■日経平均の暴落を引き金に、米ドル/円が反落
米ドル/円が反落してきた。
前回のコラムで指摘したように、米ドル/円のブル(上昇)トレンドは、長期スパンではまだまだ続くものの、中期スパンでは103円台においてもういっぱいいっぱいであり、調整される運命にあった。
【参考記事】
●ドル/円とドルインデックスの関係がカギ。目先のドル/円上昇は最大103円台までか(2013年5月17日、陳満咲杜)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
したがって、この値動きに関して筆者は当然視しており、まったくサプライズを感じなかった。
ところで、今回の米ドル/円の反落の、直接の引き金は日経平均の暴落であったことが興味深い。
昨日(5月23日)1日での7.3%の下落幅は、2011年3月15日(火)に記録した10.55%安以来の大きさだった。前回の暴落時は震災、原発危機等があったことを考えると、今回の暴落は、実は値幅以上にインパクトを持つものではないかと思う。
(出所:株マップ.com)
ちなみに、5月23日(木)の株式市場の売買代金は、東証の史上最高レベルを塗り替えたという。
では、日経平均暴落の背景には何があったのだろうか。
いろいろな要素が重なったところも大きいようだが、筆者は長期金利の上昇がもたらした衝撃と警戒が、5月23日(木)の市況を作り出した最大の「犯人」ではないかと思う。
巷で言う主因であるバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言は、表の原因にすぎないかもしれない。
■バーナンキ発言で市場の不安心理が高まったのはなぜか
もっとも、5月22日(水)夜のバーナンキ氏の発言が、マーケットを翻弄したのは確かだ。
バーナンキ氏は「政策の早期終了、景気にマイナス」、「状況に応じて出口政策を模索する可能性がある」といった前後相違の話を展開し、市場関係者の神経を尖らせた。
実際、議会証言の場合、政策変更の余地を残すために、曖昧な言い方をするのが慣例のようだ。今回、緩和縮小に言及したことはバーナンキ氏からみれば一種の「社交辞令」であったにもかかわらず、それは市場関係者に衝撃をもたらした。
なぜなら、現在日米欧の金融相場は、流動性によって支えられていると言っても過言ではないだろうからだ。
流動性を提供してくれる「世界中銀」のFRBがこれから政策変更をする可能性が少しでもあれば、マーケットの不安心理が一気に高まるのも自然の成り行きだ。
何しろ、市場関係者ほど現在のマーケットの水準が高すぎる、つまり買われすぎであることを知っているからだ。
■株式市場のパフォーマンスから見る日米の温度差
このような状況の中、日本と米国でも温度差があることが、昨日(5月23日)の株式市場のパフォーマンスからうかがえる。
暴落した日経平均に対して、大した値動きを示さなかった米国株式が、両国の状況の違いを暗示。その相違はやはり、長期金利の上昇に対する警戒の程度差にあるのではないかとみる。
言ってみれば、やれアベノミクスだ、やれ異次元緩和だともてはやされ、日本株は実力以上に買われ、円売りもまた行きすぎていた。
アベノミクスの副作用、つまり長期金利の上昇(一時1%を超えていた)がマーケット関係者の頭を冷やし、利益確定に走らせた。
景気が本格的に回復する前に金利だけ上昇したら、元も子もなくなるといった懸念が急速に浮上しているから、バーナンキ氏の発言後、本家より日本のほうがより激しく反応してきたわけだ。
5月HSBC(香港上海銀行)中国製造業PMI(購買担当者景気指数)の下振れ云々はあくまで表面上の材料で、売りに拍車をかけたきっかけにすぎないと思う。
では、本家の米国が割と冷静さを保っているのは…
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