■なぜ、ユーロは極端に売り込まれたのか?
現在の金融市場の最大の関心事は欧州財政危機問題です。
そして、2011年のクリスマス休暇以降、ユーロは極端に売り込まれてきました。対円では100円を割り込み、2012年1月半ばには97円台前半にまでユーロ安が進み、対米ドルでも、1.3000ドルを割り込み、1.26ドル台前半までユーロ安が進行しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
ただ、よく考えると、この期間に欧州の状況が極端に悪くなったわけではありません。
S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)など大手格付け会社が欧州諸国の格下げを実施しているものの、これは規定路線であって、目新しさはありませんでした。
それでも、ユーロが下落したのは、おそらく、欧米の機関投資家が新しい会計年度になって最初の勝負を仕掛けてきたからだと思います。
■ユーロはまだ下落リスクを抱えている
ただ、すでにユーロはかなり市場でショート(売り持ち)に傾いていたところに、さらに売り込んだことで、ポジションが極端にショートに傾いてしまいました。
それは、IMMのユーロポジション動向を見てもはっきりと現れています。
ショートポジションの保有者は、さらなるユーロの売り材料を期待していましたが、欧州問題は一時、膠着状態に入っており、大きな変化はありません。
そうした状況下では、期待が失望に変わり、反動すなわち、ユーロの買い戻しが起こります。ユーロの買い戻しが起きた場合、市場に安心感が広がるため、世界中の株価にもプラス効果をもたらし、株価が上昇すれば、株高→円安の構図により、円安が進行するわけです。
現在起きている現象はこうした連鎖によるものであると言えるのではないでしょうか?
しかし、ここで大変重要なことがあります。何度もお伝えしていますが、市場を取り巻く環境に変化は何も起きていないのです。
3月にはギリシャ国債の大量の償還が待っています。
緊縮財政を続けているため、欧州各国の景気は低迷し、IMF(国際通貨基金)によると2012年の欧州の成長率はマイナスになると予想されています。
ユーロはまだ下落するリスクを抱えていることを忘れてはいけないと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
もう少し金融市場は回復する余地があるかもしれませんが、そこからさらに好転する要素は現在のところ見当たりません。
楽観は禁物です。
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