■ミセス・ワタナベは今後ヘッジファンドの食い物に?
ところで、ミセス・ワタナベさんらの行動は気になる。調べによると、6月末まで、日本の個人投資家たちによる米ドル/円のロングポジションは総額2兆6580億円に達し、5月末の同1兆7620億円から大幅に増加していた。
そして、8つの主要外貨に対して、円のショートポジションは、総額3兆4400億円に達しており、円売り一筋の状況がわかる。
足元、米ドル/円が再度101円台をトライしているが、円売りポジションの総計は、やや減少といった状態に留まり、圧倒的な個人投資家は円安トレンドに確信を持っている様子もうかがえる。
ミセス・ワタナベらの力を根拠に、大手証券会社の為替チームは円安トレンドの継続といった予測を出しているが、筆者は逆の立場だ。
つまり、これからヘッジファンド勢が円買いを仕掛け、彼らに損切りを迫る局面を作り出すだろう。ミセス・ワタナベらのポジションを食い物にするというわけだ。
もはやアベノミクス相場ではない足元において、円売りポジションを無闇に積み上げる個人投資家が置かれる状況は、ウクライナ紛争地域の上空を通過する飛行機のようなもので、運試しの側面が大きい。
■ユーロ/円、米ドル/円の心理的節目はどこに?
繰り返しとなるが、危機意識と危機管理の欠如は、慢心と傲慢に起因していることが多いから、アベノミクス相場で儲かった個人投資家の多くはおごっているのではないかと、僭越ながら推測できる。ゆえに、いったんトレンドが逆転してくると、より大きな値動きを想定できるだろう。
この場合、前回も強調したように、米ドル/円より外せないのがユーロ/円のショートポジションである。
【参考記事】
●ポルトガル最大手銀行をめぐる信用不安!もっとショッキングな材料が出る可能性も…(2014年7月11日、陳満咲杜)
また、ユーロ/円の下落につられる形で、米ドル/円が下値を切り下げていくといった市況も十分想定できる。
ユーロ/米ドルに関しては、2013年11月8日(金)のコラムにて提示したチャートのとおりに動いているから、煩わしい説明はいらないと思うが、ユーロ/円の下値余地はユーロ/米ドルとリンクしているところを看過できない。
【参考記事】
●「ドラギ・ショック」と「米GDPショック」で波乱の相場!ドル/円の上放れは先送り?(2013年11月8日、陳満咲杜)
ユーロ/円の下値ターゲットは、やはり本コラムがたびたび提示してきたように、136円の節目割れをもって、132~133円に据えたい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足)
もちろん、それが最終ターゲット、といった意味合いでもないから、136円の節目割れがあれば、ロングポジションを保有するミセス・ワタナベらの楽観心理を圧迫する要素となろう。
同じような心理的な節目は、米ドル/円の場合はどこだろうか。2月や5月安値の100.75-80円は1つの節目で、わかりやすく言えば、100円の大台だろう。
■嵐はこれからやってくる!
円安トレンドは不変という楽観心理は、この節目割れがあれば、大きく修正されると予想できるのには、以下の2つの理由にある。
1.キリのいい節目で、マスコミに取り上げられやすい
2.この節目割れがあれば、前述の大手証券の為替チームも含め、多くの「専門家」は見通しを転向する可能性が大きい
言ってみれば、円安トレンド加速や株高継続への確信は、それ自体は群集心理であり、大した根拠を持たない。
アベノミクスの効果が過大評価されていることがあれば、外部要素の良さ(良すぎたと言える)に依存しているところが大きく、外部要素がこれからどんどん厳しくなるにつれ、同効果もよく検証されるだろう。
相場が行きすぎた分、修正を避けられないなら、嵐はこれからだ。
念のため、7月9日(水)に作成していた米ドル/円の「最新」チャートを掲載する。
自己責任でご参照を。
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