ゼレンスキーの皮肉コメントで米ウクライナ首脳会談決裂
西原宏一(以下、トレーダー西原) 今回のトランプ劇場、通称「トランプ2.0」というのは、暗号通貨を筆頭にかなりボラティリティを伴って乱高下しますね。
振り落とされないように頑張っていきましょう。
それでは叶内さん、今週もよろしくお願いします。
叶内文子(以下、MC叶内) はい、今週もよろしくお願いします。
まずは先週(2月24日~)の株式市場を振り返りましょう。引き続きトランプ大統領の関税をめぐる発言に右往左往することになりました。
2月26日(水)に、市場の注目を集めるNVDAの決算発表があり、内容は事前の予想を上回る結果でしたが、翌日(2月27日)の株価は8%超下落。これがハイテクセクター・AI関連銘柄に影を落としました。
2月28日(金)の、トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談は決裂。公開された会談の終盤は激しい口論で、共同記者会見は中止されました。株は直後に下落しましたが、その後は戻しています。
識者の評価はさまざまでした。この戦争をめぐっては米国と欧州の対立に進んでしまったとの見方もあり、マーケットが織り込むのは難しそうです。
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2月28日(金)のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談は決裂した。この戦争をめぐっては、米国と欧州の対立に進んでしまったとの見方もあり、マーケットが織り込むのは難しそうだ (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
週末のPCEデフレータは予想どおり低下していましたが、市場は今、インフレより景気減速を心配していそうです。消費者信頼感指数が2021年8月以来の大幅低下となったことや、サービス業PMIが50を割り込んだことなどが嫌気されました。アトランタ連銀のGDPナウは2.3%から-1.5%に大幅に下方修正されていました。これらを受けて米長期金利が低下しました。
米国株は週末に反発を見せ、NYダウは約1%の上昇となりましたが、ナスダック総合指数は戻り切れず3.5%安、S&P500は1%ほどの下落で終えています。
日経平均は週末に急落し、先週末比1621円(4.2%)安の3万7155円と2週連続の下落で終えました。指数寄与度の大きい半導体株の下げが大きかったためで、TOPIXのほうがやや下げが緩やかで約2%安です。これまで頑張っていた新興市場のグロース250指数も6週ぶりに下落となりました。
2月が終わりましたが、日経平均は月間では6.11%の大幅下落となりました。
先週の為替市場はいかがでしたか?
ユーロの上値が重く、米国株も続落でリスクオフの様相に
トレーダー西原 先週も乱高下している為替市場ですが、やはりもっともも驚いたのは、トランプ大統領とゼレンスキー大統領の会談でしょう。
ゼレンスキー大統領とトランプ大統領の会談は、激しい口論となり、ウクライナと米国の同盟関係に亀裂が生じたことになります。
特にまずかったのが 「You have a nice sea in between(あなたにはその間に素敵な海がある)」というゼレンスキーのコメント。この発言は大西洋を指し、アメリカがヨーロッパの戦争から地理的に離れて安全な場所にいることを皮肉ったことになり、激しい口論を引き起こしたようです。
なお、トランプさん自身が10日前に『この問題についてはその間に素敵な海があり、基本的にはヨーロッパが責任を持つべき』と発言したことがあり、これに対する皮肉でもあるようです。
この会談後トランプ氏は、ゼレンスキー氏が政権にいる限り和平協定の可能性は低いと発言し、ウクライナへの支援打ち切りを示唆しました。
欧州諸国は、ウクライナ支援でより大きな役割を担うようトランプ氏に迫られる、または、ロシアとの和平協定を結ぶよう圧力をかけられる可能性に直面しています。
Bloombergは「トランプ政権に近い人物によると、米国はウクライナへの圧力を強め、ゼレンスキー氏とは直接交渉しない可能性が高い」としています。
ゼレンスキー氏はトランプ氏との関係修復を望んでいますが、今後のウクライナの展望は暗いといったところでしょうか。
よって、ユーロの上値は重い。一方、米国株も続落しており、リスクオフの様相を呈しています。
今週(3月3日~)のスケジュールをご紹介していただけますか?
MC叶内 月の初めは重要指標が多くなりますが、週末3月7日(金)の米2月雇用統計が最大の注目でしょう。それに先立って、3月5日(水)に米2月ADP雇用報告があります。
今回の雇用統計では、連邦職員のリストラがどう響くのかが注目されています。
1月から約230万人の連邦職員を対象に、早期退職プログラムが始動しています。さらに関連の業者もいます。ADPは民間対象なので、今回は乖離が大きいかもしれません。
市場予想はNFP(非農業部門雇用者数)が15.7万人増(前回14.3万人)、失業率4.0%で横ばい、平均賃金は前月比+ 0.3%(前回+0.5)、前年比+ 4.1%(横ばい)です。
景気懸念が出てきているところで、3月3日(月)の米2月ISM製造業景況指数、3月5日(水)の米2月ISM非製造業景況指数も注目です。製造業の市場予想は50.5。1月に50.9と2022年10月以来の50台を回復し、そこから低下はするものの、50は維持との予想です。
3月5日(水)に米ベージュブック(米地区連銀経済報告)、3月6日(木)に米1月貿易収支の発表。決算発表は小売りで続くほか、3月6日(木)に半導体ブロードコムが予定されています。
3月4日(火)のトランプ大統領の施政方針演説、カナダ、メキシコへの関税発動も気になります。
欧州では3月6日(木)にECB(欧州中央銀行)定例理事会があります。
3月3日(月)から3月6日(木)にかけて、スペイン・バルセロナでモバイル見本市「モバイルワールドコングレス(MWC)」が開催され、ときどき株価材料がでます。
また、中国では3月5日(水)から全国人民代表大会(全人代)が開幕します。
国内では、3月4日(火)に1月失業率・有効求人倍、10-12月期法人企業統計の発表があります。3月5日(水)に内田日銀副総裁が静岡県金融経済懇談会に出席します。
今週の株式市場はやや荒い値動きが想定されます。日経平均株価は5ヵ月間続いたレンジを下抜けたことになります。そう簡単には落ち着かないでしょう。
仮にすぐにレンジ内に戻るなら、下値の堅さを一層確認することになります。3月中旬の日銀に向けた思惑もありそうです。
今週の為替市場はいかがですか?
ユーロ/円は引き続き戻り売り。ナスダック総合指数日足はトップアウトした可能性。株安を重視するなら豪ドル/円も注目
トレーダー西原 為替市場が注目しているのは、まずウクライナ停戦関連の報道ですが、緊張感をもって見ているのが、ナスダック総合指数です。
ナスダック総合指数の日足は、僕がチェックしているTDシーケンシャル(※)ではいったんトップアウトした可能性が高い。
(※編集部注:「TDシーケンシャル」とは、トーマス・R・デマーク氏が開発したテクニカル指標の1つ)
一般的なインディケーターでチェックしても、日足は三尊天井を完成しているようにみえる。
結果、株安を伴うリスクオフで、総じてクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)自体が重い展開。
引き続きユーロ/円を戻り売りで、株安を重視するのであれば豪ドル/円も注目でしょうか?
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(出所:TradingView)
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(出所:TradingView)
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