■今後のカギを握るのは米長期金利か
日米株のパフォーマンスが大きく異なる中、米ドル/円は緩やかな下落を見せている。と同時に、ドルインデックスは反落してスピード調整の様子を深めており、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下げ一服につながっている。足元の相場はこのような状況ではないかと思う。
日米株のパフォーマンスの違いは先週(5月20日~)から継続しているから、日米のマーケット心理の違いが表れたものではないかと思う。
前回のコラムで指摘していたとおり、やはりマーケットは、金融政策にばかり頼るのではなく、安倍政権の成長戦略の中身をチェックしないと安心できない、といったところが大きいようだ。
【参考記事】
●日経平均暴落、ドル/円反落をもたらした最大の犯人は?ドル/円調整は深い可能性(2013年5月24日、陳満咲杜)
もちろん、日本株が急騰したのは、米国株よりテクニカル上の過熱感が強かったことも一因だ。少なくとも巷に言われているほど、米出口政策云々といったことが主因ではないだろう。
その上、長期金利相場の波乱は、今回の日本株騒動をもたらした要因としても看過できない。
実際、ウォール街でも米出口政策云々より、米長期金利の上昇を危惧する声が多く、日本株の急落が警告のサインとして受け止められている模様。
この意味では、比較的堅調に推移している米国株がこれからも堅調に推移できるかどうかは不透明で、米国の政策の変化より、米長期金利の動向がカギを握るだろうと思われる。
アベノミクスで大きく買われた米ドル/円においても、円が完全にリスク回避先としての役割を失くしたわけではないことも、今回の株騒動で明らかとなった。
これから米国株も荒れてくれば、買われすぎた米ドル/円は、一段と調整の余地を深めるに違いない。今後、米長期金利と米株の動向から目を離せない。
■GMMAチャートで豪ドル/円相場の流れを読む
テクニカルの視点では、本コラムで繰り返し指摘してきたように、円売りトレンドをリードしてきたのは豪ドル/円である。
豪ドル/円の変化は、これから米ドル/円と主要クロス円の行く末を暗示していると思われる。説明はGMMAチャートをもって行いたい。
(出所:アイネット証券)
GMMAチャートは12本のEMA線(指数移動平均線)で構築され、このチャートでは、長期組をピンクの6本、短期組をブルーの6本線をもって表している。
【参考記事】
●GMMAチャートで読み解く米ドル/円相場。中長期トレンドに重大な変化あり!!(陳満咲杜)
では、長期組を鯨(クジラ)、短期組を鰯(イワシ)にたとえて、両者の位置関係から海原の本流、つまりトレンドを把握してみよう。
詳細な解釈は、拙作『FX最強チャート GMMAの真実』(扶桑社)に譲るが、簡単にまとめると、誰でも一目瞭然であるように、2012年6月からの豪ドル/円の上昇相場は、同7月~10月まで横ばいに入っていたが、10月中旬から鰯が鯨の上に乗り始めると、だんだん鯨から離れて行き、鯨にしても、鰯にしても、組内同士の距離もだんだん拡大していった。
途中、2013年2月下旬と4月上旬の2回ほど、鰯と鯨の接近や打診があったが、2回とも鯨に跳ねられてもとの上昇に戻り、また4月上旬にてその度合いを最大限まで強めていた。
このような変動パターンはブル(上昇)トレンドの典型で、こういった状況が続く限り、ブルトレンドについていく、つまり円売りを継続していくのが得策であった。
■鰯の逆襲! 豪ドル/円のブルトレンドはすでに終了
しかし、4月11日以降、状況が変わった。
米ドル/円、ユーロ/円における円売りがなお盛んなうちに、豪ドル/円における鰯と鯨の距離がだんだん接近し、離れなくなってきた。それどころか、5月中旬に入ると、ついに鰯が鯨の中に入り込み、現在に至っては、完全に鯨の下に抜けてきた。
これはまさに「鰯の逆襲」ともいい、トレンド転換のシグナルである。
(出所:アイネット証券)
鰯は鯨に喰われないように、できるだけ鯨から離れる習性があるが、鯨の上に遊離するなら、鯨も上方向に追撃し、海原の本流を上方向に作り出す。反対に、鰯が鯨の下に遊離すれば、鯨も下方向に追撃してくる。海原の流れは、いったん修正されると、しばらく本流として続くのが自然の摂理である。
したがって、2012年10月中旬から続いてきた豪ドル/円のブルトレンドはすでに終了しており、今は逆流し始めていることが明白である。
ゆえに、円高トレンドは当面続く公算が高いし、まだ始まったばかりと言える。
■米ドル/円や他のクロス円も、豪ドル/円と同じ流れに
リード役の豪ドル/円の状況を見てから米ドル/円、ユーロ/円や英ポンド/円の状況を見てみると、なんとなく感じがつかめるのではないだろうか。
(出所:アイネット証券)
(出所:アイネット証券)
(出所:アイネット証券)
上の3つチャートから考えて、以下の3点にまとめることができる。すなわち、
1、3つの通貨ペアはともに豪ドル/円の後を追随し、強いブルトレンドを長く維持してきた。
2、途中、鰯と鯨の接近や打診(クロスを含む)が2回か3回ほどあったが、すべてはねのけられている。これはブルトレンドの特徴を表している。
3、現在、鰯と鯨の接近は「三度目の正直」になる公算が高まり、豪ドル/円が先行指標なら、これから鰯が鯨の下に潜っていく可能性が大きい。
よって、結論から申し上げると、米ドル/円を始め、ユーロ/円などクロス円は豪ドル/円のように、これからベア(下降)トレンドを構築していく可能性が大きい。
行きすぎた円安トレンドに対する修正はまだ始まったばかりで、調整はむしろこれからである。
ところで、前回のコラムでも指摘したように、豪ドル/円が…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)