だからこそ、筆者は逆に円安相場の可能性に一層自信を深めていた。なぜなら、相場というものは大衆の懐疑の中で育つものだからである。
相場では、万人向けのわかりやすい話は決して真実ではない。「日本は少子化で低成長だから、日本円は売られる」といった類の話のように、懐疑的に思われない見方はホンモノではない可能性も高い。
■米ドル/円は85円以上、豪ドル/円は87.60円が短期目標
11月2日の当コラムでは、中期的なターゲットとして、米ドル/円は85円以上、また、10月26日の当コラムでは、豪ドル/円のターゲットを87.60円と提示していたが、足元の相場と照らせば、これは短期のターゲットとしてあり得る数字だろう。
【参考記事】
●米ドル/円は強気サイクルに入り、85円以上へ上昇する可能性あり! その理由は?(11月2日、陳満咲杜)
●もはや豪ドルは「資源国通貨」ではない?米ドルには上昇を強く示唆するシグナル!(10月26日、陳満咲杜)
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
ユーロ/円に関しては、7月27日の当コラムで指摘したように、11~12年サイクルによる底打ちが示唆されていたが、これは94円台が死守されたことをもって実現された。
【参考記事】
●ドラギ総裁発言でユーロが激しく上昇! 平凡な発言内容になぜ激しく反応した?(7月27日、陳満咲杜)
ユーロ/円の足元の高値打診は基本的に7月安値を起点とした切り返しに過ぎず、下のチャートが示すように、2009年の高値、安値から構築された大型下落ウェッジの抵抗ラインをトライしていくことは自然の成りゆきである。
これは7月の時点で想定された値動きだったが、それがついに実現されたわけだ。
(出所:米国FXCM)
こういった例から見ても、相場におけるターゲットは予測しやすいが、いつターゲットに達するか(つまり、モメンタム)は予測しづらいことがわかる。
■円安の幕開けだ。長期円安トレンドは始まったばかり!
往々にして、相場は大衆をびっくりさせるようなスピードをもって一気にターゲットに達するクセがあるから、日々準備を怠けず、また利益を伸ばしていけるトレーダーのみがもっとも恩恵を受ける。
相場予測と相場から利益を叩き出すこととは別ものだから、正しいロジックや信念に基づいてアクションを起こせるかどうかは、トレーダーの腕の上下を分けるだろう。
最後に、前述の円安ターゲットは、たとえ達成されたとしてもまだまだ相対的に低い水準に過ぎないだろう。
何しろ、「円安の幕開け」という言い方を筆者は繰り返し使ってきた。数年スパンでの円安トレンドはまだ始まったばかりである。
やや極端な話、1970年代に為替相場が形成されて以来、日本人はまだ「真の意味を持つ本格的な円安」を経験していない。本格的な円安はこれからだ。
円高に苦しめられてきた輸出業者はこの話を聞いて、そんなバカな! と頭にくると思うが、怒る前に下のチャートをよく吟味していただきたい(2008年11月に作成したことにご注意)。
このチャートをよく理解できれば、筆者が言う円安時代の幕開けの真意を悟れるのではないかと思う。詳細はまた次回。
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