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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

ドラギマジック炸裂! ECBが予想以上の
オープンエンドQEを決定してユーロ急落!

2015年01月29日(木)18:42公開 (2015年01月29日(木)18:42更新)
西原宏一

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■ドラギマジック炸裂! ECBがオープンエンドQEを決定

 みなさん、こんにちは。

 世界中から注目されたECB(欧州中央銀行)理事会が1月22日(木)に開催されました。結果は、周到にQE(量的緩和策)への計画を進めてきたドラギECB総裁の大勝利。

【参考記事】
ECBのQEとギリシャ総選挙が終了。ユーロは一旦買戻し後に1.08ドルへ下落か(1月27日、西原宏一&松崎美子)

 ドラギ総裁は市場予想を大きく超えるQEを発表。まず、月額600億ユーロの国債購入を決定。期間は2015年3月より2016年9月までの19カ月間。これにより、19カ月間で1兆1400億ユーロの国債購入が決定されたわけです。

1月22日(木)に開催されたECB理事会で、期限を定めないオープンエンドのQEを決定。これがマーケットにサプライズを与え、ユーロは急落した。

 ドラギ総裁自身が認めていますが、懸念はQE発表と同時にバイ・ザ・ファクト(Buy The Fact)でユーロが反発すること。

 今回、ECBによるQEが発表されましたが、その1週間前、1月15日(木)にSNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])がユーロ/スイスフランの下限を撤廃したことで、マーケットはQEの開始を織りこみはじめ、ユーロ/米ドルはすでに1.15ドルレベルまで急落していました。

 QEはある意味、通貨安政策ですので、発表後、ユーロが反発するのを食い止める必要があります。そこで、ECBは月額500億ユーロでの量的緩和という情報を事前にリークさせます。その上で、実際は月額600億ユーロと発表。

 これはマーケットにサプライズを起こしてユーロの下落を継続させようという工夫が随所に見られるやり方であり、ドラギ総裁のこの政策に懸ける意気込みを感じます。

 そして、マーケットに一番のサプライズを与えたのが、このQEが、期限の定めのない、オープンエンドだったという点です。

 つまり、インフレ目標達成のために、必要であれば、無期限に実施するということ。これを、マーケットは驚きをもって迎えました。

■ECBのQE発表を受け、ユーロ/米ドルは1.11ドル割れ

 この発表を受け、ユーロ/米ドルは節目であった、1.1400~1.1500ドルを割り込み、1.1100ドル割れまで急落しました。安値は1.1098ドル。

ユーロ/米ドル 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 4時間足

 また、ユーロ/円は、130.00円割れ目前の130.15円まで急落しました。

ユーロ/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 4時間足

 ユーロ/米ドルは、2015年年初の1.21ドルから1.11ドルまで、約1000pips、ユーロ/円にいたっては、146円から130円まで約16円の大暴落となります。

ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

ユーロ/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足

 今回のECBの発表により、SNBが3年半に渡って執拗に守ってきた、ユーロ/スイスフランのマジノ線(※)(=1.2000フラン)を断念したのもうなずけます。

(※編集部注:「マジノ線」とは第二次世界大戦前にフランスがドイツとの国境に築いた難攻不落と言われた要塞のこと)

【参考記事】
ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!
ECBのQE実施の可能性はほぼ100%に! 注目すべきは規模とドラギ総裁の本気度!(1月27日、西原宏一&松崎美子)

 ECBがこれだけの大規模QEを導入すれば、SNBがどれだけ介入しても、結局はマジノ線が決壊してしまうからです。

■ECBの大規模QEが各国の中央銀行の政策に影響

 この、ECBの大規模QEの影響は、SNBのみならず、各国の中央銀行の政策に大きな影響を与えています。

 まず、ECBのQE前ですが、1月21日(水)にBOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])が緊急利下げを発表。政策金利を1.00%から0.75%に変更しました。

カナダ政策金利

(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移

 その背景は急激な原油安と言われていますが、今回のECBによる大規模QEが大きく影を落としていると言えます。

【参考記事】
通貨安戦争からスイス脱落、カナダ参戦! ECBのQEが予想どおりならユーロ反発も(1月22日、西原宏一)

 加えて、デンマーク中銀も緊急利下げを発表しており、ECBによるQEが、各国中銀に大きな影響を与え、次々と利下げを発表する動きとなっています。

 昨年(2014年)は日銀の異次元緩和によって、米ドル/円がマーケットの主役でしたが、2015年はECBの大規模QEにより、ユーロ/米ドルがマーケットの主役になっています。

【参考記事】
「黒田バズーカ2」が炸裂! 米ドル/円は短期でも中期でも買い! サポートは110円(2014年11月4日、西原宏一&松崎美子)

■ギリシャ総選挙は「反緊縮」の急進左派連合が大勝

 ECBのQEに加えてユーロ安を加速させたのが、1月25日(日)のギリシャ総選挙。注目のギリシャ総選挙では、急進左派連合(Syriza、シリザ)が大勝。

【参考記事】
ECBのQEとギリシャ総選挙が終了。ユーロは一旦買戻し後に1.08ドルへ下落か(1月27日、西原宏一&松崎美子)
ギリシャは借金を踏み倒すのか!? 反緊縮派・急進左派連合圧勝でユーロ急落

 これにより、ギリシャ政府による債務踏み倒しの可能性が高まります。現在、ギリシャの債務は巨大なものではありませんが、シリザがEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)による協調融資団(トロイカ)からの債務を踏み倒す可能性が高まれば、今後、スペインやポルトガルに波及することをマーケットは懸念しているわけです。

 スペインとポルトガルは2015年に総選挙を控えていますので、シリザのこれからの動向にも、マーケットの注目が集まっています。なお、スペインの総選挙は12月20日かそれ以前、ポルトガルは9月20日(日)~10月11日(日)の予定です。

【参考記事】
ECBのQEとギリシャ総選挙が終了。ユーロは一旦買戻し後に1.08ドルへ下落か(1月27日、西原宏一&松崎美子)

 ECBとギリシャ総選挙という2大イベントをこなしたユーロ/米ドルは、イベント終了後、いったん調整局面入りしています。

 ただし、ユーロを取り巻く環境はさらに悪化しており、調整局面は、ユーロ/米ドルの戻り売りの好機となるのではないでしょうか?

ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

■通貨安戦争勃発の中、米国の対応に注目

 ゴールドマン・サックスのCOO(最高執行責任者)、ゲーリー・コーン氏は「世界は通貨戦争のさなかにある」と発言。日銀の異次元緩和も、今回のECBによるQEも、事実上は自国通貨を下落させることを主眼としています。

 また、オーストラリアやニュージーランドも口先介入を繰り返して、自国通貨安を誘因し、通貨安戦争になりつつあります。

 こうした中、通貨高を一手に引き受けているのが米国です。現在、FRBの議長を務めているのは、前議長のバーナンキ氏よりハト派であるイエレン氏。

ただでさえ低いインフレ率をさらにデフレ方向に誘因する米ドル高を、イエレン議長がいつまでも容認するとは考えにくいわけです。

 そのため、圧倒的な下落基調にあるユーロ安に対する唯一の懸念は、米国の動向となります。

 米国は、1月22日(木)のECBによる大規模QEを容認していること、加えて、29日(木)のFOMCでは、依然としてタカ派トーンでしたので、現時点でのユーロ/米ドル下落はFRB(米連邦準備制度理事会)の許容範囲のようです。

ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

 ただ、グローバルな通貨安競争が勃発する中、唯一通貨高を受け入れている米国当局の今後の動向には要注意です。

■ユーロ/円が暴落する中、米ドル/円は異様な耐性をみせる

 繰り返しになりますが、2015年の主役は、米ドル/円ではなくユーロ。

ユーロVS世界の通貨 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 週足

 対円でもユーロの下落はすさまじく、2014年12月のユーロ/円の高値は149.78円ですので、2カ月足らずの間に、約20円暴落しています。

ユーロ/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/円 日足

 注目すべきは、ユーロ/円が約20円も暴落するなか、米ドル/円での円高は極めて限定的で、本稿執筆時点でも117円台ミドルで推移。

米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 ユーロ安がユーロ/米ドルに集中しているだけだと片付けてしまうのは簡単ですが、ユーロ/円が短期間で約20円も暴落すると、通常、米ドル/円はもとより、日経平均も暴落します。

 しかし、今回の日経平均は1万7600円の高値圏で推移。

日経平均 日足

(出所:株マップ.com

 株が堅調である理由は、多くの中央銀行が金融緩和政策を取っているからなのですが、それを考慮しても、この日経平均と米ドル/円の底堅さには驚かされます。

 特に、日経平均は米国株が反落しても追随せず、高値圏で推移していることが多くのマーケット参加者にサプライズを与えています。

■2015年に入りGPIFの「株買い・円売り」の規模拡大か

 この背景には、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の動向が影響していると言われています。

 2015年1月に入ってからの東京市場では、毎日のように、GPIFの日本株買い、米ドル/円の買いというウワサが流れています。

 昨年(2014年)後半からGPIFは、「株買い・円売り」に出ていた模様ですが、2015年1月に入って、その売買規模が大きくなっているようです。

 これが、ユーロ/円下落による米ドル/円下落の幅を大きく緩和させているようです。

米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 逆にいえば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)での円高圧力が弱まれば、米ドル/円は上値をブレイクして、再度、円安のメイントレンドに戻る可能性が高まっていると言えます。

 連日、GPIFが日本株と米ドル/円の購入を続けていると言われている中、米ドル/円は押し目買いを継続

 そして、ECBがオープンエンドのQEを導入したことにより、下落幅がさらに拡大し、1.05ドルへ向けた動きも想定されるユーロ/米ドルの動向に注目です。


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