■円高トレンドはいよいよ第2段階へ
株安・円高がセットで進行している。
こう言っても、今まではもっぱら日本株安や米ドル/円における円高を指した言い方であったが、すでに変化の兆しが出ている。
米国株にはITやハイテク株の急落が目立ち、これは株全体のトップアウトを示すサインとしてとらえられる。為替では、円高のトレンドがいよいよ第2段階に入り、円高の進行があるならば、むしろこれからではないかとみる。
ドルインデックスで見る為替相場は、先週末(5月2日)、米雇用統計後の急落と昨日(5月8日)の反騰が目立つ。
(出所:米国FXCM)
先週末(5月2日)の米雇用統計は良かったにもかかわらず、米ドル全体が急落したことに関して、すでに多くの解釈(その多くは事後解釈の典型であった)が出回っているので、ここでは詳説を省くが、昨日(5月8日)のドルインデックスの反騰に関して、大きく取り上げてみたい。
なぜなら、昨日(5月8日)のドルインデックスの反騰がホンモノであれば、ユーロ/米ドルのトップアウトを示唆するサインとなり、ユーロ安をもってユーロ/円の反落につながれば、円高トレンドも加速されるわけだからだ。
円高トレンドの第2段階は、言うまでもないが、米ドル/円のみでなく、ユーロ/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も揃って円高に振れる市況にほかあるまい。
もっとも、ユーロ/米ドルはドルインデックスの対極として位置づけられ、ユーロ/米ドルのトップアウトの有無をもってドルインデックス底打ちの有無も測れる。
■ドラギ氏の発言が市場関係者に覚悟を決めさせた
昨日(5月8日)、1.4ドルの節目手前から失速したユーロ/米ドルは、ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の発言を織り込む形でトップアウトの兆しを示し、前々回の本コラム(4月25日)で指摘したように、「ユーロ上昇なら年内最後の売り好機」を提供してくれたわけだ。
【参考記事】
●ユーロ上昇なら年内最後の売り好機か。ユーロ/円は10円幅の下落も覚悟せよ!(2014年4月25日、陳満咲杜)
ECBは金利政策を据え置いているものの、ドラギ総裁は6月にもさらなる緩和策に踏み切る用意があると明言した。
ドラギ総裁の発言が効く形でユーロの反落をもたらしたが、効いてくるのにはわけがあった。それは他ならぬ、マーケット関係者が2012年7月の同総裁による「ユーロを守る」発言の記憶を喚起されたからに違いない。
【参考記事】
●ドラギ総裁発言でユーロが激しく上昇!平凡な発言内容になぜ激しく反応した?(2012年7月27日、陳満咲杜)
何しろ、ユーロ/米ドルは2012年7月安値から上昇してきたわけで、その背景にはドラギ氏の有言実行があった。ECBは2012年7月に利下げ敢行、2012年9月には国債無制限買い取りに踏み切った。当時はEU(欧州連合)ソブリン危機でユーロ安に対抗する必要があったのと同じく、今はECBがユーロ高を阻止する必要がある。
ドラギ総裁はすでに明言したように、ユーロ高を阻止するために本格的なQE(量的緩和)策を用意しており、昨日(5月8日)、ついにその実施時期を明らかにしたわけだ。
換言すれば、昨日(5月8日)、ドラギ氏からはもっとも厳しいメッセージが発せられており、そのメッセージをなめるのはいけないと市場関係者は覚悟したわけである。
ゆえに、ユーロ/米ドルの2012年7月安値を起点とした上昇波は、すでにトップアウトしたか、近々トップアウトするといった見方が強化され、昨日(5月8日)の値動きから考えると、すでにトップアウトした公算が一段と大きくなったとみる。
■ユーロ/米ドルのRSIの弱気ダイバージェンスは一段と進行
前述のファンダメンタルズ的な理由以外に、やはりテクニカルの視点が重要だ。その視点をもって、ユーロ/米ドルのサインを探ってみよう。
(出所:米国FXCM)
まず、ユーロ/米ドルの週足で測る「上昇ウェッジ」型の抵抗ラインやRSIの弱気ダイバージェンスは、4月25日(金)のコラムで指摘したとおり、一段と証左されており、反落の可能性が増大している。
【参考記事】
●ユーロ上昇なら年内最後の売り好機か。ユーロ/円は10円幅の下落も覚悟せよ!(2014年4月25日、陳満咲杜)
次に、プライスアクションの視点からみると…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)