■日本がインフレになる一番のトリガーとは?
この(3)の最終段階まで来ると、いったい日本はどうなってしまうのか怖い気もするが、この日本国債がどんどん売られる段階での長期金利は具体的に何%ぐらいと想定できるのだろうか?
「それはそのときの他国の金利にもよるので、一概には言えません。ただ、イメージとしては5%とか7%といった感じしょうか。
そうなったときは、もう普通の状態ではありません。インフレがどんどん止まらなくなっているでしょう。
先ほど、『日本はユーロ圏と同じような形で国債がどんどん売られるようなことにはならない』と話しましたが、それは現在のようなデフレ下での話です。
では、インフレになる一番のトリガーは何かといえば、『日銀の国債引き受け』ではないでしょうか。日銀が国債を引き受ければ、政府が際限なくどんどん歳出を増やしていくことが考えられます。
そうなったときに、国債引き受けを止められるのか…。止められなければ、かなりのインフレになり、日本国債は売られて、円も売られる展開になると思います。
それなのに、今は一部の政治家が日銀に国債を引き受けさせようとしています。
今の日本はデフレだからこそ、なんとかこの巨額の財政赤字を抱えたままやっていけているんです。
『インフレ率が非常に高くなって、国債が売られ、長期金利が上昇し、大幅に円安になる状況』と比較すれば、今の状況の方が日本人にとって幸せであると言えます。
それでも無理矢理、日銀に国債を引き受けさせるというのは、日本人の一般的な生活をリスクにさらすことになると考えられます」

■将来の円安に備えて買うべきは欧米通貨でなくアジア通貨
「日本人の生活がリスクにさらされる」とは怖い話だ。そのとき、投資家としては、どんな対策を取っておけばいいのか?
「円が安くなるそのときに備えて、米ドルやユーロや英ポンドを買っておこうというのは避けた方が良いかもしれません。なぜかといえば、米国もユーロ圏も英国も日本と同じようなことをやっているからです。
超金融緩和政策を採用している日本と同じことをやっている通貨を買ってはダメだと思います。買うのはアジア通貨の方が良いと思います。
たとえば、中国人民元、韓国ウォン、シンガポールドル、香港ドルといった通貨です」

「このなかには米ドルとの為替相場をほぼ固定しているドルペッグ制をとっている通貨もありますが、そんなふうに日本をはじめとした先進国が大変なことになったときには、当然ドルペッグ制は止めているでしょうね」

日本のFXでは、アジア通貨の取引がまだすごくやりやすい状況とは言えないものの、くりっく365が中国人民元や韓国ウォンを上場させるなど、次第にアジア通貨の取引環境は整備されつつある。
今後はそうした動向も、より一層ウオッチしておいたほうがいいのかもしれない。
(取材・文/ザイFX!編集部・井口稔 撮影/和田佳久)
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