■米ドル/円の本格的な調整には、10円以上の反落が必要
では、本格的な調整波とは何か。一義的に定義するのは難しいが、「史上最安値を起点として、足元まで続く米ドル/円の上昇波にはない下落幅を有する反落」といった言い方ならば、それなりの確実性を持つだろう。
となると、今までもっとも大きな反落は2013年5月高値103.73円から同6月安値93.78円までの下げ幅(約9.95円)だったので、少なくとも10円超の反落なしでは本格的な調整とは言えないだろう。
(出所:米国FXCM)
言い換えれば、2011年10月末の史上最安値から、米ドル/円はほぼ本格的な調整なしで高値更新してきたから、目先の高値更新をもってさらなる上値ターゲットにシフトしていくよりも、これを行き過ぎのサインとして受け止めるほうが無難ということだ。
そもそも、相場は行き過ぎに重ねてまた行き過ぎになった場合、そこには何らかの周知された材料を重ねているケースが多い。
円安については、日銀の追加緩和とか、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)改革による株買い、外貨資産購入に伴う円売り効果などへの期待がからむ。
ユーロ安、英ポンド安に関しては、前者は「予想外」の利下げやQE(量的緩和策)観測、後者はスコットランド独立疑惑などの材料がからんでくるだろう。
■周知の材料は短期スパンでは織り込み済みの可能性大
ところで、こういった周知の材料は、中長期的にはともかくとして、短期スパンにおいてはマーケットに浸透すればするほど、すでに織り込んだ疑いが濃厚だから、行き過ぎたトレンドも、早晩修正されるだろう。
米ドル/円の場合も、GPIF改革にしても、日銀の追加緩和にしても、目先のレートにだいぶ織り込まれており、ユーロ/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向を見る限り、円独歩安となるのはかなり難しいのではないかとみる。
ユーロ/円と米ドル/円は、ともに2014年年初にていったん高値をつけていたが、足元では米ドル/円は高値を更新しているが、ユーロ/円は8月につけた安値を割ろうとしている。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
■ユーロ/米ドルは2017年にパリティ割れを目指す公算大
こういった「ダイバージェンス」自体も円安の限界を示しているだろう。どちらが「ホンモノ」か、と聞かれると、ユーロ/円の値動きが素直で、円全体の行き先を示唆しているのではないかと思う。
何しろ、本コラムがたびたび指摘してきたように、ユーロ安はホンモノで、中長期スパンではベア(下落)トレンドへの展開はむしろこれからだ。
【参考記事】
●ユーロ上昇なら年内最後の売り好機か。ユーロ/円は10円幅の下落も覚悟せよ!(4月25日、陳満咲杜)
●ユーロのトップアウトがもたらす全面円高。杞憂ではなく相場の「天」は時に落ちる!(5月9日、陳満咲杜)
●PPP(購買力平価)で為替相場を検証! 米ドル/円だけなくユーロ/円も100円割れ!?(8月15日、陳満咲杜)
2017年の安値に向け、ユーロ/米ドルは雄大なベアトレンドを推進し、パリティ割れを目指す公算が大きい。
【参考記事】
●第2次安倍内閣誕生でアベノミクス第2幕スタート! 米ドル/円は108円台濃厚!!(9月4日、西原宏一)
(出所:米国FXCM)
ゆえに、ユーロ/円の下値余地も大きく、ユーロ/米ドルとユーロ/円の「割高」度は、なおユーロ/円のほうが大きいから、ユーロ高の解消は、これから対米ドルのみでなく、対円のほうがメイントレンドとして浮上しよう。
こういった環境の中、米ドル/円の高値余地限定といった判断は、やはりそれなりの妥当性を持つと思う。
■ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルは目先反発しやすい
最後に、昨日(9月4日)の急落を経て、目先、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルはともに売られすぎの状況にあり、今夜(9月5日)の米雇用統計の結果と関係なく、目先は下値限定、至って反発しやすいとみる。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
米ドル/円の高値追いを避けたいのと同様、目先、ユーロ/米ドルの安値追いも避けたい。市況はいかに。
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