合っていても、実らないだろう。

 そうなると、最後の頼りは「EFSF(欧州金融安定化基金)」しかないため、そのレバレッジ化が応急措置として導入されたのだ。

 しかし、EFSFのレバレッジ化は、より深刻な、場合によっては破滅的な結果を招く恐れがあることを見逃してはならない「EU債務危機対応策に問題あり!壊滅的な結果を招くリスクも!!」を参照)

 サブプライムという金融商品を思い出していただきたい。

 買い手にとって、サブプライム債券は魅力的に見えていたが、その中身は不良債権のかたまりであった。当初、購入者にその中身が見えなかったのは、サブプライム自体がレバレッジ化され、中身が見えづらかったからだ。

 結果的に、サブプライム危機は商品のレバレッジ化によって数十倍、数百倍に拡大され、その後、リーマン・ショックを引き起こしたことは記憶に新しい。

EFSFのレバレッジ化は市場の信頼が得られていない

 レバレッジ化されたEFSFは、政府債券に対して協議で定められた範囲内で、一定の損失を提供する機能を持っている。いわば「保険」のようなものだ。

 だが、EFSF自体がトリプルA格付けの国家の信用と担保に依存している以上、レバレッジ化が主権債務をデリバティブ商品化し、価値の算定を難しくしている。

 サブプライム問題の際も、サブプライム債券の購入者が、そのほとんどが機関投資家であったにも関わらず、商品価値を「本当に」計算できなかったのは、そのためである。

 したがって、レバレッジ化された後のEFSFはサブプライムに近い仕組みとなる。そのため、たとえばフランスなど、信用を担保していたトリプルAの国が最高格付けを失えば、商品価値を正当に評価できなくなり、一層の疑心暗鬼を招くことになる。

 つまり、担保国の信用の消滅はEFSFの最高.格付けの消失を意味するため、事態がますます悪化する可能性が高い。

 最近のマーケットを見ていても、イタリア国債の利回りはユーロ導入後の最高水準を超えてきており、このことが示すように、EFSFをレバレッジ化するといった案が市場の信頼を得ているとは言いがたい

 むしろ、財政懸念のある「PIIGS」の国々が独自に発行した国債価格が下落し、ある水準を超えた損失になると、EFSFと担保国にとっては全額損失となってしまう。そのため、レバレッジ化されたEFSFが発端となって、サブプライム問題と同じような危機へと拡大する公算は大きい。

来年には、ユーロ/米ドルはパリティ割れか?

 もはや、ユーロのソブリン危機は、テクニカル手法によって解決することはできないだろう。

 このコラムでも何度か指摘しているように、本質的に、ユーロの問題は政治問題である。それだけに、独仏などの大国主導の抜本的な改革がなくては、すべての方策は問題の先送りとなってしまう。それは結果的に、より大きな「災難」を招くだろう。

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