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スイス中銀の防衛ライン1.2フランに超接近!
ユーロ/スイスフランはなぜ下落している?

2014年11月21日(金)18:24公開 (2014年11月21日(金)18:24更新)
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ザイFX!では読者の皆様へ簡単なアンケート調査を行なっております。お手数おかけしますがご協力をお願いいたします!!

SNBの防衛ラインに接近するユーロ/スイスフラン

ユーロ/スイスフランの下落が止まらない。SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が「これ以上はスイスフラン高を進ませない」と設定した防衛ラインである1.2000フランに接近している。

【参考チャート】
FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 日足

ユーロ/スイスフラン 日足

(出所:米国FXCM

 当コーナーでは2014年9月にも、ユーロ/スイスフランに注目した記事を公開しているが、その時のユーロ/スイスフランは1.2040フラン近辺だった。直近は、その水準を下抜け、1.2010フラン近辺まで下落しており、SNBの防衛ラインにさらに接近している。

【参考記事】
【警戒】スイス中銀の防衛ラインに接近! ユーロ/スイスフランを取引できる口座は?

 SNBはリセッションとデフレを回避するため、2011年9月6日にスイスフランの対ユーロレート(ユーロ/スイスフラン)の下限(ユーロ安・スイスフラン高)を1ユーロ=1.2000フランに設定した。そして、これを割りそうになった場合、あるいはそこを割り込んだ場合は無制限の市場介入を行うと発表した。同日には、実際に大規模なスイスフラン売り介入も実施している。

【参考チャート】
FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 月足

ユーロ/スイスフラン 月足

(出所:米国FXCM

 現在、ユーロ/スイスフランはその警戒水準に近づいているということなのだ。

【参考記事】
JPモルガン・佐々木融さんに聞く(6)スイス中銀の介入が成功と言うには早い
ヘッジファンド出身のスイス中銀総裁が宣戦布告! 日本の再介入はあるか?(2011年9月8日、西原宏一)
為替介入で大暴落したスイスフラン! 大損失を被った個人トレーダーも!?(2011年9月9日)

 では、SNBの無制限でのスイスフラン売り介入の方針があるにもかかわらず、ユーロ/スイスフランが下落しているのはなぜなのか?

ユーロとスイスフランのそれぞれの事情とは?

 そこで、ユーロ/スイスフランの今後の見通しやトレード戦略について、みずほ証券投資情報部のチーフFXストラテジスト・鈴木健吾さんに話を聞いた。

 ユーロとスイスフラン、それぞれの事情を鈴木さんは解説してくれた。まず、ユーロについては次のとおりだ。

 「現状のユーロ圏の景気とインフレ率を上げようと思っても、ユーロ圏は1つの国ではなく、地域なので、意思統一がなかなかうまくいきません。

 そうなると、真っ先にできることは通貨(ユーロ)安ですから、もちろん公表はされていませんが、そのことをECBが容認している節があります。そういった中で、対スイスフランでもユーロ安が進むという流れになってしまっています」

 ユーロ/スイスフラン下落の最大の要因としてECBのユーロ安容認を挙げる鈴木さんだが、スイス側の材料として、11月30日(日)に実施予定のSNBの金準備に関する国民投票についても聞いてみた。

「スイスの金を救え」をスローガンとする国民投票とは?

 SNBが保有している金(ゴールド)はこのところ年々減っている。SNBの金準備の推移を見ると、SNBの総資産に占める割合は最高で30%超あったが、2008年には20%、現在では7.7%まで低下している。

 そうしたことを受けて、今回の国民投票では、連邦憲法改正を伴う、以下の3つの提案の賛否が問われることになっている。

(1)SNBは金準備を売却しない
(2)SNBは金準備をスイス国内に保管する
(3)SNBの総資産の少なくとも20%を金準備とする

 仮にSNBの金準備を20%以上に引き上げるためには、およそ2530トン以上が必要で、現在の金準備1040トンに加えて、およそ1490トンの金を追加購入する必要があるとの見方もある。

 「永世中立国であるスイスが金を買うというのは良いことです。ただ、仮に国民投票が可決されても、さらにスイスの州の過半数の賛成も必要になるので、実際にこれが実現されるのはハードルが高いと思います。

 仮にSNBが金を購入するとした場合、金を買うためにSNBが紙幣を増刷する可能性があります。すでに刷ってある紙幣で買うとは限らず、新たに刷って量的緩和的なことをセットにしてくる可能性もありそうなのです」

 スイスの連邦政府やSNBが憲法改正に明確に反対しているので、仮に国民投票で賛成されても実現する可能性は低そうだが、スイスフランの動きにも大きく影響しそうなイベントだけに、チェックしておきたいところだ。

SNBは防衛ラインを意地でも死守?

 では、ユーロ/スイスフランが1.2000フラン割れとなる可能性はあるのだろうか?

 ユーロ安・スイスフラン高要因がある中でも、SNBがスイスフラン売りの無制限介入の方針を維持している限り、ユーロ/スイスフランの1.2000フランは死守されるのではないかと鈴木さんは話す。

 「まず、SNBは対ユーロでのスイスフランを1.2000フランで防衛するとの方針を維持しています。そして、自国通貨(スイスフラン)高阻止なのでSNBの意向を反映しやすい。言ってしまえば、紙幣を刷ればいいだけということだからです。

 さらに、日本の場合は為替介入の権利は財務省が持っていて、それを日銀が仲介するという形になっていますが、スイスの場合はSNBが為替介入の権利も持っているので、SNBの判断で紙幣を刷って、スイスフラン売り介入することが可能です。そういった意味でも強力に通貨高を止めることができます」

自国通貨売り(今回の場合はスイスフラン売り)介入は、理論的には輪転機を回して紙幣を発行すれば無制限に行うことができる。一方、その逆の外貨売り介入は、外貨準備として、その国が持っているその外貨の量までしか行うことができない。

【参考記事】
JPモルガン・佐々木融さんに聞く(6)スイス中銀の介入が成功と言うには早い

 「ユーロ/スイスフランが1.2000フランを割り込むと投機的な売りが入ってきてやっかいなことになるので、SNBとしては防衛ラインの1.2000フランを死守してくるのではないでしょうか」

【参考チャート】
FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 日足

ユーロ/スイスフラン 日足

(出所:米国FXCM

 鈴木さんは、ユーロ/スイスフランの1.2000フランは死守されるとの見方だが、ここから、ユーロ/スイスフランをトレードしていくにはどうしたらいいのだろうか?

ユーロ/スイスフランのトレード戦略は?

 鈴木さんは、現在はFXストラテジストという肩書きだが、金融機関の中で自己裁量でトレードをする「プロップディーラー」として10年以上の経験を持つ、プロ中のプロ。

【参考記事】
元プロップディーラーの2015年為替予想。米ドル/円は125円へ! 高金利通貨も注目

 そんな、鈴木さんにユーロ/スイスフランのトレード戦略について聞いてみた。

 「ユーロ/スイスフランは、SNBが1.2000フランを防衛する方針を維持する限り、1.2000フランの20~30pips下にストップロスを置きながら、1.2000フランぎりぎりのところを買っていく方法が良いのではないでしょうか。

 1.2000フランぎりぎりの水準で買うことにより、損失を限定しながらポジションを持つことができます

 現状、ユーロ安・スイスフラン高なのでトレンドに逆らうことになるのは気になりますが、1.2000フラン防衛はSNBが言っていることなので、そこは信じるしかないでしょう」

【参考チャート】
FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 日足

ユーロ/スイスフラン 日足

(出所:米国FXCM

1.2000フランを割り込んでしまったときはどうトレードする?

 確かに、SNBがユーロ/スイスフランの1.2000フラン防衛の方針を維持している限り、そこに賭けてみてもいいのかもしれない。一方、鈴木さんはリスクシナリオとして1.2000フランを割り込んでしまった場合のトレード戦略についても話してくれた。

 「仮にユーロ/スイスフランが1.2000フランを割り込んでしまった場合、ストップをつけて急落したところを買うのはアリかもしれません。

 1.2000フランを割り込んだ場合、再び1.2000フランに戻してくるか、そのまま放置されるのかは判断が難しいのですが、現状でのSNBのスタンスなどを考えると、それなりの手を打ってくると考えるからです。

 ただし、1.2000フランを割った段階でSNBが再び1.2000フランを死守すると言っても、SNBに対する市場の信認が低下してしまっている可能性がありますので、素直にユーロ高・スイスフラン安とはならないこともあり得ます」

【参考チャート】
FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 日足

ユーロ/スイスフラン 日足

(出所:米国FXCM

 こちらは鈴木さんの中ではリスクシナリオということだが、ユーロ/スイスフランが1.2000フランを割り込んだ場合の戦略の1つとして検討してみてはどうだろう。

ユーロ/スイスフランが取引できるFX会社は?

 実際にユーロ/スイスフランを取引しようと思っても、これはややマイナーな通貨ペア。どこのFX会社でも取引できるというわけではない。

 そこで、以下の表に、主要FX口座のユーロ/スイスフラン取り扱い状況とスプレッドをまとめたので、ご覧いただきたい(シストレ口座など、特殊な口座は省き、一般的な店頭FX口座に絞ってまとめた)。

主要FX口座の「ユーロ/スイスフラン」スプレッドを比較(2014年11月21日現在)

(※)スプレッドはすべて、例外あり。

 ユーロ/スイスフランの取引をしたい人は、ユーロ/スイスフランが1.8pipsのスプレッドで取引できるGMOクリック証券「FXネオ」YJFX!「外貨ex」DMM.com証券「DMM FX」ヒロセ通商「LION FX」JFX「MATRIX TRADER」セントラル短資FX「FXダイレクトプラスなどに口座を開いてみてはどうだろうか。

 ちなみに、ユーロ/スイスフランを取り扱うFX会社の中で、セントラル短資FXでは、以下のとおり、SNBが設定する1.2000フランの防衛ラインに接近したことを受けて、ウェブサイト上で注意喚起を行っている。

 今後、ユーロ/スイスフランを取引しようと思われている方は、適切なストップロスを入れるなど、リスク管理をしっかりしながらトレードに臨むことをオススメしたい。

(ザイFX!編集部・庄司正高)


 本記事公開後、2015年1月にSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])はユーロ/スイスフランに設定した1ユーロ=1.20フランの防衛ラインを突然、撤廃する事態となり、相場は大荒れとなりました(ザイFX!編集部)。

 詳しくは以下の記事をご覧ください。

【参考記事】
ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!(2015年1月15日)

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