■スイス中銀がフロア撤廃でスイスフラン急騰!
みなさん、こんにちは。
先週(1月12日~)の為替マーケットを震撼させたのがスイスフランの急騰でした。
SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が、ユーロ/スイスフランのフロア(=1.2000フラン)を撤廃したことがスイスフラン急騰を演出。
【参考記事】
●ユーロ/スイスフランが約3800pips大暴落! スイス中銀が防衛ラインの撤廃を発表!

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 日足)
ただ3年半に渡り、フロアを守り続けてきたSNBは早晩限界がきていたことも確か。
多くのエコノミストが、SNBのフロア撤廃を大きく危惧し始めたのが、2014年12月18日(木)にSNBがマイナス金利を導入した時です。
【参考記事】
●マイナス金利導入でも防衛ライン決壊!? あの通貨ペアは30年間のレンジ下抜けへ!(2014年12月23日、西原宏一&松崎美子)
SNBのこの措置を受けても、ユーロ/スイスフランの上昇は100pips足らず。そして、すぐさま、再び1.2010フランというフロアぎりぎりのところまで追い込まれていました。
2015年年初のコラムでもご紹介したとおり、SNBの外貨準備も巨額に膨れ上がり、そのリバランスでの、彼らからのユーロ売りが、再びユーロ/スイスフランを重たくしてしまうという悪循環。
私のコラムでもSNBのリバランスによるユーロ売りと、1.2000フランの決壊の可能性について触れています。
【参考記事】
●ギリシャのユーロ離脱(Grexit)懸念などでユーロ/米ドルは1.15ドルへ向けて続落か(1月8日、西原宏一)
■スイスフラン暴騰に呼応して急反発している金に注目
現状でも、SNBが断続的に介入していることから、ユーロ/スイスフラン、米ドル/スイスフランは極めて不安定な動きを続けています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 1時間足)
ただ、SNBの後ろ盾を失ったスイスフランは、マーケットにまだショートが残っていることから、当面底堅く推移することが想定されます。
また、スイスフランの暴騰に呼応して、急反発を見せているのが金(ゴールド)。現在、各国の中央銀行が実質「通貨安政策」を取っていることから、この金の上昇に注目しています。

(出所:米国FXCM)
■通貨安戦争からスイス脱落、カナダが新たに参戦
表立って通貨安政策を取っているとは言えませんが、現在、通貨安を志向しているのが、日本、欧州、豪州、ニュージーランド。
ニュージーランドは首相自ら、NZドルのターゲットを明言したこともあります。
【参考記事】
●ドル/円は110円到達でスピード調整入り。首相の口先介入で急落のNZドル、今後は?(2014年10月2日、西原宏一)
そして、新たに参戦したのが昨晩(1月21日)に緊急利下げを表明したカナダ。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 各国政策金利の推移)
BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])は1月21日(水)、政策金利を1%から0.25%引き下げて0.75%にすると発表。その背景にある大きな要因は急激な原油安だと思われます。

(出所:米国FXCM)
この通貨安戦争の中にスイスも入っていたわけですが、フロア撤廃で脱落。
なぜ、スイスはフロア維持を断念せざるを得なくなったか。その要因は、ECB(欧州中央銀行)によるQE(量的緩和策)実施の可能性が高まってきたことにあると観測されています。
■QEが開始されれば通貨安が進むというのが一般的だが…
本日(1月22日)、1月最大のイベントであるECB理事会が開催されます。
事前予想は「月額500億ユーロ相当の国債購入を2016年末まで継続的に実施」といった内容で、この予想に対し、ほぼ満額回答されるとの観測が広がっています。
ただ、その期間は1年なのか2年なのか?という問題や、社債購入の可否、国別の購入規模などに関する詳細は、今晩のECB理事会の発表待ち。
まとめると、まずECBがQEを開始するわけですので、日銀の異次元緩和同様に、大きく通貨安(ユーロ安)が進行すると考えるのが一般的。
■ECBのQEをマーケットがどれだけ織り込んでいるかがカギ
ただ、問題はQEに対するマーケットの織り込み度、つまり、ユーロ/米ドルのレベル。そして、マーケットにサプライズを起こせるかという点。
まず、本稿執筆時点でのユーロ/米ドルは1.1590ドルレベル。ユーロ/米ドルの1.15ドル台というのは、マーケットのユーロ安のコンセンサスだったレベル。
2015年年初からECBによるQEのウワサが信憑性を増しており、マーケットはQEを織り込む形でユーロ売りを進めてきた結果、QEが発表される前に、節目の1.15ドル台までユーロ安が進んでいます。
中長期のユーロ/米ドルのターゲットは、たとえば、2016年はパリティ(1ユーロ=1米ドル)という意見も多数。

(出所:米国FXCM)
ただ、ユーロ/米ドルの目先のターゲットは1.1500ドルレベル。1月16日(金)には、一時、1.1460ドルまで暴落しましたが、さすがに1.15ドル台で下げ渋っています。

(出所:米国FXCM)
■ECBのQEが予想どおりなら、ユーロは調整入りも
本日(1月22日)のECB理事会に関してはマーケットへの事前の織り込みがかなり浸透。ECBがマーケットの期待値を超えるQEを発表し、サプライズを起こせれば別ですが、期待値どおりの発表であれば、ユーロ/米ドルは1.14~1.15ドルを底に、下落相場に対する調整に入る可能性も高まっています。
もうひとつ、マーケット参加者の一部が懸念しているのが米国の対応。通貨安戦争の中、その対象として通貨高を一手に引き受けているのが米ドル。
経済が好転している米国は、ある程度、通貨高を受け入れる余地はあるのでしょうが、円とユーロに対しての米ドル高が急速に進行している中、米国から何らかの牽制コメントが出る可能性もあるため、米ドル高があまりにも急速に進行した場合の反落を警戒しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
原油の急落を背景に資源国通貨である豪ドルやNZドルは依然として上値が重いのでしょうが、今晩(1月22日)のECB理事会がマーケットの期待値どおりの発表で、サプライズを起こせなかった場合のユーロの急反発も想定しておきたいところです。
2015年のユーロの行方、さらに米ドル全般の行方を握る、本日(1月22日)のECB理事会に注目です。
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