■ECBの大規模QEが各国の中央銀行の政策に影響
この、ECBの大規模QEの影響は、SNBのみならず、各国の中央銀行の政策に大きな影響を与えています。
まず、ECBのQE前ですが、1月21日(水)にBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])が緊急利下げを発表。政策金利を1.00%から0.75%に変更しました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
その背景は急激な原油安と言われていますが、今回のECBによる大規模QEが大きく影を落としていると言えます。
【参考記事】
●通貨安戦争からスイス脱落、カナダ参戦! ECBのQEが予想どおりならユーロ反発も(1月22日、西原宏一)
加えて、デンマーク中銀も緊急利下げを発表しており、ECBによるQEが、各国中銀に大きな影響を与え、次々と利下げを発表する動きとなっています。
昨年(2014年)は日銀の異次元緩和によって、米ドル/円がマーケットの主役でしたが、2015年はECBの大規模QEにより、ユーロ/米ドルがマーケットの主役になっています。
【参考記事】
●「黒田バズーカ2」が炸裂! 米ドル/円は短期でも中期でも買い! サポートは110円(2014年11月4日、西原宏一&松崎美子)
■ギリシャ総選挙は「反緊縮」の急進左派連合が大勝
ECBのQEに加えてユーロ安を加速させたのが、1月25日(日)のギリシャ総選挙。注目のギリシャ総選挙では、急進左派連合(Syriza、シリザ)が大勝。
【参考記事】
●ECBのQEとギリシャ総選挙が終了。ユーロは一旦買戻し後に1.08ドルへ下落か(1月27日、西原宏一&松崎美子)
●ギリシャは借金を踏み倒すのか!? 反緊縮派・急進左派連合圧勝でユーロ急落
これにより、ギリシャ政府による債務踏み倒しの可能性が高まります。現在、ギリシャの債務は巨大なものではありませんが、シリザがEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)による協調融資団(トロイカ)からの債務を踏み倒す可能性が高まれば、今後、スペインやポルトガルに波及することをマーケットは懸念しているわけです。
スペインとポルトガルは2015年に総選挙を控えていますので、シリザのこれからの動向にも、マーケットの注目が集まっています。なお、スペインの総選挙は12月20日かそれ以前、ポルトガルは9月20日(日)~10月11日(日)の予定です。
【参考記事】
●ECBのQEとギリシャ総選挙が終了。ユーロは一旦買戻し後に1.08ドルへ下落か(1月27日、西原宏一&松崎美子)
ECBとギリシャ総選挙という2大イベントをこなしたユーロ/米ドルは、イベント終了後、いったん調整局面入りしています。
ただし、ユーロを取り巻く環境はさらに悪化しており、調整局面は、ユーロ/米ドルの戻り売りの好機となるのではないでしょうか?
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
■通貨安戦争勃発の中、米国の対応に注目
ゴールドマン・サックスのCOO(最高執行責任者)、ゲーリー・コーン氏は「世界は通貨戦争のさなかにある」と発言。日銀の異次元緩和も、今回のECBによるQEも、事実上は自国通貨を下落させることを主眼としています。
また、オーストラリアやニュージーランドも口先介入を繰り返して、自国通貨安を誘因し、通貨安戦争になりつつあります。
こうした中、通貨高を一手に引き受けているのが米国です。現在、FRBの議長を務めているのは、前議長のバーナンキ氏よりハト派であるイエレン氏。
ただでさえ低いインフレ率をさらにデフレ方向に誘因する米ドル高を、イエレン議長がいつまでも容認するとは考えにくいわけです。
そのため、圧倒的な下落基調にあるユーロ安に対する唯一の懸念は、米国の動向となります。
米国は、1月22日(木)のECBによる大規模QEを容認していること、加えて、29日(木)のFOMCでは、依然としてタカ派トーンでしたので、現時点でのユーロ/米ドル下落はFRB(米連邦準備制度理事会)の許容範囲のようです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
ただ、グローバルな通貨安競争が勃発する中、唯一通貨高を受け入れている米国当局の今後の動向には要注意です。
繰り返しになりますが、2015年の主役は…
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