■材料があるのに市場が膠着状態になっている理由とは?
マーケットは膠着状態になっている。利上げ観測が後退している豪ドルの反落がやや目立つほかは、メイン通貨ペアのほとんどが狭いレンジ変動に留まり、ブレイク待ちの様相を深めている。

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とはいえ、材料がないから相場が動かない、というわけでもない。
地政学的にはウクライナ情勢がむしろ悪化しており、金融政策ではECB(欧州中央銀行)がQE(量的緩和策)に踏み込むかどうかが気になる。日本でも、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定交渉)の行方が注目され、本日(4月25日)発表された東京都4月CPI(消費者物価指数)は22年ぶりの高さを示しているから、話題はたっぷりある。
しかし、なぜか相場が動かない。レンジ変動というより、行って来いといった表現が相応しいほど、ややランダムな値動きをもって上下しているのが最近の相場の特徴だ。
原因はいろいろあるが、大きな背景として、本コラムが指摘したように、VIX指数(恐怖指数)に見られる「リスクオンの硬直化」がもっともわかりやすいのではないかと思う。
最近のVIX指数は13前半の水準に留まり、長いスパンで見てもかなり低いレベルであることは、以前本コラムで述べたとおり。ゆえに、相場が動かないのもその流れの一環で、仕方がないと言えばそれまでだ。
【参考記事】
●RSIのシグナルを見るとユーロ/円は最大8円ほど大きく下落する可能性あり!(2014年3月28日、陳満咲杜)
(出所:CQG)
■「緩和」という大前提が後退しつつあり、株安・円高継続か
一方、逆説的ではあるが、歴史的にみても低い水準に留まったVIX指数がこのまま硬直化をずっと継続していくとも考えにくい。何らかのきっかけをもって硬直化の打破を図る場合、下げる余地があまりないため、上放れしかないことも明白である。つまり、リスクオフはこれからである。
その上、リスクオンの極限化、硬直化にもかかわらず、日経平均と米ドル/円のパフォーマンスは、2014年年初からともに芳しくなかったから、リスクオンからリスクオフに転換していく場合、双方とも下値余地を拡大していくだろう。
その上、株にしても為替にして、強気観測の大前提が段々崩れているから、なおさら下値打診の可能性が高まっているとみる。
その大前提は他ならぬ、相場の本音である「緩和頼み」である。たびたび指摘してきたように、アベノミクスが成功するかどうかは定かでないが、少なくとも目下、日銀政策が順調に効いている模様で、前述の東京都CPIの高騰は証左材料となる。
「いや、違う。あれは消費税増税がもたらした押し上げ効果にすぎない」といった反論も承知している。しかし、重要なのは原因ではなく結果であるから、少なくとも目先の結果を見る限り、日銀総裁の黒田さんが言う「躊躇なく緩和」の必要性は、ずいぶん後退したのではないかと思う。
言い換えれば、株高・円安の大前提が剥落していく公算が大きいから、緩和頼みの心理は、一段としぼんでいくはずである。
ゆえに、2014年年初来続いている株安・円高の流れはこれからも続くし、日経平均と米ドル/円が、それぞれ1万3500円や100円の大台を割り込む局面を想定しておいたほうが無難であろう。
■RSIのシグナルからユーロ/米ドルの下落を予測
ところで、円高の進行は、ユーロ/円などクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下値打診なしではモメンタムが限定され、ユーロ/円の動向は、ユーロ/米ドル次第といった話は、前回のコラムで述べたとおり。
【参考記事】
●「ドラギ・ショック」再現の可能性大!ウサギちゃんのGPIFに改革は難しい!(2014年4月18日、陳満咲杜)
前回のコラムでは、ユーロの頭打ち、至って反落の可能性をファンダメンタルズの視点をもってみてきたが、今回はテクニカルの視点をもって測りたい。
(出所:米国FXCM)
ユーロ/米ドルの週足では、RSIの弱気ダイバージェンスが昨年(2013年)10月後半から構築され、現在まで続き、煮詰まりつつある状況が一目瞭然である。
この弱気シグナルが効いてくるかどうは、これからRSIが50のレベルを割り込むかどうかによって測れることは、以前本コラムで日経平均と米ドル/円の例をもって説明したが、その前兆についても触れておきたい。
【参考記事】
●米国株バブル崩壊のシグナル点灯!日本株は暴落か。ドル/円は100円割れへ(2014年4月11日、陳満咲杜)
経験上、RSIのシグナルと一番相性が良いのは、値動きのフォーメーションである。言い換えれば、反落の確率が高いフォーメーションが形成されると同時に、RSIも弱気シグナルを点灯すれば、反落の可能性が高いわけだ。
上のチャートを見る限り、ユーロ/米ドルは大型上昇ウェッジというフォーメーションを形成しており、今はその最終段階にあることがわかる。ウェッジ型が示す方向は、確率的には名前と逆方向なので(つまり、上昇ウェッジなら下、下落ウェッジなら上)、ユーロ/米ドルは上昇より下落の公算が大きいとみる。
■ユーロ/米ドル、ユーロ/円とも上放れは「売りの好機」
ただし、前述の大型上昇ウェッジの抵抗ラインを見る限り、反落的な下落前に、再度1.4ドルの節目を試す場合もあり得る。しかし、それがあっても、ユーロ高の最終局面といった判断は不変で、高値打診があれば、むしろ絶好の売り場と見なされる。
したがって、現在ユーロ/円が示すトライアングル型フォーメーションに関して、巷では上放れの観測が多いなか、筆者は前述の理由から上放れより下放れの可能性が高いとみる。
(出所:米国FXCM)
下放れがあれば、2013年1月から構築されてきたRSIの弱気ダイバージェンスがいよいよ効いてくるわけで、再度10円程度の値幅を覚悟すべきではないか。
もちろん、ユーロ/米ドルの1.4ドルの節目打診が再度あれば、ユーロ/円もいくぶん上放れの余地を拓く見通しだが、それでも2013年年末高値の更新は難しいと思う。
ユーロ/米ドルと同様、一時的な上放れがあれば、2014年内最後の売り好機とみる。市況はいかに。
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