■出血サービスだけで終わると、最悪の事態を招く可能性も
ゆえに、日銀の出番がだいぶ過ぎたところで、本来なら安倍さんの手腕を拝見したいところだ。けれど、なかなか成長戦略を描けずにいる安倍政権に一種の失望感が漂っている。業を煮やした安倍首相は企業に賃上げを迫っているが、統計では首を縦に振る企業は3割に留まり、賃上げを実行する企業は相当限られると推測される。
金融政策と財政出動は、言ってみれば、店の出血サービスみたいもの。この間に稼いだ時間を利用して組織改造、基盤強化と収益向上を目指さないと、出血サービスだけで終わって、店仕舞いを逆に早めるといった最悪の事態を招くかもしれない。
サービス中の千客万来(株高・円安)を見て、成功したと勘違いしたら、とんでもない結果になる。おまけに、サービスしても来客は減少する傾向にあり、残り時間もどんどん少なくなっていく。こういった状況が、現在のアベノミクスの真相ではないかと思う。
政治評論家のようにだらだら書いて申しわけないが、要するに日銀政策の出番がこれから限られる中、マーケットはもはや金融政策や財政支出だけでは過激に反応しなくなっている公算が大きい。
より正確な表現をすると、今の株価と為替レートには、今までの実績だけでなく、これからの期待もだいぶ織り込まれているから、それが期待どおりにならない場合、相当な反動があることを覚悟しておきたい。
■外部環境悪化から、早晩米ドル/円100円台打診も覚悟
そして、たびたび指摘してきたように、アベノミクスに今まで成功したところがあるとすれば、それは構造自体の大胆さ(黒田さんの功績が大きい)以外には、外部環境の良さ、つまり2013年の世界的なリスクオンの環境に助けられた側面が大きかった。
しかし、2014年に入って外部環境の悪化が見られるので、これからますます注意しなければならない。
米テーパリングによる新興国の混乱を始め、中国景気減速によるダメージなどを考えると、2013年年末まで進行していた株高・円安に対する修正が今のレベルで留まるとは想定しにくい。
米ドル/円に関しては、一時103円台の回復も想定できるものの、ベア(下落)トレンドの継続で早晩100円大台の打診を覚悟すべきではないだろうか。日経平均についてもリバウンドがあれば、これからの嵐に備えて、手持ちの買いポジションを処理する好機と考えるべきだろう。
(出所:米国FXCM)
ちなみに、中国崩壊論については馬鹿馬鹿しくて論じている暇もないものの、成長減速の中、今年(2014年)は中国絡みのネガティブな材料も相当出やすいとみる。
日本株は、ある意味では本家の上海株より中国景気に敏感だから、気をつけたい。あぁ、そういえば、中国が近々崩壊云々という一方、日経平均が2015年に3万円と主張するセンセイもいるようだが、彼らに「一蓮托生」の意味を聞きたいところである。
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