■マーケットにおける「大惨事」は夏場に発生しやすい
夏休みシーズンにおける薄商いの局面において、何らかの問題が発生すれば、マーケットは一方通行に振れやすいから、金融機関の幹部やチーフトレーダーたちがビーチにいるなら、状況がさらに悪化していくことも想像しやすいだろう。
実際、マーケットにおける「大惨事」は夏場に発生しやすい。
1998年にはロシア危機が起こり、それがノーベル賞経済学者が運営するLTCMの破綻を引き起こしたのが衝撃的だった。
(※編集部注:「LTCM」とはヘッジファンド「ロングタームキャピタルマネジメント」のこと)

(出所:米国FXCM)
そして、2007年のサブプライム問題によるモーゲージ証券やMMFマーケットの凍結、2008年のリーマンブラザーズ倒産の引き金となったファニー・メイ(Fannie Mae)の騒動といった夏場の「大惨事」は記憶に新しいところだ。

(出所:米国FXCM)

(出所:米国FXCM)
■2012年の夏ほど危ない材料が満ちている年はない
言うまでもないが、今年(2012年)ほど危ない材料が満ちている年はないかもしれない。下手をすると、以下の懸念材料は優秀な小学生にも挙げられるほどではないかと思うが、とりあえず列挙しておく。
(1)EU(欧州連合)ソブリン問題
EU問題は構造問題であるだけに、「時間稼ぎ」に過ぎない今の解決策では解決しない。スペインとイタリアが次のギリシャと言われるだけに、マーケットは戦々恐々だ。
(2)米国政治と債務問題
今年(2012年)の後半、米国では債務問題が再浮上してくるに違いない。債務上限の突破は時間の問題とされるだけに、米両党は早期に妥協しなければならない。が、選挙が白熱するにつれ、どちらかというと、それは難しくなるだろう。米国の財政事情が火の車であることが、再びマーケットを震撼とさせるかもしれない。
(3)LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)に関するスキャンダル
BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])が信頼を損ない、バークレイズCEOが辞職したに留まらず、欧米大手金融機関を軒並み巻き込んだこのスキャンダルは金融機関不信を一段と深め、流動性の低下を招き、危機を引き起こす恐れがある。ちなみに、刑事事件発展の可能性もあるこのスキャンダルが本当の衝撃を与えるのはこれからだ。
(4)中国のハードランディング
8%を割り込んだ成長率、他国にとっては羨望の的でも中国には赤信号だ。万が一、中国発の恐慌があれば、それこそ世界的な大恐慌になりかねない。
■意外と無風状態になるのでは?
最後に、やや意外かもしれないが、ロンドンオリンピックも挙げておこう。ロンドン・シティの幹部やトレーダーたちが夏休みを犠牲にしても、交通渋滞で出勤できない恐れがあるから、一層混乱が深まる可能性がある。
このように、2012年の夏場は警戒しなくてはならない危険がいっぱいだ。しかし、それゆえに、今年は意外と無風状態になるのではないかと筆者は思う。
なぜなら、こういった懸念が大きければ大きいほど、欧米の連中も「日本人」並みの勤勉さを発揮してくれるので、「西部戦線異常なし」になる公算が大きいと思うからだ。
このあたりの理屈とGMMAチャートの検証はまた次回。本当は2カ月後にしてほしいが…。
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