■隠し味は、米国株と米ドル/円のパフォーマンス!?
「さらに、僕と同じようなやり方で予想を出す他の人は、通常採用していないんですが、僕が独自に採用しているものとしては、米国株(S&P500)と米ドル/円の1カ月前のパフォーマンスが挙げられます。これは隠し味みたいなものです」
ちょっと意外な感じがしますが、どうして米国株と米ドル/円のパフォーマンスを参考指標にしているんでしょうか? 米国株の方から教えてください。
「アメリカでは、個人が株式を保有し、株価の動向などを意識するという傾向が日本よりも、うんと強いんです。個人でそうなんですから、企業ならなおさらです。企業も、株価動向などを見ながら、自社の新規採用余地を考えているはずです。だから、この要素も入れています。
経済指標は、あくまで結果論としてのデータなワケです。だけど実際は、マーケットの状況がこうだ、それならどんなビジネス戦略にしたら良いだろう? って企業は考えるんじゃないでしょうか。
それに、景気の方向と相場の方向は、一致しないことも多いですよね? だから、米国株や米ドル/円のパフォーマンスを緩衝剤的に入れているという意味合いもあります。一方向の材料しかないと、変化に対応できなくなってしまう可能性がありますから。フォームを変えた瞬間、ストライクゾーンに入らなくなるピッチャーになっちゃうってイメージです(笑)」
たしかに、Aさんが言うように、景気の方向と相場の方向は、一致していないことも多い…。相場の方が景気よりも早く反応したりすることもありますよね。変化に対応できるように緩衝材として使うというのも、納得です。
■なぜ、米ドル/円にアメリカの景気状況が反映されるのか?
もう1つ。対米ドルの通貨ペアなら、米ドル/円よりも、ユーロ/米ドルの方が世界的な取引規模は大きいと思うのですが、なぜ、ユーロ/米ドルではなく、米ドル/円を材料にしているんですか?
「これは、時代によって変えなきゃいけないのかもしれませんが、円キャリートレードが流行った時代なんかは特に、アメリカでは、金利が低い円でお金を調達し、米ドルに換えていたんです。こういった背景もあって、アメリカの景気状況は、特に通貨ペアでいうと、米ドル/円で表現される傾向が強いんです」
さらにAさんは、アメリカの景気状況が米ドル/円に反映されやすい背景として、日本の性質に言及していました。
「属国としての日本と言いますか…日本は、『すみません、はいはい』という感じですので、リーマンショックが起こって日本も傷んでいる時でさえ、極度の円高を容認していました。
米ドル/円が75円とか、おかしいでしょう!? そういう意味でも、アメリカの景気状態は、米ドル/円に反映されやすいんです」
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足)
では、ユーロにはアメリカの景気状況は、反映されにくいんですか?
「欧州は、なんだかんだ、昔から大陸でもみ合ってきた国々なので、交渉や相手の裏をかくという戦術には秀でています。ユーロという通貨の動きは、政治的な要因が強くなると思っているので、アメリカの景気状態は、ビビッドにユーロ/米ドルに反映されるワケではないんです」
そうなんだ…。したたかと言いましょうか、たしかに交渉事にかけては、欧米各国が強い気がします。反対に日本は、そういうの苦手そうですよね?
「ええ。欧州が交渉事などに強い傾向があるという意味で1つお話すると、今、ユーロ安が続いていますが、これで一番恩恵を受けている国は、実はドイツなんです。中国をしのぐペースで経常黒字を上げています。ドイツは、経済的に優等生なんですが、劣等生がいっぱいいるユーロの枠組みを利用して、『弱いんだから、ユーロ安でいいだろう?』と言っているんです」
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
「話題になっているギリシャ問題をも盾にして。あれも、あえて解決していないんですよ。いつまでも安いユーロの中で、ドイツは、すさまじい勢いで儲けています。つまり、何と言うか、欧州は闇が深いのです…」
まさか、ギリシャ問題が解決しないのもドイツの戦略だったとは…。欧州、闇深すぎ! もちろん、いろんな要素が絡みあってなかなか解決しないのでしょうが、たしかにそういう面もあるのかもしれません。
(「金融社畜の妖精『にほんばっしー』に突撃(5) 80%の的中率! 最後はカンが物を言う!?」へつづく)
(取材・文/ザイFX!編集部・向井友代 撮影/和田佳久)
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