■ユーロ/米ドルは1.3000ドルの節目も視野に
この意味では、ユーロ/米ドルの下値余地は、たとえ中期スパンでも下方修正する必要に迫られる。前回のコラムにて提示した1.3300ドルの節目前後はもはや通過点となり、1.3000ドルの節目も視野に入ってこよう。ユーロ安というメイントレンドの大型化及び長期化を覚悟すべきだ。
【参考記事】
●PPP(購買力平価)で為替相場を検証!米ドル/円だけなくユーロ/円も100円割れ!?(2014年8月15日、陳満咲杜)
(出所:米国FXCM)
今晩(8月22日)のジャクソンホール会議にて、ドラギECB(欧州中央銀行)議長も講演するので、要注意だろう。
巷ではEU(欧州連合)のデフレ懸念を根拠に、EUの日本化、至ってかつての円高のようにユーロ高の長期化を論じる向きもあるが、実はむしろその逆であろう。
つまり、日本の前例があるからこそ、EUやECBはデフレ化を全力で阻止すべく、本格的な量的緩和に踏み切るだろう。米QE(量的緩和)策が終焉に向かい、日銀の次回量的緩和が不透明のなか、ECBが本格的な量的緩和に踏み切れば、強烈なユーロ安をもたらすだろう。繰り返しとなるが、ユーロ安はまだ始まったばかりだ。
■ユーロは、米ドルよりも円に対しての方が「割高」
ところで、EUの立場からみれば、ユーロの「割高」は対米ドルよりも、対円の方がはるかに大きい。前回のコラムにて提示したPPP(購買力平価)との乖離を見れば、一目瞭然だ。
【参考記事】
●PPP(購買力平価)で為替相場を検証!米ドル/円だけなくユーロ/円も100円割れ!?(2014年8月15日、陳満咲杜)
したがって、ユーロの一段安を導くには、対米ドルはもちろん、対円の下落が重要なテーマになってくるだろう。
実際、ECB主導で露骨な通貨安政策をすることは考えにくいが、相場自体の構造が優れた調整機能を持つなら、ユーロ/円におけるユーロ高・円安に対する修正は、これからが本番になるだろう。
(出所:米国FXCM)
ユーロ/円は136円の節目割れをもって下げ一服の兆しを示しているから、目先の目標達成感を漂わせる。しかし、前回のコラムでも指摘したように、ユーロ/円の反落波は長期化していく可能性が高く、今はそれが始まったばかりなので、136円割れ程度で円高調整が完了したという見方は短絡的すぎる。
【参考記事】
●PPP(購買力平価)で為替相場を検証!米ドル/円だけなくユーロ/円も100円割れ!?(2014年8月15日、陳満咲杜)
■米ドル/円はなおレンジ下放れの可能性に注目する
言うまでもないが、ユーロ/円を含め、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下げ一服、至って切り返しの継続は、米ドル/円の切り返しに依存している。
肝心の米ドル/円はブル(上昇)トレンドへ復帰したという見方が多いが、果たしてそうなったのだろうか。
2月以来、米ドル/円は100.80円から104.12円といった狭い変動範囲を記録してきた。足元、再度104円の節目に迫っているものの、基本的には同レンジを強化しており、大型保ち合いの打破とは言いにくい。
(出所:米国FXCM)
一方、この値幅3.5円にも満たない保ち合いが今月(8月)末まで続くなら、計8カ月にも及ぶから、少なくとも2000年以降にない長いレンジ変動となる。保ち合いが長ければ長いほど、その後の値幅を大きくさせる傾向から考えて、そろそろ大相場の到来を覚悟すべきだろう。
巷では米ドル/円の上放れに多大な期待が寄せられているが、筆者は現時点では、なお下放れの可能性に注目する。
前述のように、クロス円の動向が米ドル/円の値動きに依存しているなら、逆にクロス円の値動きが、これからの米ドル/円の行方に大きなヒントを与えてくれるだろう。このあたりの検証は、また次回。
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