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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

エリオット波動論から浮上してきた
ドル/円が力強く上昇していく可能性とは?

2012年08月17日(金)18:37公開 (2012年08月17日(金)18:37更新)
陳満咲杜

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 為替マーケットは引き続き、リスクオンの方向に反応している。つまり米ドル全体(ドルインデックス)は反落を続け、米ドル/円のみが切り返す傾向を示している。

 当然のように、このような局面ではクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が一番恩恵を受け、ユーロ/円、英ポンド/円や豪ドル/円は軒並み堅調な値動きを見せている。

■ユーロショートポジションの解消が続きやすい地合い

 まず、ユーロの場合、表では8月16日(木)のメルケル独首相の発言に支えられ、底割れを回避したように見える。

 しかし、本質的にはユーロが売られすぎという状況にある中、スペイン国債利回りの低下傾向と相まって、ユーロのショートポジション(売り持ち)を解消する動きが続きやすい地合いにあるため、このような動きになっているとみる。

 7月25日(水)以降、スペインの長期金利(10年物国債の利回り)は総じて低下傾向にある。これはユーロ/米ドルの7月24日(火)安値を起点とした切り返しと整合的だ。

ユーロ/米ドル 日足

(出所:米国FXCM

 スペイン長期金利のもう一段の反落があれば、ユーロも総じて底堅く推移し、リバウンドの余地がありそうだ。

■典型的なリスクオンムードの反応パターン

 スペイン長期金利の低下はドラギECB(欧州中央銀行)総裁による「ユーロ防衛論」の発言に依存するところが大きい。

 そして、2011年11月のイタリア国債危機と同様、ECBはスペイン危機を解消するために、具体策を練り始め、かつ従来の枠組みに縛られない行動に出て、危機は回避されるといった見方も多い。

 こういった雰囲気の中、メルケル独首相のECB支持の発言や米国株の上昇が、一段と市場センチメントをリスクオンの方向へ押し進めたと思う。

 たびたび指摘してきたように、EU(欧州連合)危機以降、為替マーケットにおけるパフォーマンスはリスクオン/オフに左右される傾向が強い。

 前述した「米ドル全体が下落、米ドル/円とクロス/円が上昇」といった構図は典型的なリスクオンムードの反応パターンであるから、理に適っている。

【参考記事】
米雇用統計が良かったのに、なぜ米ドルは売られたのか? その隠れた理由とは?(8月10日、陳満咲杜)

 もっとも、ユーロの切り返しについてはユーロ全体について考える必要がある。前回のコラムでも強調したように、同じように売られ過ぎていたユーロクロス(ユーロと米ドル以外の通貨との通貨ペア)の修正が先行し、ユーロ/米ドルがそれを追随するといった構図が読み取れる。

 特に対資源国通貨では、ユーロの暴落はかなり進行してきたので、スピード調整の気運が高まる。

【参考記事】
米雇用統計が良かったのに、なぜ米ドルは売られたのか? その隠れた理由とは?(8月10日、陳満咲杜)

■「1-2-3の法則」が成立したユーロ/豪ドルの日足

 このロジックで推測していくと、テクニカル的に見て、ユーロクロスがリバウンドする可能性が高ければ高いほど、ユーロ/米ドルも上値余地がある、ということになる。

 それでは、ユーロクロスのチャートを順番に見てみよう。

 ユーロ/豪ドルの日足では、底打ちのパターンを示す「1-2-3の法則」が効いている模様。

ユーロ/豪ドル 日足(クリックで拡大)

(出所:米国FXCM

 「1-2-3の法則」の1の条件とは「前の安値を下回らなかったこと」、2の条件とは「下落抵抗ラインを上回ったこと」、3の条件とは「その前の主要高値を越えていること」だ。

【「1-2-3の法則」に関する参考記事】
中川問題は関係ない!?為替相場で円安が進んでいる本当の理由(陳満咲杜)

 この3つの条件を検証してみると、ユーロ/豪ドルには一段とリバウンドの余地がありそうだ。その上、RSIが示す強いダイバージェンス(※)も効いているから、その可能性は一層高くなる。

【ダイバージェンスに関する参考記事】
ドラギ総裁発言でユーロが激しく上昇! 平凡な発言内容になぜ激しく反応した?(陳満咲杜)

(編集部注:「ダイバージェンス」とは、相場の値動きとテクニカル指標の動き方が逆行すること)

 続いて、ユーロ/NZドル。

 「1-2-3の法則」の1と2の条件は満たし、RSIのダイバージェンスも同様に効いているから、3の条件を達成できれば、やはり一段と反騰する可能性が高い。

ユーロ/NZドル 日足(クリックで拡大)

(出所:米国FXCM

■大した反騰を見せていないユーロ/加ドルもそろそろ反騰か

 ユーロ/円の場合、8月16日(木)に再度「1-2-3の法則」の3の条件を満たしたから、より激しいリバウンドが予想される。

ユーロ/円 日足(クリックで拡大)

(出所:米国FXCM

 唯一、大した反騰を見せていないのはユーロ/加ドルとなるが、RSIが示す強いダイバージェンスを考えると、そろそろ反騰のタイミングが来るだろう。

ユーロ/加ドル 日足(クリックで拡大)

(出所:米国FXCM

 この中で、特に強調しておきたいのはユーロ/円反騰の意味合いだ。

7月27日(金)の本コラムで指摘したように、ユーロ/円にとって94円台を死守するかどうかは重要な意味を持つ。

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